一目均衡表とは?基本的な見方や使い方から意味ないと言われる理由までわかりやすく解説
FXや株式投資でテクニカル分析を学び始めた方なら、「一目均衡表(いちもくきんこうひょう)」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。
一目均衡表とは、5本の線と「雲」と呼ばれる特徴的な帯を使って、相場の方向性や転換点、売買のタイミングなどを総合的に判断するテクニカル指標の1つです。
日本で考案された指標として、世界中のトレーダーの間で一般的に使われていますが「見方や活用方法がわからない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、一目均衡表の基本的な見方や使い方、注意点などを詳しく解説します。一目均衡表についての理解を深め、取引に活用していきましょう。
一目均衡表とは?
株価や為替の値動きをグラフ化した「チャート」を基に、過去の価格推移から将来の値動きを予測する方法を、「テクニカル分析」といいます。テクニカル分析で用いられるのが「テクニカル指標(インジケーター)」です。
一目均衡表とは、1936年に株式評論家の細田悟一氏によって、テクニカル指標の一つとして考案されました。「一目山人」というペンネームを使用していたことから、一目均衡表と呼ばれるようになりました。株価を基に考案された指標であるものの、FXの為替レートに対しても用いられるようになっています。
一目均衡表は、テクニカル指標の中でも「トレンド系」に分類される指標で、「売り手と買い手のバランスが崩れたときに相場は大きく動く」という考え方に基づいています。
均衡が崩れた後はその相場の方向性(トレンド)が一定期間続くのが一般的です。つまり、一目均衡表を使うことにより、相場の流れや方向性を把握しやすくなります。
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一目均衡表の「5つの線」と「雲」との見方
一目均衡表は、基準線・転換線・先行スパン1・先行スパン2・遅行線(遅行スパン)の5本の基本補助線を用いて表示させたものです。そして先行スパン1と先行スパン2の間に発生する部分を「雲」と呼びます。雲の向きや雲と価格の位置関係、各補助線の位置関係に注目することにより、さまざまなシグナルが読み取れます。

一定期間内における通貨の4つの価格(始値、終値、安値、高値)を1本のローソクの形で表現したものを「ローソク足」といいます。一定時間の値動きをまとめたローソク足が「時間足」です。例えば、1分間の値動きをまとめたものは「1分足」、1時間であれば「1時間足」と呼ばれます。一目均衡表は主に1日単位の「日足」を表示したチャートで用いられます。
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1.基準線
過去26日間の最高値と最安値の平均(基準値)を算出し、複数の数値をつなぎ合わせて表示させた線が「基準線」です。
例えば、米ドル/円の通貨ペアにおいて、当日を含む過去26日間の最高値が130円、最低値が120円のときには、125円が基準値となり、数日分の基準値をつなぎ合わせると基準線がつくられます。
基準線が上向きであれば上昇が強い、下向きであれば下落が強いと判断できます。中期的なトレンドの分析に効果的です。
2.転換線
当日を含む過去9日間の最高値と最安値の平均を算出し、複数の数値をつなぎ合わせて表示させた線が「転換線」です。
転換線が上向きであれば上昇が強い、下向きであれば下落が強いと判断できます。短期的なトレンドを分析するのに用いられるのが特徴です。
3.先行スパン1
先行スパン1は、基準線と転換線の平均値を26日先、つまりチャート上の右側に先行して表示した線です。
先行スパン1は、短期的な転換線と中期的な基準線の平均値をもとにしており、短中期的な相場の動向を示す線とされています。また、価格が下落した際の支持線や、上昇した際の抵抗線として機能することがあります。
4.先行スパン2
先行スパン2は、過去52日間の最高値と最安値の平均値を、26日先の位置に表示させた線です。
長期的な値動きを表す線なので、先行スパン1よりも緩やかに動くことが多く、明確なトレンドがなければ横ばいになることも少なくありません。
先行スパン1と同様に、価格が下落した際の支持線や、上昇した際の抵抗線として機能することがあります。
5.遅行線
一目均衡表の中でも、最も重要な要素といわれているのが「遅行スパン」です。当日の終値を26日前に、つまりチャートの左側に遅行させて表示します。当日の価格と26日前の価格を比較することになるため、遅行線がローソク足よりも上に表示されていれば上昇が強い相場、下に表示されていれば下落が強い相場と判断できます。
雲(抵抗帯)
雲とは、先行スパン1と先行スパン2の間に挟まれた帯状の領域のことです。「抵抗帯」や「支持帯」と呼ばれることもあります。
ローソク足(現在の価格)が雲よりも上にある状態は、強い上昇トレンドを示唆し、雲は下値支持帯として機能することがあります。逆に、ローソク足が雲よりも下にある状態は、強い下降トレンドを示唆し、雲は上値抵抗帯として機能することがあります。
また、雲は厚みがあるほど抵抗線や支持線として機能しやすく、ローソク足が雲を突き抜けるのは難しい(レンジ相場になりやすい)とされています。
また、先行スパン1と先行スパン2が交差する「雲のねじれ」部分は、トレンド転換の可能性を示唆するため、注意が必要しましょう。
一目均衡表の3大理論
一目均衡表は、「時間論」「波動論」「水準論」の3つの理論を基につくられています。時間に着目したのが時間論、価格に着目したのが波動論と水準論です。

時間論
一目均衡表を分析するうえで基礎的かつ重要な視点といわれるのが時間論です。時間論を活用するとトレンドの転換や相場のサイクルを予測しやすくなります。
「9」「17」「26」は基本数値と呼ばれ、基本数値を組み合わせた「33」「42」「52」「65」「76」などを複合数値と呼びます。
細田氏の研究によると、9日、17日、26日といった基本数値の期間で相場が転換しやすい傾向にあるようです。基準線や転換線を算出する際の基となっていることもあり、重要な数値となっています。
波動論
波動論は、チャートの波形パターンから相場を分析する方法です。チャートの波形には主に、次の3つの形があります。
I波動 | 安値から高値に上昇する動きのみ、高値から安値に下落する動きのみ |
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V波動 | 価格が上昇した後下落する、または価格が下落した後上昇する |
N波動 | 価格が上昇した後下落し、再度上昇する、または価格が下落した後上昇し、再度下落する |
一般的には、I波動とV波動が繰り返され、最終的にはN波動になるとされています。
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水準論
水準論は「値幅推測論」ともいわれ、上値と下値から次の天井と底を推測する方法です。つまり、それまでの価格の動きから今後どの程度まで上昇または下落するのかを分析します。
「E計算値」「V計算値」「N計算値」「NT計算値」の4つが代表的な計算方法です。価格が上昇(第1波)し、そのあと下落(第2波)、再度上昇(第3波)する相場においては、次のように価格を予測できます。
E計算値 | 第1波の値幅と比べて第3波が2倍の値幅で上昇する |
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V計算値 | 第2波の値幅と比べて第3波が2倍の値幅で上昇する |
N計算値 | 第1波と第3波が同じ値幅で上昇する |
NT計算値 | 第1波と第2波の差の分だけ、第3波で上昇する |
一目均衡表の使い方
一目均衡表の5つの線と雲の位置関係や動きから、相場のトレンドや売買シグナルを読み取ることが可能です。ここでは基本的な使い方を3つのポイントに絞って解説します。
雲(先行スパン1と2の間)を見る
「雲」は、相場のトレンドや支持・抵抗帯を示す指標です。ローソク足が雲の上にあれば上昇トレンド、下にあれば下降トレンドとされます。
ローソク足が雲の中にある場合はレンジ相場になりやすく、先行スパン1と先行スパン2が支持帯・抵抗帯として意識されるケースが一般的です。抵抗帯を上抜けしたら上昇トレンド、支持帯を下抜けしたら下降トレンドの発生につながる可能性があり、順張りのエントリーポイントとして注目されます。
また、先行スパン1と2が交差する「ねじれ」は、トレンド転換の可能性を示すサインとして注目されることが多くなっています。
転換線と基準線のクロスを見る
転換線と基準線のクロスはトレンド発生のサインとして活用されています。転換線が基準線を下から上に突き抜ける(ゴールデンクロス)状態は「好転」と呼ばれます。短期的な勢いが中期的な流れを上回ってきたことを示唆しており、買いシグナルとされます。
転換線が基準線を上から下に突き抜ける(デッドクロス)状態は「逆転」と呼びます。短期的な勢いが中期的な流れを下回ってきたことを示唆しており、売りシグナルとされます。
遅行スパンでトレンドの確認
遅行スパン(当日の終値を26日前に表示したもの)とローソク足の位置関係から、相場の方向性や勢いを判断することが可能です。
遅行スパンがローソク足を上抜けた場合は「好転」と呼ばれ、上昇トレンドへの転換シグナルとして注目されます。一方で、下抜けると「逆転」となり、下降トレンド入りの可能性があると見なされます。
また、遅行スパンが雲やほかのラインも同時に抜けるような場面では、シグナルとしての信頼性がさらに高まると考えられています。
一目均衡表は意味ないと言われる理由は?
一目均衡表は日本発のテクニカル指標として多くのトレーダーに利用されていますが、一部では「意味がない」「使いにくい」といった否定的な意見も存在します。
その理由の一つは、構成が非常に複雑である点です。
転換線・基準線・先行スパン1・先行スパン2・遅行スパンという5本の線と、雲と呼ばれる領域を使って相場を分析するため、雲が絡み合い、それぞれの位置関係や角度、交差などからトレンドや売買のシグナルを総合的に判断する必要があります。
その複雑さから、初心者の方にはハードルが高いと感じることがあります。各構成要素の意味や3大理論(時間論、波動論、水準論)を理解し、それらを組み合わせて相場を読み解くには、ある程度の学習と経験が必要です。
また、一目均衡表では「三役好転」や「三役逆転」といったパターンが売買シグナルとして注目されることが多くなっています。
以下3つの条件が揃った時は「三役好転」と呼ばれ、強い買いのシグナルです。
- 転換線が基準線を上抜く
- 遅行スパンがローソク足の上限を上抜く
- ローソク足が雲の上限を上抜く

反対に、以下3つの条件が揃った時は「三役逆転」と呼ばれ、強い売りのシグナルです。
- 転換線が基準線を下抜く
- 遅行スパンがローソク足の下限を下抜く
- ローソク足が雲の下限を下抜く

これらの発生頻度は限られており、タイミングよくエントリーするのが難しいという課題もあります。
とはいえ、一目均衡表は相場の大きな流れや節目となる価格帯を視覚的に把握する際には有効なツールです。実際のトレードでは、一目均衡表を単独で用いるのではなく、ほかのテクニカル指標と組み合わせたり、ファンダメンタルズ分析と併用したりすることで、その分析精度を高めることは可能です。
一目均衡表を活用するときの注意点
一目均衡表は多くの情報を読み取れる便利な指標ですが、万能ではありません。効果的に活用するためには、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。
ダマシが発生することがある
テクニカル指標全般に言えることですが、一目均衡表の売買シグナルが必ずしも正確であるとは限りません。シグナルが出たにもかかわらず、予測とは逆方向に価格が動いてしまう「ダマシ」が発生するおそれがあります。
特に、トレンドの転換点や方向感のないレンジ相場では、雲を抜けたり、線がクロスしたりしても、それが一時的な動きに過ぎず、すぐに元の状態に戻ってしまうケースが見られます。例えば、転換線が基準線を上抜ける「好転」が出ても、すぐにまた下抜けてしまうといった具合です。
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ダマシによる損失を避けるためには、一目均衡表のシグナルだけで即座に売買を判断するのではなく、RSIやMACDなどほかのテクニカル指標を活用するなど、複数の根拠をもとにエントリーしましょう。
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【解説動画】マネーサテライト「一目均衡表の使い方」
時間軸によって結果が大きく異なる
一目均衡表は、表示させるチャートの時間軸(分足、1時間足、4時間足、週足、日足など)によって、線の位置や雲の形、そして示されるシグナルが異なります。
例えば、日足では上昇トレンドを示していても、「1時間足では下降トレンドを示している」といったようにシグナルの矛盾が発生することも少なくありません。
短期的なトレードを行うデイトレーダーと、中長期的な視点で投資を行うスイングトレーダーやポジショントレーダーでは、重視すべき時間軸やシグナルが変わってきます。自分のトレードスタイルに合った時間軸を選び、分析を進めるようにしましょう。
相場の「状態」によって強弱が変わる
一目均衡表は、トレンドが明確に出ている相場では有効に機能しやすい一方で、方向感のないレンジ相場(持ち合い相場)では、シグナルが曖昧になったり、ダマシが多くなったりする傾向があります。
レンジ相場では、価格が雲の中を行き来したり、転換線と基準線のクロスが頻繁に発生したりして、明確な売買判断がしにくくなります。
また、経済指標の発表や要人発言など、市場に影響を与えるニュースによって相場が急変動した場合、一目均衡表が機能しないケースも少なくありません。
したがって、一目均衡表を使う際は、単にシグナルを見るだけでなく、現在がトレンド相場なのかレンジ相場なのか、市場のボラティリティ(変動率)はどの程度か、といった相場環境全体を考慮することが必要です。「今は一目均衡表が効きやすい局面か、効きにくい局面か」を見極める視点も持った方が良いでしょう。
先行スパンや雲だけに頼らない
一目均衡表の中でも、「雲」やそれを形成する「先行スパン」は、抵抗線や支持線としてわかりやすく、つい注目してしまいがちです。
しかし、雲や先行スパンの情報だけで売買を判断するのは不十分な場合があります。例えば、ローソク足が雲を上抜けたからといって必ず上昇トレンドが発生するわけではありません。
一目均衡表の分析精度を高めるためには、雲や先行スパンだけでなく、転換線、基準線、遅行スパンといったほかの構成要素との位置関係や、3大理論(時間論、波動論、水準論)なども参考にしながら総合的に相場の流れを読み解く必要があります。
一目均衡表は見方を理解できれば初心者でも活用できる指標
一目均衡表は、トレンドだけではなく、売買のタイミングを見極める手がかりにもできるテクニカル指標です。一見、複雑に見えますが、各補助線や雲、ローソク足の位置関係を把握できれば、初心者であっても実際のトレードに活用できます。見慣れて傾向を観察しましょう。
ただし、テクニカル指標には「だまし」がつきものです。売買サインを示したあとに思惑と異なる方向に価格が推移する可能性もあります。一目均衡表だけではなく、MACD(マックディー)やボリンジャーバンドなど、ほかの指標も組み合わせて使うことで、より正確な相場分析ができるようになるでしょう。
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<監修者>
木村佳子
<プロフィール>
一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube 「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。