FXのサイクル理論とは?種類や周期、使用するときの注意点
FXで利益をあげるためには、チャートを分析し、相場全体の流れを把握することが重要です。サイクル理論はチャート分析の手法の一つとして、多くのトレーダーに用いられています。しかしFXを始めたばかりの方にとっては難しく感じられるかもしれません。
サイクル理論への理解が深まれば、相場環境の分析はもちろん、エントリーポイントや損切り・利確の判断に役立てることができるでしょう。本記事では、サイクル理論の基本的な概念や、実際の取引で活用する際の注意点を解説していきます。
サイクル理論とは
まずはサイクル理論の基本的な意味を理解しておきましょう。サイクル理論を使った取引で主に用いられる2つの決まった形についても解説します。
サイクル理論の基本的な仕組み
FXの相場は常に上昇と下降を繰り返しており、この周期を「サイクル」と呼びます。サイクル理論とは、サイクルに一定のパターンがあることに注目し、それを取引に活用する方法のことです。
サイクル理論では「安値(ボトム)から次の安値を1つのサイクル」と定義しているため、チャートの形が必ず高値(天井)を経由して山のような形になります。サイクル理論を活用することで、チャートの流れが読めるようになり、FXでの利益を出しやすくなります。
サイクル理論の2つのタイプ
サイクル理論には主に「ライトトランスレーション」と「レフトトランスレーション」の2つの形があり、分析していくことで売買のタイミングの判断に利用できます。
ライトトランスレーション
ライトトランスレーションとは、取引開始時の安値よりも高い価格で、次の安値が訪れるサイクルの形を指します。高値がサイクルの中間より時系列で後方に位置するのが特徴です。チャート上では山が右寄りに形成されるため、ライト(右)トランスレーションと呼ばれています。
ライトトランスレーションが形成されるときは、上昇トレンドにあり、買いの優位性が高い状態といえます。
サイクルを見つけた後、安値を更新していないことを確認したうえで、次の安値で買い注文を入れるのが基本的なエントリーのスタイルになります。また、起点を割り込んで安値を更新したタイミングで損切りするのがよいでしょう。
レフトトランスレーション
レフトトランスレーションとは、取引開始時の安値よりも低い価格で、次の安値が訪れるサイクルの形のことを指します。高値がサイクルの中間より前方に位置するのが特徴です。チャート上では山が左寄りに形成されるため、レフト(左)トランスレーションと呼ばれています。
レフトトランスレーションが形成されるときは、下降トレンドにあり、売りの優位性が高い状態といえます。
サイクルを見つけた後、高値を更新していないことを確認したうえで、次の高値で売り注文を入れるのが基本的なエントリーのスタイルになります。また、起点を上回り高値を更新した場合はすかさず、その損切りをするのがよいでしょう。
サイクル理論の7つの種類と周期
サイクル理論は、その周期に応じて大きく7種類に分類できます。ここではサイクル理論の種類や、周期のカウント方法を紹介します。
サイクル理論の7つの種類
サイクル理論の種類 | 周期 |
---|---|
1dayサイクル | 1日 |
4H(アルファ)サイクル | 5~8日程度 |
トレーディングサイクル | 10~18日程度 |
メジャーサイクル | 20~35日程度 |
プライマリーサイクル | 18~30週 |
中間(季節)サイクル | 12~20か月 |
長期サイクル | 40~100か月 |
サイクル理論は短期、中期、長期といった時間軸に合わせて複数の種類があります。自分のトレードスタイルに合わせてどのサイクルを使うか決めましょう。短期トレードであれば短い周期、長期トレードであれば長い周期を使用するのが基本です。
よく使われるのは4H(アルファ)サイクルやメジャーサイクル、プライマリーサイクルです。
4H(アルファ)サイクル
4Hサイクルは5~8日程度を1周期とするサイクルです。主に4時間足チャートでサイクルを確認します。デイトレードのような短期的な取引をメインとするトレーダーによって主に使われるサイクルです。
メジャーサイクル
メジャーサイクルは、20~35日を1周期とするサイクルです。主に日足チャートでサイクルを確認します。ハーフプライマリーサイクルと呼ばれることもあり、プライマリーサイクルと組み合わせて活用するケースが多くなっています。
プライマリーサイクル
プライマリーサイクルは、18~30週を1周期とするサイクルです。主に週足チャートでサイクルを確認します。一般的に、プライマリーサイクルは、スイングトレードを行うトレーダーにとって使用頻度の高いものとなっています。
サイクル理論の周期の数え方
サイクル理論の周期はローソク足を使用して数えます。サイクルによって、使用する時間足や1周期あたりのローソク足の本数は変わります。4Hサイクルであれば4時間足60〜80本前後、メジャーサイクルは日足35〜45本前後、プライマリーサイクルは週足15〜21本前後を1つとして波形をつくるのが一般的です。
必ずこの本数で規則的にサイクルを形成するというわけではありませんが、80%ほどの確率でこのような周期があてはまるといわれています。
サイクル理論を使用するときの注意点
サイクル理論の特徴を正しく理解せずに取引に使用すると、実際のトレードではうまく機能しない可能性があります。
サイクル理論だけを使用して取引を行わない
サイクル理論を過信した取引はリスクが高くなりがちです。サイクル理論では、大まかな相場の方向性を予測することはできるものの、これだけをトレードの根拠にするのではなく信頼性を補強するための分析と組み合わせたほうが安心です。
サイクルを見つけた場合、上昇トレンドの途中の安値での買いの実行、あるいはまだ下げの途中のリバウンド高値での売りをしているつもりが、実は見立て違いやいわゆるダマシだったというケースかもしれません。
したがって、サイクル理論だけでは、明確なエントリーや決済のシグナルが出るわけではないとの用心深さを保ち、細かいエントリーポイントを探るための他のテクニカル指標や理論を組み合わせて取引することが大切です。
サイクル理論と相性のよいテクニカル指標や理論としては、エリオット波動やRSIなどがあります。
大きなサイクルから分析を行う
サイクル理論を使うときは、大きなサイクルから分析を行いましょう。上位足(長期の時間軸のローソク足のこと)のサイクルのほうが、優位性が高く信頼できるサイクルといえるからです。FXでは、大きいサイクルが小さいサイクルを飲み込むように現れる傾向を利用して取引すると成果が得られやすいでしょう。
ちなみに少々難しくなりますが、上位足がライトトランスレーションの場合は、下位足のレフトトランスレーションが飲み込まれて、サイクルのスタート位置に割り込む(サイクルの終点が起点を割り込む)といったケースもあるので注意深く観察してみてください。
サイクルの中にある複数のサイクルを見つけ出す
サイクル理論をトレードで使う場合には「1つのサイクルの中に複数のサイクルがある」ことを意識しましょう。例えばプライマリーサイクルの中にメジャーサイクルを2〜3個、メジャーサイクルの中に4Hサイクルを2〜3個見出すことができるケースが多いものです。
メジャーサイクル1つの中に4Hサイクルを1つしか見つけられない場合は、基本的な分析が間違っていないか、今一度よく観察するとよいでしょう。
サイクル理論はチャートを予測するのに有効な手段の一つ
本記事ではサイクル理論の基礎知識や種類、実際の取引で活用する場合の注意点などを解説しました。
常に上昇と下降を繰り返すFX相場の中に規則性を見つけ、取引に活用する方法がサイクル理論です。サイクルには短期的なものから長期的なものまでさまざまな種類があるため、自身のトレードスタイルに合わせて活用することが大切になります。うまく活用できれば、相場のトレンドを把握でき、適切なタイミングでの売買につなげられるでしょう。
しかし、多くの分析方法、とりわけテクニカル分析においては、一つの方法だけで実践するのはリスクが高いです。サイクル理論も単独では万能ではありません。あくまでも相場全体の流れを把握することに優れた指標と位置づけ、より精度の高いエントリーポイントを探るために、ほかのテクニカル指標との併用が必要だといえるでしょう。
<監修者>
木村佳子
<プロフィール>
一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube 「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。