エヌビディア決算あれこれ

2024年5月29日

マーケットアナリスト大山です。今週もよろしくお願い致します。

先週の米国株マーケットは ほぼ横ばいで推移しました。S&P500株価指数を11セクター別でパフォーマンスを見ていくと、半導体が主軸の「情報技術セクター」と「コミュニケーションサービス(IT)セクター」だけがプラスでしたが、残りの9セクターがマイナスで推移しました。Nasdaq指数が週間で約1.4%上昇、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)が週間で約4.8%上昇していたことを考えると、半導体株・エヌビディア主導の相場であり、極端なことを言えば 「エヌビディアか? エヌビディアでないか?」 の様相だったと言っても過言ではありません。

先週は米国株こそ横ばいでしたが、欧州株やアジア株は調整した週になりました。前週まで「利下げコイコイ」の楽観的な雰囲気に包まれていましたが、いったん様子見の1週間だったと思います。欧州圏においては景気停滞でインフレ率が順調に低下し、6月利下げ開始が確実視されていますが、現状は2回目以降の利下げの不確実性は高いとみられていて、利下げを深堀できるかどうかは微妙な状況です。仮に米国金利が高止まりすれば欧米金利差の拡大からユーロ安→輸入物価上昇でインフレ再燃リスクがあります(ECBの利下げにはユーロ圏の経済状況のみならず、米国金融政策も考慮しなければならないことを意味します)。このようにインフレ再燃リスクを時々見に行くので相場が上下する・・・という状況です。

地球上でもっとも重要な会社は 重力に逆らった!?

さて先週の米国株式市場は、日本時間5月23日未明に開示されたエヌビディア<NVDA>決算一色でした。「地球上でもっとも重要な会社」と言われたエヌビディアですが、『またしても地球の重力に逆らった』決算を発表しています。重力に逆らうくらい良かった!という意味ですね。 事前に、ハイパースケーラーと呼ばれる巨大クラウドデータセンター事業者から巨額の設備投資額がアナウンスされていたこと、主要サプライヤーである韓国 SKハイニクスから聞こえてきた生産状況や、台湾 TSMCの月次売上の動向から、AI向け半導体の需要が供給を大きく上回っているらしいという“状況証拠”が揃っていました。そのため コケる可能性は低そうだとみていましたが、市場の期待に応えた素晴らしい決算が出てきました。また決算資料には、次世代チップの生産がフル稼働で行われていることが記載され、量産スケジュールが前倒しになり、“上げ潮”な受け止め方をした投資家が多そうです。

エヌビディア決算

大事なのは次世代機の量産スケジュール → 前倒しへ

特に電話会議に於いて、次世代半導体の収益化スケジュールが前倒しになったことで(8-10月期に次世代機が増産に入る)、スケジュールから逆算すると、日本企業が半導体産業で大きなシェアを持つ半導体後工程や電子材料メーカーは、年後半から業績が立ち上がってくるのではないかと推察します。

エヌビディアの次期主力半導体“Blackwell(ブラックウェル)”は価格が6-7万ドル台ではないかと言われています。Bloombergによれば来年度2025年の売上(市場コンセンサス)は1,550億ドルですが、ウォール街では早くも来期、次世代機出荷数が250万個を見込む予想も出始めています。出荷数量x単価を勘定すれば、売上げレンジは250万個x6-7万ドル=売上1,500-1,750億ドルという数値が出てきます。その蓋然性は未だ高くないと考えていますが、製造するTSMCや供給されるメモリメーカーのSKハイニクスから状況証拠が揃い次第、一気に織り込みに行くのではないかと思っています。

今後注視したい3つのポイント、投資するなら・・・

今後注視したいポイントは、次世代機Blackwellのスケジュールが明らかになったところで、気になるのはBlackwell生産がうまく軌道に乗るかどうか、ボトルネックが有るのか・・・という点です。

つまり、半導体需要に見合うTSMCの生産キャパシティの確保ができるのかという点と、次世代機に必要とされるメモリの手当てが十分なのか?という点、そして次世代半導体が大量に必要とされるデータセンターの開設が相次ぐことで、大量の電力が必要とされる中で 電力供給は十分なのか? という3点を注視すべきだと考えています。 半導体産業は裾野が広いことに加え、分業体制が敷かれている業界です。ゆえに活躍できる企業も多岐にわたると思いますので、投資は個別企業一本釣りよりもETFや投資信託などの様に分散投資をすることで、よりメリットを享受できるのではないかと考えています。

大山季之

大山 季之(おおやま のりゆき)

松井証券マーケットアナリスト
経験から得た幅広いネットワークと確かな知識で複雑な世界情勢を紐解き分かりやすく解説

<略歴>
1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、2010年バークレイズ証券、2012年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案・自社株買い・金融商品組成に関わった。
現在は前職の経験をもとに、国内外マクロ・ミクロの分析を行う。

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