NISAは確定申告が必要?非課税となる条件や気を付けるべきポイント

2023/8/30
2024/3/7(更新)

株式投資で得た譲渡益や配当金に対しては原則20%の税金がかかります。そして、「源泉徴収なしの特定口座」や「一般口座」を選んだ場合は確定申告をしなければなりません。

では、NISA口座を選んだ場合、確定申告は必要なのでしょうか。取引を始める前に税金の取り扱いについて確認しておきたい人もいるでしょう。

本記事ではNISAを利用する場合に確定申告が必要・不要となるケースをそれぞれ解説します。

NISAの概要

NISAは2024年に新制度への移行が決まっています。まずはNISAとはどのような制度なのか、全体像を把握しておきましょう。

NISAとは

NISAとは2014年からスタートした「少額投資非課税制度」のことです。通常、投資で得た収益には約20%の税金が課せられます。しかし、NISA口座を活用して取引すると、投資で得られた利益に対しては、原則として税金がかかりません。

NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠があり、それぞれ非課税で投資できる金額が異なります。成長投資枠は年間240万円、つみたて投資枠は年間120万円が上限です。
この金額の範囲内で投資をすれば、売却によっていくら利益をあげていても、約20%の税金徴収が免除される仕組みになっています。

NISAで非課税になる利益

NISAで非課税となるのは、NISA口座での取引の結果生じた利益に対してです。株式の売買によって生じた「譲渡益」や株式の保有数に応じて分配される「配当金」、投資信託の運用結果に基づいて配分される「分配金」などが対象になります。

銘柄の買い付けにかかった資金が非課税投資枠の範囲内であれば、いくら利益が出たとしても課税されることはありません。

NISAの確定申告は必要?

NISA口座を使って投資をする場合、確定申告は不要です。しかし、状況によっては確定申告が必要になる場合もありますので、整理しておきましょう。

NISAの確定申告は原則不要

確定申告とは、1月1日~12月31日の1年間に得た所得と、それにかかる税金の額を計算し、翌年の決められた期間に税務署に報告・納税する作業のことです。

譲渡益や分配金など、投資で得た収益は、給与所得や雑所得などとは別に申告分離課税として税額を計算しなければなりません。一般的な会社員の場合、年末調整が行われるため基本的に確定申告をする必要はありませんが、不動産所得などの投資で収益を得ている場合はその金額にかかわらず、確定申告が必要となります。

株式などをNISA口座で取引をした場合は、利益が出ても所得税や住民税など納めるべき税金がかからないため、原則として確定申告は不要です。

確定申告は前年に得た利益から経費などを引いて、毎年2月16日〜3月15日の間に手続きを済ませなければならず、所得の種類によっては計算が複雑になるケースもあります。多くの書類が必要になる場合もありますが、NISAならこれらの手間を省けます。

  • 期日が土日にあたる場合は、月曜日に繰り下げられます。

NISAで確定申告が必要となる場合

配当金を「株式数比例配分方式」以外の方法で受け取る場合

「株式数比例分配方式」とは、株式の配当金やETF・REITの分配金を証券会社の取引口座で受け取る方法のことです。該当銘柄の権利確定日までに株式数比例配分方式を選択しておけば、NISA口座での取引では税金がかかりません。

「登録配当金受領口座方式」や「個別銘柄指定方式(配当金振込指定)」を選択したまま権利確定日を迎えると、通常通り配当金に課税されます。しかし、源泉徴収された金額を受け取ることになりますので、確定申告は原則不要です。
損益通算や繰越控除を希望する場合は確定申告が必要です。お手続きの詳細についてはお近くの税務署へご確認ください。

登録配当金受領口座方式とは、保有するすべての株式等(他の証券会社で保有する株式等も含む)の配当金を、指定した銀行口座に一律に入金し、受け取る方式です。個別銘柄指定方式(配当金振込指定)は、銘柄ごとに配当金を受け取る口座を指定し、届出された銘柄についてのみ、指定した金融機関で配当金を受け取る方法のことを指します。

【よくあるご質問】配当金の受取方法には何がありますか。

非課税期間が終了した場合

旧NISAで運用している商品の非課税期間が終了した場合は、確定申告が必要となるケースがあります。

2023年以降も、旧NISA口座で購入した商品は運用を継続できますが、5年または20年の非課税期間終了時には課税口座(一般口座または特定口座)に自動的に払い出されます。
その際、移管した日の株価が取得価格となります。そして、課税口座に移管されてから得た利益に対しては、通常通り税金が課せられるため、確定申告が必要となるのです。課税口座へ自動的に移管される前に売却する方法もありますが、相場状況によっては損失を抱えていたり、保有期間が長い株主に優待制度をグレードアップしていく企業もあったりするため、判断の難しいケースもありそうです。

一方、2024年から開始された新NISAでは、非課税保有期間は無期限に変更されています。課税口座へ自動的に払い出されることもないため、確定申告は基本的に不要です。

【関連ページ】旧NISAの非課税期間はいつまで?投資可能期間の注意点や新NISAの概要

NISAの確定申告のポイント

確定申告をする際のNISAでの運用ポイントを説明します。控除や損失の扱いなど、課税口座と異なる点があることを理解しておきましょう。

NISAの利益は扶養控除の所得対象ではない

扶養控除や配偶者控除とは、生計を共にする親族がいる場合に、所得から一定額を差し引ける制度のことです。これらの所得控除を受けるためには、年間の合計所得額を一定以下に抑えなければなりません。一般的な株式投資で大きく利益をあげた場合は、合計所得額が増えることで控除の対象から外れる可能性があります。

しかし、NISA口座で生じた利益は非課税であるため、所得控除の計算における年間合計所得額には含まれません。NISAを活用すれば、控除への影響を気にせずに安心して投資に取り組めます。

損失を確定申告で損益通算できない

損益通算とは、一定期間内の取引における利益と損失を相殺することです。例えば、一方の証券口座で利益を出しており、もう一方の証券口座で損失を出している場合には、確定申告によって利益と損失を相殺することで利益を圧縮し、課税額を減らすことができます。

しかし、NISA口座で利益または損失を出したとしても、他の課税口座と損益通算することはできません。NISA口座内の所得は非課税のため、合算対象とすべき利益や損失はないものとみなされます。

NISAで得た利益は非課税となるため、原則確定申告は不要

NISA口座での取引に関しては、利益が出たとしても基本的に確定申告は不要です。さらに、2024年から非課税保有期間は無期限となるため、ますますメリットを感じられることでしょう。税金を気にせず、資産形成に現行NISA、そして2024年からの新NISAを役立てていきましょう。

<監修者>

木村佳子

<プロフィール>

一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。

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