贈与サービスの活用術:その2 生前贈与の活用例

贈与支援サービスの活用法をご紹介!

生前贈与活用例① 子から孫まで複数人への贈与

贈与税の基礎控除額は、受贈者1人あたり年間110万円までです。そのため、子に限らず、未成年の孫や子の配偶者など複数人に対して贈与を行えば、短期間により多くの財産を非課税で移転可能です。

例えば、子2人と孫4人に年間110万円ずつ贈与した場合、年間合計660万円を非課税で移転できます。さらにこれを5年間続けたとすれば、合計3,300万円の相続財産をあらかじめ移転することになります。

相続財産7,000万円、法定相続人が子2人の方が何も対策せずに亡くなった場合、2015年(平成27年)以降は相続税が320万円かかります。一方、3,300万円の贈与を相続開始前の3年前までに行っていれば、相続財産は3,700万円となり、基礎控除額4,200万円の範囲内におさまるため、相続税がかかりません。

なお、相続人ではない孫や子の配偶者が受贈した財産は、相続開始前3年以内に贈与された財産も相続税の対象に加算されないというメリットがあります。

生前贈与を行わなかった場合と行った場合の比較
  • 上記例は2015年(平成27年)以降の相続税・贈与税に関する制度が継続して適用される場合のものです。
  • 暦年贈与により相続開始前3年以内に相続人が受贈した財産は、相続税の対象となります。

生前贈与活用例② 株式の贈与にはメリットが多い!

現金だけでなく、保有している株式をそのまま贈与することも可能です。

贈与した株式の評価は、次の①〜④の価格のうち最も低い価格で評価します。贈与時点で株式が値上がりしていても、過去における低い株価で評価し、贈与税を計算することが可能です。

  • 贈与日の最終価格
  • 贈与月の毎日の最終価格の平均額
  • 贈与月の前月の毎日の最終価格の平均額
  • 贈与月の前々月の毎日の最終価格の平均額

例えば、株価1,000円の銘柄を1,000株(時価総額100万円)保有しているとします。株価が値上がりして1,100円を超えた場合、全数量を贈与すると、贈与した株式の時価総額が基礎控除額の110万円を超えてしまいます。

ただし前述のとおり、株式の贈与は過去の株価で評価し、贈与額を計算します。そのため、贈与した時点で1,500円に値上がりしていたとしても、例えば「④贈与の前々月の平均額」が1,000円であれば、贈与額は150万円ではなく100万円として評価できるため、基礎控除額の範囲内で贈与が可能です。つまりこの場合、贈与時点で150万円相当の株式を、贈与税をかけずに贈与することができます。
保有している株式が値上がりした際には、その株式を贈与することで、評価額を抑えてより多くの財産を移転することが可能となります。

さらに、株式を早期に贈与しておくことで、自身が保有し続けるケースと比べ、以後に得られる値上がり益や配当金に対して、将来的に贈与税や相続税が課税されずに済むメリットもあります。

株式の贈与にはメリットが多い!

Point!

贈与したと思っていた財産でも、贈与が認められず、相続税が課税されるケースがあります。贈与を行う際は、要件を満たすよう、次の点に注意が必要です。

  • 贈与の記録を残す
    贈与は、贈与者と受贈者がお互いに合意して行う必要があります。贈与契約書などを作成し、贈与を行った事実を証明できる記録を残すようにしておきましょう。
    また、毎年一定の額を同じ時期に贈与を行っている場合などは、「○年間にわたり毎年△万円ずつの給付を受ける権利」の贈与を初年度に受けたとして、贈与税が請求される可能性があります。贈与契約書は都度作成し、個別に贈与契約を行ったことを証明できるようにしておきましょう。
  • 贈与財産は受贈者が管理する
    贈与が行われた財産は受贈者のものとなるため、受贈者が自由に使える状態であることが必要です。例えば、子名義の口座に毎年振り込んでいたとしても、子がその事実を知らなかったり、預金通帳や銀行届出印を親が管理している場合には、子の名義を借りて親が預金していただけと判断される可能性があります。この場合、贈与はなかったものとみなされ、親の財産として相続税の対象となってしまいます。受贈者の名義を借りた預金ではないことがわかるよう、通帳や印鑑は贈与を受けた方が管理するようにしましょう。

贈与の事実を証明できるようにしておくには面倒な手間がかかりますが、これらを怠ってしまうと、せっかく計画的に行った贈与が意図どおりではないものになってしまう可能性があります。

  • 松井証券の贈与支援サービスを利用すると、贈与の事実を報告書として発行するため、記録を残すことが簡単になります。

生前贈与活用例③ 財産が多く、早く財産を移転したい方向け

財産が多い方の場合、年間110万円を超える額を贈与した方が、結果的に税金が少なく済む場合があります。

例えば、財産を3億円もっている方が、年間110万円の贈与を子2人と孫4人に5年間行った場合、相続税は5,600万円となります。一方、年間の贈与額を310万円に増やして同様に贈与を行った場合、贈与を受けた子と孫に対して贈与税が600万円かかりますが、相続税は3,550万円となるため、税金の合計は4,150万円となります。

ただし、高額な贈与の場合、相続税よりも贈与税の方が税率が高くなる場合があります。贈与により相続税が減ったとしても、それ以上に贈与税を支払うことになっては相続対策とは言えません。贈与を行う場合は、財産状況をよく確認したうえで、贈与税と相続税の合計額が増えてしまわないように留意しましょう。

財産が多く、早く財産を移転したい方向け
  • 上記例は2015年(平成27年)以降の相続税・贈与税に関する制度が継続して適用される場合のものです。
  • 暦年贈与により相続開始前3年以内に相続人が受贈した財産は、相続税の対象となります。
  • 基礎控除額を超えた金額を贈与する場合には、税務署への申告が必要です。

ご注意

記載の内容は税制度の一般的な説明です。詳細は、税理士等の専門家へご確認ください。

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