フィボナッチエクスパンションの使い方と手法について徹底解説!
2022/9/21
FXで安定した利益を得るためには、為替の値動きをグラフ化した「チャート」を分析して将来の価格を予測する「テクニカル分析」の活用が欠かせません。テクニカル分析で用いられる指標の一つがフィボナッチエクスパンションです。
本記事ではフィボナッチエクスパンションがどのような場面で役立つ指標なのか、その特徴や活用方法、注意点などを含めて詳しく解説します。
フィボナッチエクスパンションとは
フィボナッチエクスパンションはフィボナッチリトレースメントを応用した指標です。ここではフィボナッチエクスパンションの特徴や、チャート上での使い方を解説します。
フィボナッチエクスパンションとは、相場がどこまで拡張するのかを分析するツール
フィボナッチエクスパンションとは、「エクスパンション=拡大」という言葉の意味が示す通り、どこまで相場が拡大するかを予想するツールです。主にトレンド相場で用いられます。
- トレンド相場とは、価格に一定の方向性が出ている相場のことです。
トレンド相場は一見、継続して価格が上昇・下降しているように見えますが、実際は常に価格が細かく上下していることがほとんどです。トレーダーの間では、上昇トレンドの最中に価格が一時的に下がることを「押し目」、下降トレンドの最中に価格が一時的に上がることを「戻り」と呼びます。押し目や戻りが入った後、その後どこまで相場が動くのかを探る指標がフィボナッチエクスパンションです。
相場がどこまで動くのかがわかれば、決済するポイント、すなわち利益確定のポイントがわかります。たとえば、押し目のあと、価格が上昇しきったタイミングで決済すれば多くの利益を得られるでしょう。
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フィボナッチリトレースメントとの違い
フィボナッチエクスパンションは、エントリーした後にどこまでポジション(新規で買い注文または売り注文を出し、決済せずに保有している通貨のこと)を保有すべきかを視覚的に判断する指標です。
一方、フィボナッチリトレースメントは相場の反転がどこで発生するかを探る指標です。つまり、買い注文や売り注文を出す「エントリーポイント」を探るのに有効な指標として利用されるという違いがあります。
リトレースメントとは「引き返す、後戻りする」といった意味を表します。たとえば上昇トレンド中に価格が下がり始めた後、どこで上昇相場に戻るのかを探れるのがフィボナッチリトレースメントです。
それぞれの指標の特徴を生かし、フィボナッチリトレースメントで押し目買いのポイントを探り、フィボナッチエクスパンションに基づいて利益確定をするといった使い方もできます。
フィボナッチリトレースメントとの共通点
フィボナッチエクスパンションとフィボナッチリトレースメントは、ともに「フィボナッチ比率」をベースにした指標であるという共通点があります。
フィボナッチ比率とは「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89」のように、「前の2つの数を加えると次の数になる」というフィボナッチ数列から見出された比率のことです。
フィボナッチ数列のそれぞれの数を一つ後ろ、二つ後ろ、三つ後ろの数で割ると、最終的に「0.618」「0.382」「0.236」といった答えが続くことになります。この比率がフィボナッチ比率です。フィボナッチ比率は黄金比とも呼ばれ、自然界のあらゆるものに存在する法則とされています。このフィボナッチ比率を市場の値動きに応用したものが、フィボナッチリトレースメントやフィボナッチエクスパンションです。
フィボナッチエクスパンションの使い方
相場の上昇局面では、安値を起点、高値を終点とし線で結びます。この上昇幅を1とし、押し目からの値動きを予測します。
以下のチャートの場合、①を起点、②を終点と考え、終点後の押し目③からの値動きを見ていきます。
上昇幅をもとにチャート上に38.2%、50%、61.8%、100%と線を引いていくと、100%のライン付近を天井にして下落しているため、ここが利益確定の決済ポイントと考えることができます。
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松井証券 FXの各チャート画面では、フィボナッチエクスパンションは利用できません。
(利用可能なテクニカル指標はこちら)
反対に下落局面では、高値を起点、安値を終点とし線で結び、下落幅をもとに戻りからの値動きを見ていきます。考え方は上昇局面と同じです。
このように相場を読み解いていくことで、決済ポイントを探ることができます。
どこのラインで決済しても問題ありませんが、高いラインでの決済を狙うほどハイリスクハイリターンとなるため注意しましょう。相場のトレンドが強いときは100%や161.8%のラインを、弱いときは38.2%のラインを狙う、といった方法もよいかもしれません。
すなわち、決済も一つの価格をもって乾坤一擲なポイントを狙うのではなく、時間および価格を分散させて決済を行うなどの工夫をすると良いでしょう。
一般的に、61.8%、100%、161.8%のラインは多くのトレーダーが意識するポイントです。そのため、これらのライン上で価格が下げ止まりや上げ止まりを見せるケースも多くあります。
また、フィボナッチエクスパンションは利益確定の決済ポイントとしてだけではなく、逆張りのエントリーポイントと見ることもできます。
逆張りとはトレンドの流れに逆らうことで利益を狙う方法のことです。たとえば上昇トレンドにおいて、価格が上がりきったタイミング(=フィボナッチエクスパンションでの決済ポイント)で売りポジションを持ち、その後下降トレンドに変化すれば、大きな利益を狙えます。
フィボナッチエクスパンションの注意点
フィボナッチエクスパンションを効果的に活用するために、いくつかのポイントを押さえておきましょう。
フィボナッチエクスパンションの注意点
利益確定は分けて行う
一度にすべてのポジションを決済してしまうと、利益を出す機会を逃すおそれがあるため注意が必要です。たとえばフィボナッチエクスパンションの61.8%のラインで相場が止まるような動きを見せているものの、上昇トレンドが継続し、最終的に100%のラインの水準まで上昇したとします。このとき61.8%ですべてのポジションを売却してしまった場合、その後の上昇トレンドで利益を出す機会を逃してしまうことになるのです。利益確定は分けて行ったほうが、より大きな利益を得られる可能性があるでしょう。
利益確定の位置はほかの材料も参考にする
どのテクニカル指標にもいえることですが、フィボナッチエクスパンションで示されるシグナルは絶対的なものではなく、あくまで目安に過ぎません。
決済ポイントの精度を高めたいのであれば、レジスタンスラインやサポートライン、移動平均線など、ほかのテクニカル指標も参考にしながら、売買の判断をしたほうがよいでしょう。
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フィボナッチエクスパンションが効果を発揮する相場
上昇や下降がハッキリとしているトレンド相場
上昇と下降がハッキリしていなければ、押し目や戻りでのエントリーを上手に行うことができません。特に相場の方向性が定まっていない「レンジ相場」では、価格が上昇と下降を頻繁に繰り返すことがあるため、押し目だと思ってエントリーしても、すぐに値下がりしてしまい、ロスカットされてしまうといったこともありえます。
上昇や下降がハッキリとしていれば、押し目や戻りでエントリーしやすくなります。エントリー後は一定方向に価格が動いていくため、フィボナッチエクスパンションを活用することで利益を伸ばしやすいといえるでしょう。
高値と安値がハッキリしている
フィボナッチエクスパンションを活用するためには、起点、終点、反発地点の3か所を決めて、線を引かなければなりません。3つのポイントを誤って設定すると、表示される結果は大きく変わってしまいます。高値と安値がハッキリとしているほうが、3つのポイントを見つけやすく、より正確な決済ポイントを見つけられる可能性があるでしょう。
フィボナッチエクスパンションは決済ポイントを判断する目安となる指標
本記事では、フィボナッチエクスパンションの特徴や活用方法、より効果的に使うためのポイントなどを解説しました。
フィボナッチエクスパンションは、利確ポイントを判断するときに効果を発揮するテクニカル指標です。主にトレンド相場で用いられますが、レンジ相場や高値と安値が曖昧な相場では効果が発揮しにくいという側面もあるため、実際のトレードではほかのテクニカル指標も併用すると、よりよい結果につなげられるでしょう。
また、フィボナッチエクスパンションは視覚的に決済ポイントを判断できる指標です。エントリーポイントを判断するフィボナッチリトレースメントとは相性がよいため、積極的に使ってみるのもよいかもしれません。自分にとって使いやすいテクニカル指標を見つけ、理解を深め、トレードの上達に役立ててください。
<監修者>
川口一晃
<プロフィール>
1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。