FXのスプレッドとは?取引手数料の決まり方やコストの計算方法
2022/3/16
FX関連のWEBサイトには「スプレッド」という言葉が出てきますが、どういうものなのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
スプレッドは通貨ペアごとに設定されている売値と買値の差のことで、投資家にとっての取引コストにあたります。取引ごとに発生するので、スプレッドはFXにおいて重要です。
本記事ではスプレッドの仕組み、具体的なスプレッドの計算方法について説明していきます。
FXのスプレッドって何のこと?
FXでのスプレッドとは何を指すのか、またどのように決まっているのかについて説明します。
スプレッドとは通貨の売値と買値の差
スプレッドとは、売値と買値の差額です。売値をBid(ビッド)、買値をAsk(アスク)と表現することもあり、実際の取引画面ではBidとAskそれぞれの価格が表示されます。
海外旅行での外貨両替をイメージするとわかりやすいです。同じ日時であっても、米ドルから日本円に両替をするときに提示される為替レートと、日本円から米ドルに両替をするときの為替レートは異なっています。これらのレートには金融機関の両替手数料が反映されているため、二つの為替レートに差が生じているのです。
たとえばFXで米ドルと円の通貨ペア(USD/JPY)を取引する時に、売値が1ドル=114.256円で買値が1ドル=114.258円だとすると、差額の0.002円がスプレッドです。もし米ドルを買って即座に売ったとしても価格差があるため、最初に支出した円は少し減って戻ってきます。つまり、スプレッドとは取引にかかるコストだといえます1。
スプレッドは各FX会社で設定されていて、スプレッドの大きさは「狭い」「広い」と表現され、スプレッドが狭ければ取引コストが小さく、スプレッドが広ければ取引コストが大きいことを示しています。
スプレッドは通貨ペアやFX会社によって異なる
スプレッドは一律ではなく、通貨ペアによって異なります。
スプレッドにばらつきがあるのは、各通貨の需要(流動性など)の大きさが違うためです2。
たとえば米ドルのような基軸通貨や円・ユーロ・ポンドといった主要通貨は、世界全体での需要が高く取引量も多いため、為替レートが安定しています。それに対して、豪ドルや南アフリカランドなどの通貨は主要通貨と比べて相対的に需要が低いため、相場が急変動するリスクがあります。
またスプレッドは金融機関ごとの判断で定めることができるため、FX会社によっても違いがあります。スプレッドは「1通貨当たり0.2銭」のように表記されるため一見大きな金額には見えませんが、FX会社によっては最低でも1,000通貨、10,000通貨単位での取引となるためコストは大きくなります。またスプレッドは取引ごとにかかるため、取引回数が多いとその分負担も大きくなりがちです。
現在はスプレッドの狭さを強みとしているFX会社も多く、ユーザーの利便性向上のためにスプレッドを改善している会社もあります。たとえば松井証券 FXでは2021年3月に全通貨ペアでスプレッドを縮小する改定を行いました3。
スプレッドは利益の出しやすさに関わってくるため、FX会社選びにあたっては重要な要素の一つだといえます。
FXのスプレッドは変動する?
FXでの取引コストにあたるスプレッドは、常に一定なのでしょうか。スプレッドの「原則固定」の意味と変動するケースについて説明していきます。
スプレッドの「原則固定」とは
スプレッドの「原則固定」とは、FX会社がスプレッドを基本的に変動させない方式を採用していることを意味しています。原則固定であればある程度はスプレッドの幅が決まった状態で売買を行えるため、投資家は取引にかかるコストを把握しやすいのが特徴です。原則固定以外には、相場状況に応じてスプレッドを変動させる「変動スプレッド」、スプレッドを一切変えない「完全固定スプレッド」があります。詳細は取引ルールをご覧ください4。
スプレッドが変動する要因
「原則固定」とされている場合、基本的にスプレッドが変動することはありません。ただし以下のタイミングなどでは例外的にスプレッドが変化する可能性があります。
- 米国雇用統計や政策金利など重要な経済指標の発表の前後
- 災害やテロなどの天変地異・突発的なイベント
- 早朝や年末年始など、取引量が減る時間帯や時期
米国の雇用統計やFOMC、世界各国の中央銀行の政策金利発表といった経済指標が発表されるときには、取引参加者が一斉に売買を行うことがあります。発表を受けて通貨を買いたいと思う人が多い場合は買いの注文が、売ってしまいたいと思う人が増えれば売りの注文が増えます。注文が偏ると需給のバランスが崩れ、外国為替市場全体でスプレッドが広がりやすくなります。そのため、FX会社を通じて提供される為替レートについてもスプレッドを広げざるを得なくなるという仕組みです。
震災やテロ、クーデター、リーマンショックやコロナショックといった世界的な金融不安などの突発的なイベントが発生した場合も、同様のことがいえます。
また日本時間の午前6〜8時の間は、東京・ロンドン・ニューヨークが基本的には活動していない時間帯のため、外国為替市場全体の流動性が低下している時間帯になります。(ウェリントンやシドニーなどは活動している時間帯のため、取引自体はできますが、市場参加者が少ないです)※標準時間とサマータイムでは時間が前後します。早朝・クリスマス・年末年始・大型連休なども市場参加者が少なく、投資家の活動が停滞する時間帯は相場が不安定になるため、取引量が減りスプレッドが広がりやすくなります。
「原則固定」が守られている割合を知るためには、スプレッドの「提示率」が参考になります。提示率とは取引可能な時間のうち、事前にFX会社が公開したスプレッドの範囲内に収まっていた時間がどのくらいあったかを示す指標です。スプレッドを「原則固定」とする場合には、基本的に直近4週間の提示率を95%以上に保つよう努める必要があります。
たとえば松井証券 FXでは公式サイト上で提示率を公開しており、スプレッド提示率が100%を下回った場合にはその要因についても記載しています5。
FXのスプレッドを使ったコストの計算方法
実際に取引をする場合、スプレッドはどのように計算すればよいのでしょうか。FXでのスプレッドの単位や具体的な計算方法について説明します。
スプレッドの単位
スプレッドを表すときに用いられる単位には「銭」と「pips」の2種類があります。
銭は日本円と日本円以外の外貨をやり取りする場合に用いられる単位です。たとえば「米ドル/円」「ポンド/円」などの通貨ペアでは銭を使います。
pipsは為替レートの変動単位となっており、日本円以外の外貨同士の組み合わせで使われます。たとえば「ユーロ/米ドル」や「ユーロ/豪ドル」などの場合です。
1pipsがいくらを表すかは通貨ペアによって異なり、米ドル/円の場合は1pips=1銭(0.01円)ですが、ユーロ/ドルの場合1pips=0.0001ドル(0.01セント)です。
コストの計算方法
取引にかかるコストはスプレッド×通貨数で求めることができます。
たとえばスプレッドが0.2銭、米ドル/円で10,000通貨取引をした場合で計算してみます。この場合、0.2銭=0.002円なので、0.002円×10,000通貨=20円が取引コストです。
スプレッドが1.0pipsでユーロ/米ドルを10,000通貨取引した場合、1pips=0.0001ドルなので、0.0001ドル×10,000通貨=1ドルと求められます。
日本円に換算する場合は為替の影響を受けますので、仮に1ドル=110円であれば実際は110円が取引コストです。
FX会社選びではスプレッドが重要
本記事ではスプレッドの仕組みや、「原則固定」の定義、取引コストの計算方法について説明しました。
スプレッドは売値と買値の差を表したもので、取引にかかるコストの一つです。スプレッドは1回の取引ごとに発生するため、なるべく狭い方がコストを抑えられます。「原則固定」とされていれば基本的に変動することはありませんが、突発的な事件が発生した際や、早朝や年末年始といった取引の参加者が少ないタイミングでは変動することもあるため注意が必要です。
スプレッドはFX会社や通貨ペアによって異なり、利益の出しやすさに関わるため、取引するうえでは重要なポイントです。
<監修者>
川口一晃
<プロフィール>
1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。