「マーケットアナリスト大山季之が米国株を解説!セクターから考える米国株投資「ヘルスケアセクター編」」

公開日:2022/5/18

米国のヘルスケアセクターに投資する意味を考える

足元のマーケットは、①金利上昇、②景気後退、③インフレの3つのリスクを抱えています。
その環境下で米国のヘルスケアセクターに投資する意味を考えてみたいと思います。

コロナウィルス蔓延から3年目、落ち込んだ経済活動は財政出動で安定化しました。
その後、経済再開とともに需要が急増してインフレを招き、主要国では利上げ織り込みが加速しています。
各国中央銀行が政策金利を引き上げるタイミングで、2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、地政学リスクが高まり、金融政策の見通しの不確実性が高まったのです。
ウクライナ情勢は、コロナ後の流れの「振れ幅」を大きくさせるもので、経済回復・経済再開の過程が大きく変わらないものと考えています。地政学リスクの高まりが、景気悪化・インフレ加速要因になることから景気後退(スタグフレーション)に至ると懸念されることもありますが、米国株の魅力を損なうものではないと思っています。

しかし、これまで金利低下の恩恵を受けていた米国株も、とくにグロース銘柄は、金利上昇の局面で相対的にアンダーパフォームすることが予想されます。一方で、ヘルスケアセクターは強固なビジネス基盤を持ち、キャッシュフローを生みだす力があり、安定的にリターンを生み出すセクターとして投資妙味があると考えています。成長力も備えたディフェンシブセクターだと言えましょう。

ヘルスケアセクターは、ヘルスケア・プロバイダー及びヘルスケア・サービス、ヘルスケア機器・ヘルスケア用品の製造・販売、ヘルスケア・テクノロジー会社、医薬品会社及びバイオテクノロジー会社 などが含まれます。

今回、ヘルスケアセクターの構成ウェイトが高い企業のうち、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユナイテッドヘルス、ファイザーの3社について解説します。マネーサテライト上では動画で詳しく解説していますので、そちらもぜひご視聴ください。

ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)

コンシューマ―、医薬品および医療機器、および診断事業セグメントを通じて、ヘルスケア分野における様々な製品の研究・開発・製造・販売を行う医療・健康関連製品メーカー。

世界最大規模で多角的なヘルスケア企業です。過去59年間増配を続けています。
医薬品、医療機器・診断の部門は合わせて売上高の80%近くを占め、キャッシュフローの大半を占めており、長期的に安定的な経営ができているといえます。しかし事業の新陳代謝も行われており、売上げの25%が直近5年に投入された新商品が占めるといわれています。

2021年1-3月期決算では前四半期決算発表時に出された売上、利益見通しのガイダンスが下方修正されています。
医薬品の販売の不確実性を考慮し、コロナワクチンの売上を除外し、
売上 旧)959億-969億ドル > 新)948億-958億ドル へ修正、
調整後の希薄化後EPS 旧)10.40-10.60ドル > 新)10.15-10.35ドル としました。

ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)

幅広い民間医療保険サービスを提供している世界最大級のヘルスケア企業です。
事業の柱は2つ。①アメリカで最大の医療保険サービスの事業である「ユナイテッドヘルスケア事業」。同社の売上高のメイン。②「オプタム事業」。ユナイテッドヘルスケアの医療保険事業で得られたデータを基に適切な病院や薬剤、医師などを提案してくれるサービスを提供しています。
営業利益率はユナイテッドヘルスケア事業と比べオプタム事業の方が高く、営業利益もオプタムが上回っています。

この2つの事業の組み合わせは景気に左右されにくい体質として見るべきで、
医療保険事業の収益安定性とテクノロジー企業としての成長性を併せ持ちます。

2022年1-3月期決算は、
売上高は 801億5000万ドル 前年同月比+14.2% 
償却費と税効果を除いた調整後EPSは5.49ドル、事前予想EPSの5.36ドルを上回っています。
2022年12月期の見通し ガイダンスは、
調整後EPS 旧)21.20ドル > 新)21.70ドル に引き上げています。

ファイザー(PFE)

革新的な医薬品やワクチンを含むヘルスケア製品の発見・開発・製造・販売に取り組む世界最大手の製薬企業の1つ。今やバイオ薬品にフォーカスした医薬品メーカーで、今後の中長期的な成長は開発医薬品のパイプラインにかかっています。
海外市場が全社売上高の50%近くを占めていますが、新興国市場が収益に大きく貢献しています。

2022年業績見通し ガイダンスは、
売上:980億ドル-1020億ドル 中間値の1000億ドルは前年比23%増
調整後EPS:6.35-6.55ドル 中間値の6.45ドルは前年比45%増です。

2022年4月22日時点で、松井証券で取引可能な銘柄のうち、業種※が「ヘルスケア」の銘柄を3銘柄ピックアップ
※GICS®(世界産業分類基準)で分類される業種

動画でも詳しく解説!

ディフェンシブが主役になるのか?「ヘルスケア」セクター解説編<米国株FOCUS5>
「ヘルスケア」個別企業解説編<米国株FOCUS5>

松井証券マーケットアナリスト 大山 季之

1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、2010年バークレイズ証券、2012年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案・自社株買い・金融商品組成に関わった。
現在は前職の経験をもとに、国内外マクロ・ミクロの分析を行う。

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