イベントとイベントの谷間で・・・

2024年6月26日

マーケットアナリスト大山です。今週もよろしくお願い致します。
先週の株式市場S&P500株価指数は0.61%上昇。月初来3.55%上昇、年初来14.57%プラスで推移しています。月間では引き続き情報技術セクターが断トツのパフォーマンス。セクター内ではAI三銃士※の一角であるブロードコム<AVGO>が先週に続いて物色され、株価が出遅れていたITソフトウェアのオラクル<ORCL>・アドビ<ADBE>が揃って約20%上昇しています。
※(エヌビディア、マイクロン テクノロジー、ブロードコム)

前週末は欧州議会選挙の結果を受けてフランス政治に対する不透明感が台頭し、主要欧州株式市場が⼤きく下落していましたが、週明け以降はエヌビディアの時価総額が世界首位に立つなど、個別株には動きが見られました(欧州右極化リスクは全く収まっていません)。
米国経済の“減速感”を占うともいわれたイベントは18日発表の5⽉の⼩売売上⾼でした。市場予想を下回ったことでFRBが9⽉にも利下げに動くとの⾒⽅が広がり、週前半は堅調に推移しました。20⽇は新規失業保険申請件数や5⽉の新築住宅着⼯件数などの公表を受けて、主要株価指数は最⾼値を更新しました。⽶⾦利が上昇したことでハイテク株を中⼼に利益確定⽬的の売りが優勢となったものの、前週末⽐ではプラスで引けています。

イベント - イベントの幕間つなぎの中で

先週のコラムで「米国単体で考えればリスクは小さそう」と書きました。筆者の動画“米国マーケットダイジェスト”でもお話しているのですが、発表された経済指標が事前の市場予想を下回る状態が散見され、“ネガティブサプライズ”が発生し、サプライズインデックスが低下傾向にあります。

サプライズインデックス:下振れが目立ち続ける米経済指標

5月発表の経済統計以降は思ったより悪い経済指標のアナウンスが続き、サプライズインデックスはマイナス圏へ突っ込んでいます。この点、マーケットはBad news is Good newsと理解しており、利下げのタイミングが早く訪れるのではないか?ということで金利低下・株高の状態になりました。今後の注目点は、インフレ鈍化・景気鈍化が複数のデータで月を跨いで継続的に確認できるかどうか?であります。

今週は⽶国で公表される5⽉のPCEデフレーター(6月28日)に注⽬です。⼀部のFRB⾼官(性急な金融緩和に否定的な意見を持つ)ダラス連銀ローガン総裁が18日、最近のデータについて「歓迎すべきニュース」とした上で、最近の消費者物価指数CPIが⽰すインフレ鈍化傾向が今後数か⽉続けば、9⽉にも利下げに踏み切る可能性を⽰唆しています。市場では11⽉の利下げ開始を織り込んでいるだけに、5⽉のPCEデフレーターもインフレ鈍化を⽰すことになれば、9⽉の利下げを織り込む動きが強まることが予想されます。
現時点では、生産者物価指数PPIに於いて、PCE構成項目が鈍化していたのでインフレ鈍化基調が維持される見通しです。(予想外にインフレの「粘着性」を示すことになれば、金利反転・ドル高・株安のイベントになります)
同時に、個人所得・個人支出も併せて発表になりますが、雇用統計で所得低下、支出(消費)も小売売上高同様に低下が予想されています。先週アナウンスされた5月小売売上高は、過去分の下方修正を含め、市場予想を下回る統計発表でしたので、景気減速の兆候が維持されるものと見られています。

今週のイベント 個別株編

マイクロンテクノロジー24年第3四半期決算が現地26日にアナウンスされます。エヌビディア関連の筆頭、供給不足とまで言われているHBMメモリの供給メーカーの1社です(韓国SKハイニクスが業界トップです)。世界的に、メモリ各社は、高価格で需要旺盛な広帯域能メモリHBMに生産リソースを割いている為、それ以外のDRAMやNANDメモリの供給不足による価格上昇が起きており、今後さらに価格上昇が想定されます。マイクロンCEOサンジャイ・メロトラ氏は、自社のHBMメモリが2024年分は完売、25年供給分の大半は既に割り当て済みだと発表していますので、生成AIがキッカケで収益体質が一転していることがよくわかると思います。
(メモリ市場は、韓国サムスン・韓国SKハイニックス、マイクロンの3大企業の寡占状態にあります。よってHBMやDRAM需要増大による利益も独占する事が出来ます)

マイクロンの決算発表のほか、世界経済の体温計フェデックス<FDX>の24年第4四半期決算が現地25日に、ナイキ<NKE>が現地26日にアナウンスされます。
フェデックスは貨物・宅配市場の回復とコストカットがカギになります。売上は6四半期連続で下がっていましたが、Bloomberg集計の市場コンセンサス曰く、第4四半期は少し増えて前年比+0.78%という数字が入っています。市場は1年半以上ぶりの前年比売上プラスに反応するでしょうか。

ほか

欧州の選挙も気になります。
欧州ではフランスで下院選挙が実施されます。第一回投票が6月30日、決選投票が7月7日。
そしてフランスの陰に隠れていますが、与党ぼろ負けが予想されているのは英国で7月4日。米国大統領選テレビ討論会も27日に開催されます。政治を巡る日程が混みあってきました。
ドイツ10年債/フランス10年債スプレッドの状況です。過去5年で国債の利回り差を見ていますが、フランス国債の利回りが急激に上昇してきました。いったい何を織り込みに行っているのでしょうか…。

独/仏10年債 利回りスプレッド
大山季之

大山 季之(おおやま のりゆき)

松井証券マーケットアナリスト
経験から得た幅広いネットワークと確かな知識で複雑な世界情勢を紐解き分かりやすく解説

<略歴>
1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、2010年バークレイズ証券、2012年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案・自社株買い・金融商品組成に関わった。
現在は前職の経験をもとに、国内外マクロ・ミクロの分析を行う。

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