FXにおけるロスカットとは?仕組みや計算方法、回避する方法を解説!
2022/6/24
FXは為替レートの動きを予測して各国の通貨を売買する取引です。相場を的確に予想できれば大きな利益が狙える反面、為替の値動き次第では大きな損失を出してしまうケースもあるでしょう。そんなときに役立つのが「ロスカット」です。
本記事では、ロスカットとはどのようなものか、具体的な計算方法や注意点を含めて説明します。これからFXを始めようとしている方は、取引の基礎知識として必ず理解しておきましょう。
- 本コンテンツはFX取引における一般的な内容を記載している箇所があります。松井証券 FXの取引ルール等はこちらをご覧ください。
FXのロスカットとは?
ロスカットはトレーダーの資産を守るために必要不可欠なものです。ここでは、FXにおけるロスカットの仕組みについて説明します。
ロスカットとは、FX取引で一定の水準以上の損失が発生した場合に保有ポジションを強制的に決済すること
新規で買い注文または売り注文を出し、決済せずに保有している通貨ペアのことをポジション(建玉)といいます。ポジションを保有した状態で相場が予想と逆方向に動くと、評価額がマイナスになり、口座に預け入れたお金(純資産)が減少します。その際、損失が広がり一定水準まで純資産が減った場合に、すべてのポジションを強制的に決済するのが「ロスカット」です。ロスカットが実行されると、損失が確定し、保有していたポジションが無くなってしまいます。
相場の値動きやレバレッジ次第では大きな損失が出る可能性がありますので、ロスカットには、預け入れた証拠金以上に損失が膨らむような深刻な事態からトレーダーを守るという役割があります。
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ちなみに、よく混同される言葉に「損切り」があります。ロスカットと異なり、自らポジションを決済し、損失を確定させることを損切りと言います。
ロスカットの基準はFX会社によって異なります。松井証券ではリアルタイム維持率が、設定したロスカット率を下回った場合に、ロスカットが実行されます。また松井証券では個人のお客様はロスカット率を50%、60%、70%、80%、90%の中から選ぶことができます。
FXの取引に必要な証拠金の計算方法を教えてください。(Q&A)
FXのロスカット率の設定方法を教えてください。(Q&A)
ロスカット水準の具体的な計算方法
一般的に、実際にロスカットが発生するのは、純資産が必要証拠金の額を一定割合下回ったタイミングです。以下のような計算式で求められます。
純資産-ロスカットの基準額=余剰金
余剰金÷通貨数量=ロスカットまでの値幅
ロスカット率を60%に設定し、1ドル=100円の時に、10万円の資金で、ドル/円で2万ドル分の買いポジションを保有したケースでは、以下の様に計算できます。
余剰金: 10万円-6万円(10万円×60%)=4万円
ロスカットまでの値幅: 4万円÷2万=2円
つまり、為替レートが1ドル=98円を下回ると、ロスカットが実行されます。
松井証券 FXでのロスカットルールについては以下のQ&Aをご覧ください。
ロスカットを回避するには
ロスカットが発生するケースや注意点、ロスカットを防ぐための方法について説明します。
ロスカットは設定したロスカット率を下回ると執行される
ロスカットを避けてポジションを継続して保有したい場合には、リアルタイム維持率が設定したロスカット率まで減少しないように保たなければなりません。
純資産の金額をキープするためには二つの方法があります。
一つ目は、取引口座に追加入金することです。リアルタイム維持率は「(純資産-注文証拠金)÷ポジション必要証拠金×100」で求められるため、資金を追加で入金すると純資産額が増加し、リアルタイム維持率も上昇します。
ただし、明確な理由がある場合や長期的に投資をしたい場合などを除いて、ただ資金を補充することはおすすめできません。というのも、予想とは逆方向に相場が動いた場合、その流れが自分のポジションに都合の良い方向に急に変わるということは期待しにくいためです。損失を確定させるのを先延ばしにしたいがゆえに、追加入金をしてさらに評価損を増やしてしまうことは避けたいところです。
二つ目は、保有ポジションを一部決済することです。保有ポジションを一部決済すると、ポジションを保有するために必要な証拠金が減少するため、証拠金維持率が上昇しロスカットを避けられます。スキャルピングのような短期の取引で、こまめに損失と利益を確定していくこともよいでしょう。
ロスカットを避けるために一番重要なことは、口座に預け入れた資金を目一杯使って取引をしないことです。多くの必要証拠金が必要になり、為替レートが少し予測と逆の方向に動いただけでも、ロスカットとなる可能性が高まります。
ロスカットの注意点
リアルタイム維持率が指定したロスカット率を下回るとロスカットは執行されますが、設定したロスカット率となった価格で決済の取引が約定すると保証されているわけではありません。
たとえば流動性が低下している場合には、ロスカットのための決済注文の約定に時間がかかることがあります。また、要人発言や政治情勢の変化、重要な経済指標の発表などにより急激な価格変動が起きた場合には、あらかじめ設定したロスカット率を大きく下回る価格で約定し、大きな損失を出してしまう可能性もあるのです。
相場変動が大きくなると予測されるタイミングにおいては、維持率を注視しておくことが重要です。松井証券 FXでは、相場変動やレート到達のほか、ロスカット・アラートなどのメール通知を設定することができます。
また損失が広がりだしたときに自動的に決済されるよう、ロスカットが執行される水準よりも手前のタイミングで、逆指値注文を入れておくことも有効です。逆指値注文とは、通常の指値注文とは逆に、現在のレートより「値上がりしたら買う」、または「値下がりしたら売る」注文方法のことです。
リスクを理解してなるべくロスカットを避けよう
本記事ではロスカットの定義や計算方法、ロスカットを避ける方法について説明しました。
ロスカットは、純資産が一定の割合を下回った場合に、保有しているすべてのポジションを強制的に決済する仕組みです。損失が確定してしまうデメリットはあるものの、預け入れた資金以上の損失を防ぐためのリスク管理ルールです。
しかし、取引を始めてからロスカットを何度も繰り返されてしまうと、資産を増やすことが難しくなってきてしまいます。FXの取引に慣れていないうちは、すぐにロスカットとならないよう、取引資金に余裕を持って、取引を行うことがよいでしょう。
【解説動画】マネーサテライト「FXのストップロス注文とロスカットルール」
<監修者>
川口一晃
<プロフィール>
1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。