FXにおける損切りとは?目安やルール、損失を抑えるためのポイント
FXのトレードにおいて、「損切り」について理解を深めることは大切です。
しかし「なぜ損切りが重要なのか」や、「どのような場合に損切りすればよいのか」など、具体的にはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、損切りの基本的な意味やその重要性、トレードにおける実践的な考え方について解説します。損切りの仕組みを十分に理解できれば、FXのトレードにおけるリスクを効率的に抑えられるようになるでしょう。
FXにおける損切りとは?
一般的にリスクが大きい投資といわれるFXにおいて、損切りはリスクを効果的に抑える役割を果たします。
損切りの意味と重要性
損切りとは、為替相場が自分の期待とは反対の動きをした際、損失を抱えている状態でポジションを決済することです。言い換えれば、損失を承知のうえで決済することです。
損切りは、株式取引や先物取引などにも見られる、投資における基本的行為の一つです。FXの場合、時間帯や通貨ペアによっては短期間で大きく相場が変動することもあり、損切りの素早い判断が求められる局面があります。
一方、相場が反転する前に、利益が出ている状態でポジションを決済するアクションは、利確(利益確定)や利喰いと呼ばれています。
では、なぜFXにおいて損切りが重要といわれるのでしょうか。それは、FXでは利益を大きくすることだけではなく、損失を小さくすることも大切だからです。
FXではプロのトレーダーであっても、相場を完璧に予測することはできません。損失を100%避けることは難しいため、利益の獲得と損失の発生を繰り返しながら、トータルでのプラスを目指します。ある程度の損失は受け入れざるを得ないものだとすれば、損失額をどれくらい小さくできるかが、結果的にトータルでの利益を左右することになります。
たとえ高い勝率で利益を積み重ねたとしても、一度の損失が大きければあっという間に元本を棄損してしまいます。損失を最小限に抑えるためには、一定のルールやタイミングを目安にして、含み損を抱えているポジションに見切りをつけることが大切なのです。
FXで損切りしないとどうなる?
FXにおいて、適切なタイミングで損切りをするのは簡単ではありません。特にFX初心者の場合、損失を受け入れられず、相場が戻るかもしれないという根拠のない期待を待ってしまったり、資金が減っていくのを見て冷静な判断が下せなくなったりすることがあります。
このように損切りができず、ポジションを長期間持ち続けることは「塩漬け」と呼ばれます。根拠のない期待だけで、損切りをせず放置していると、損失額が膨らむリスクがあるため注意が必要です。
たとえば1ドル=100円のときに10,000ドルを購入し1ドル=99円になった場合、損失額は1万円で済みます。しかし、損切りをせずに、1ドル=98円、97円と価格が下がっていくと、損失額は2万円、3万円と徐々に大きくなっていくのです。最終的にはロスカットが執行される事態に陥る可能性があります。
ロスカットとは、口座内の残高(松井証券のFX取引ではリアルタイム維持率)が一定ラインまで減った時にFX会社が強制的にポジションを決済する機能です。ロスカットが執行されるとその時点で損失が確定し、ポジションを手放すことになるため、そのあと相場が反転しても、利益を得るチャンスを逃してしまいます。レバレッジ(少ない金額で大きな資金を取引できる仕組みのこと)をかけて取引している場合には、損失の幅も大きくなるため、一気に資金を減らしてしまうこともあるでしょう。
適切なタイミングで損切りができれば、損失額を最低限に抑えられるだけでなく、相場が好転した時に改めてポジションを立て、再び利益を狙うこともできます。
FXの損切りのルールやタイミング、注文方法
次に、損切りのタイミングをどのように見極めたらよいのかについて考えてみましょう。あわせて、損切りに役立つ注文方法についても解説します。
FXの損切りのルールやタイミング
損失額を目安にする
損切りは損失額の規模を基準にすることで判断できます。「新規の注文をした後、損失額が2万円になったら損切りする」といったように、あらかじめ許容できる損失の目安を決めておくのです。
損失額で損切りの目安を決める方法は、複雑な計算が必要ないため、FX初心者でもわかりやすい指標だといえます。ここで設定する損失額は、総資金の2〜数%程度にしておくのが無難でしょう。
値幅(pips)を目安にする
新規で注文が成立した為替レートからの値幅を基準に、損切りする方法もあります。値幅とは、2つの値段の差のことで、FXでは一般的にpips(ピップス)という単位で表されます。たとえば「買値から0.1円(10pips)下がったら決済する」といった具合です。
テクニカル分析を活用する
FXでは、テクニカル分析を活用して損切りを判断するという方法もあります。特に活用しやすいのはトレンドラインです。トレンドラインとは、相場で上昇・下降・横ばいのうちどのトレンドが発生しているかを測るため、チャート上に記す線のことを指します。トレンドラインには、サポートライン(下値支持線)とレジスタンスライン(上値支持線)の2種類があります。
トレンドラインを基準にして損切りをする手法が有効と言われるのは、価格がトレンドラインを越えると、同じ方向に相場が動く傾向があるためです。たとえば、価格がサポートラインを割り込んだ場合には下降トレンドが強まることが予想できます。このときすでに買い注文をしている場合には、損失が広がりやすくなるため、サポートラインの下で損切り(決済の売り注文)を入れておく選択肢が浮上します。反対に、価格がレジスタンスラインを超えた場合には上昇トレンドが強まります。このとき売注文をしている場合には、レジスタンスラインの上で損切りを入れるという考え方です。
ただしトレンドラインを活用する場合には、ライン上やラインの近くギリギリに損切りを入れるのは避けた方がよいかもしれません。というのも、FXの相場では、理論通りの値動きをしない「だまし」がしばしば発生するためです。
たとえば、サポートラインを割り込み、価格が下落すると思いきや反発したり、レジスタンスラインを超えて価格が上昇するかと思いきや、反落したりすることなどがあります。ライン上やラインの近くギリギリに損切りを入れていると、相場が反転したときの恩恵を受けられず、損失ばかりが積み上がってしまう可能性があるのです。損切りのポイントを、トレンドラインから余裕を持った位置に設定するのも手でしょう。
また、テクニカル分析を用いて損切りをすると、相場の値動きにタイムリーに対応できるため、損失を抑えやすいというメリットがあります。逆に言えば、損失額や値幅で損切りポイントを決める場合には、相場の流れに合わせて損切りをするわけではないため、相場が予測と反対方向に大きく動いた後に決済してしまうリスクがあるのです。すなわち、安易な損失額や値幅を設定して損切りラインを決めた場合、損切りラインに到達し、損切りされた後に当初の予想通りの展開になることも多いのです。つまり、結果的には相場の方向性はあっていたものの、損切りでポジションが無くなっていたという状態です。これを『ロスカット(損切り)貧乏』と呼んだりします。故に、テクニカル分析などを使い、しっかりと値動きを分析した水準で損切りラインを決める方法をお勧めします。
FXの損切りを行うための注文方法
逆指値注文(ストップオーダー)
逆指値注文とは、現在の為替よりも不利なレートを指定して発注する注文方法のことです。ストップ注文やストップオーダーと呼ばれることもあります。具体的には、指定した為替レートよりも高くなったら買い注文、安くなったら売り注文をします。たとえば1ドル=130円の時に買い注文を入れて、1ドル=120円で逆指値注文をすると、1ドル=120円以下になったときに売り注文が実行される、つまり損切りが実行されるのです。
反対に、1ドル=130円の時に売り注文を入れて、1ドル=140円で逆指値注文をすると、1ドル=140円以上になったときに買い注文が実行されます。
逆指値注文を行うことで、自動的に損切りを行ってくれるため、大きな損失を防ぐことが期待できます。
OCO注文
OCO注文とは、指値注文と逆指値注文の、2つの注文を同時に出し、どちらかが成立したらもう片方の注文が自動でキャンセルされる注文方法のことです。「予想どおり上がったら利益確定する」「予想に反して下がったら損切りする」という2パターンの決済注文ができます。
たとえば、1ドル=130円で買い注文をした場合、損切りするための1ドル=120円の逆指値注文と、利確をするための1ドル=140円の指値注文を同時に入れることができるのです。
OCO注文では損失を抑えつつも、一定の利益を狙うことができます。
FXの損切りで損失を抑えるためのポイント
FXで一定の経験があるトレーダーであっても、適切なタイミングで損切りを判断するのは決して簡単ではありません。とはいえ正しく損切りを実行できなければ、損失を広げてしまう可能性があります。
決めたルールを守って損切りを行う
損切りの難しさは、自分で決めた損切りのルールを「いかに守るか」にあります。一般的に、利益を得る達成感より、損失による痛みを回避することを好む傾向があるからです。そのため、損切りのルールを設定していても、いざ損失が出てしまうと目の前の痛みを避けるために損失確定を先送りし、相場の反転に期待してしまうといったことが頻繁に起こりえます。
このような事態を避けるためには、エントリー時に忘れずに逆指値注文も入れておきましょう。自動的に注文が実行されるため、投資判断が感情に左右される心配がありません。
「損切り貧乏」にならないようにする
いわゆる「損切り貧乏」とは、損切りを繰り返すことで資金を減らしてしまうことを指します。
「損切り貧乏」になってしまう主な原因としては、具体的な取引のルールを決めず、感覚だけで損切りをしていることが挙げられます。一方、損切りを重視するあまり、損失に敏感になり過ぎてしまうのも考えものです。あらかじめルールを決め、根拠を持った取引を心がけましょう。
利益に見合った損切り幅を決める
損切り幅を決めるときには、利益幅とのバランスについても考えておきましょう。利益幅が損切り幅より少なければ、どんなに勝率が高くても利益を積み上げることは難しくなります。一般的に、損切り幅は、利食い幅の半分以下に設定しておくのがよいとされています。
「FXでは適切に損切りを受け入れて着実に実行することが大切」
FXで安定した利益を出すためには、ある程度の損失が出ることを受け入れる必要があるでしょう。そのうえで、損失額をどれだけ抑えられるかが、トータルで利益を生み出す鍵になります。損失額を抑える有効な手段の一つが損切りです。
ただし、むやみに損切りをしていては、利益を出しにくくなる可能性があります。初心者であっても、値幅や損失額などを目安にして一定のルールを設定することで、損切りの判断を下しやすくなるでしょう。
一時的な感情に左右されず着実に損切りを実行するために、自動的に注文が実行できる逆指値注文やOCO注文などの活用も検討してみましょう。
<監修者>
川口一晃
<プロフィール>
1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。