スリッページとは?スリッページが起こる理由や対策、よくある質問
2024/7/19
FX(外国為替証拠取引)の取引方法について情報収集していると、「スリッページ」という言葉を目にする機会が多いかもしれません。
スリッページはFXにおいて重要な用語の一つです。正しく理解しておかなければ、思わぬ損失を被る可能性もあるので、初心者の人はこの機会に理解を深めておきましょう。
本記事では、スリッページの意味や発生する理由などを詳しく解説します。スリッページの対処法も紹介しますので、ぜひ実際の取引に役立ててください。
スリッページとは?
スリッページとは、注文した時の価格と約定(売買の成立)時の価格の間に生じるズレのことです。例えば、1ドル=150.00円で買注文を出し、1ドル=150.01円で約定した場合は、0.01円のスリッページが発生していることになります。
スリッページが発生して不利なレートで約定した場合は、想定通りに価格が動いたとしても利益が減ってしまうこともあるでしょう。
スリッページが起こる理由と対策
意図しない取引になることを防ぐためにも、スリッページが生じやすい状況や対処法を知っておきましょう。
スリッページが起こる理由
タイムラグが発生している
FXではトレーダーが注文を出してから、その注文がFX会社のサーバーに到達して約定するまでの間にはタイムラグが存在します。タイムラグは基本的にごくわずかですが、為替相場は常に変動しているため、注文した価格からレートが動いてしまうことが起こりうるのです。
このほかにも、トレーダーの通信環境が悪い場合は、FX会社のサーバーに注文が到達するまでの時間が長くなりスリッページが起こる可能性があります。また、取引量が増え、FX会社のサーバーに負荷がかかり、約定するまでの時間が長くなることでスリッページが起こる場合も少なくありません。
為替相場の値動きが激しいときほど、注文過程でのタイムラグによるスリッページが発生しやすくなるため、注意が必要です。
為替市場の参加者が少ない
日本時間の午前5時~8時前後や年末年始など、市場参加者が少ない場合は、売り注文と買い注文の数に差が生じることがあります。この場合、注文がマッチングしにくいため、約定させようとしてスリッページが発生することも少なくありません。
スリッページの対策
許容スリッページ幅を設定する
許容スリッページ幅とは、スリッページが発生した時に、発注価格よりも不利な価格での約定をいくらまで認めるかを表したもので、多くのFX会社では通貨ごとに許容スリッページ幅を設定できるようになっています。
許容スリッページ幅を設定すると、設定した数値以上のスリッページが発生した際には注文がキャンセルされます。例えば、1ドル=150円で買い注文を出した場合に許容スリッページ幅を2銭(0.02円)に設定していると、1ドル=150.02円よりも高い価格では約定せず、注文がキャンセルされます。
反対に1ドル=149.96円になるなど、有利な方向にスリッページが発生した場合は、許容スリッページ幅に関係なく約定が成立するケースが一般的です。ただし、有利・不利どちらの方向に動いても、許容スリッページ幅を超えた場合には約定しないFX会社もあります。
複数回に分けて注文する
複数回に分けて注文し、1回あたりのロット数を少なくすることもスリッページ対策として有効です。ロットとは、FXにおける取引数量のことで、ロット数が大きくなると取引数量も多くなります。
ロット数が多いと、スリッページが発生した時の影響が大きくなってしまいます。例えば、1ロット=10,000通貨のケースで米ドル/円で10ロットの買い注文を出したとしましょう。このとき、0.03円不利な方向にスリッページが発生すると10万通貨×0.03円=3,000円注文価格が変化します。つまり、少しスリッページが発生しただけで、利益が大きく減ってしまう可能性があるのです。
注文回数を分けるなどして、1回あたりのロット数を少なくすることで、スリッページが発生した場合の影響を減らしやすくなるでしょう。
スリッページが発生しにくいFX会社を使用する
スリッページを防ぐためには、約定処理の早いFX会社を利用も大切です。特にカバー先金融機関の数が多いFX会社は、スリッページが発生しにくい傾向にあります。
基本的に、FX会社は顧客から引き受けた注文と同様の注文を、銀行などの金融機関(カバー先金融機関)に発注しています。カバー先金融機関が多ければ、その分スムーズに注文を処理できるため、スリッページが発生しにくくなるのです。
また、処理性能の高いサーバーを利用しているFX会社を利用することも、スリッページ対策として効果的です。
FXのスリッページに関するよくある質問
スリッページの設定について、疑問点や不安な点がある場合は、取引を始める前に解消しておきましょう。
スリッページ設定はどのくらいが適切?
約定を優先させたい場合は3pips程度を目安にすると良いでしょう。pips(ピップス)は通貨ペアの価格の変動幅を示す最小単位です。一般的に、米ドル/円やユーロ/円の場合は、1pips=0.01円(1銭)とされています。
ただし、トレードスタイルや通貨ペア(取引する通貨の組み合わせのこと)によっても目安は異なります。例えば、1日に数十回〜数百回トレードをする「スキャルピング」をする場合、少ない利幅を積み上げていく必要があるため、スリッページが損益に与える影響が大きくなる傾向があります。そのため、許容スリッページ幅は0〜0.3pips程度にしておいたほうが良いでしょう。
また、トルコリラや南アフリカランドなど、取引参加者が少ない「マイナー通貨」では、大きなスリッページが発生することは珍しくありません。許容スリッページ幅を狭くしすぎると約定しにくくなることもあるため、5~10pips程度にしておくと良いでしょう。
スリッページを無制限に設定するとどうなる?
スリッページを無制限に設定すると、注文価格と大きく乖離した価格であっても約定する可能性があります。経済指標発表前後など、相場の急変が予測される状況では損失を出しやすくなる可能性があるので、スリッページを無制限にするのは避けた方が良いでしょう。
スリッページ設定を0にするとどうなる?
スリッページを0にすれば「希望通りの価格」もしくは「有利になる価格」以外では約定しなくなるので、想定外の損失を被るリスクは低くなるでしょう。
しかし、少しでも不利な方向にスリッページが発生した場合はすべて注文が不成立となってしまうため、なかなか約定せず、スムーズな取引ができなくなる可能性があります。
特に決済注文を出す場合は、スリッページ設定を0にした結果、損切り(価格が予測と反対方向に動いた場合に、損失を拡大させないよう決済)や利益確定のタイミングを逃してしまうこともあるので注意が必要です。
スリッページとはFXの損益を左右する重要な要素の一つ
スリッページはFX取引において、注文価格と約定価格のズレを指すもので、取引結果に大きく影響します。スリッページは注文時のタイムラグやFX会社内での処理速度などによっての発生も多いため、スリッページが発生しにくいFX会社を選ぶことが大切です。
また、スリッページが発生しやすい時間帯や通貨ペアも存在します。スリッページによる影響を最小限に抑えるためにもスリッページ幅やロット数を意識した取引を心がけましょう。
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