相場の戻りは本命回帰で
2024年8月14日
マーケットアナリスト大山です。今週もよろしくお願い致します。
先週は大きく荒れた1週間でした。8月12日終値時点でS&P500株価指数は年初来12.05%プラスで推移していますが、月初来では3.22%マイナス、7月16日の最高値から約5.7%調整をしています。
ほか主要株価指数の月初来パフォーマンスを確認すると、NYダウは約3.6%マイナス、Nasdaq株価指数は約4.7%マイナス、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は約9.4%マイナス、日経平均株価は月初来10.42%マイナスです。
今月はSOX指数で最大約18%、日経平均で最大約20%の調整まであり、滅多にない相場の大幅調整暴落時をチャンスと考えるならば?を考えていましたが、今日は相場のイロハである長期・分散・積立という言葉を使わずに生温いことは排除し、リバウンドをとるなら何がいいのか?を考えてみたいと思っています。結論はタイトル通り本命回帰です。
米国景気は決して悪くない
少し俯瞰して今回の急落の発⽣源である⽶国市場を⾒ると、先週月曜日、8月5日に⽇本株が暴落して⼀夜明けて、⽶国市場の動きが⽇本ほどの極端な下落にならなかったのは、つまり⽶国でブラックマンデーは再び起こらなかったということですが、⽶国がグローバル資本市場のアンカーの役割を果たしたと考えていいと思いました。それは、過去30年間の上昇トレンドに加えて、過去数10年~100年の株式の上昇トレンドを逸脱したわけではないと言う事だと考えています。
今回、なぜ酷い暴落が起きたのか?に関しては先週の本コラムでも書きましたが、きっかけは日米の金融政策の方向変更であり、その根幹は米国の景気・経済のスローダウン懸念です。スローダウンというよりもハードランディングの懸念が生じたからです。しかしながら、足元の米国景気はたとえばアトランタ連銀のGDP NOWによれば7-9月GDP予測は4-6月の+2.8%成長に続き、前期比年率+2.9%を示しています(8月8日時点)。また、全米のレストランの予約データは前年比プラスで推移し、米運輸保安局搭乗客データはコロナ前の水準を維持し、NYブロードウェイの興行データは好調を維持しています。この様に、米国景気は依然良好な状態が維持できています。
相場にレバレッジをかけていた円キャリートレードも解消に向かいつつありますので、そろそろ相場変動を示すボラティリティ(VIX)も落ち着くものと見られています。
相場の戻りは本命回帰か?
冒頭、主要株価指数の値動きを見ていただきましたが、SOXが一番ヤラれ、指数組入れ銘柄時価総額を考えると、Nasdaq、S&P500株価指数にも半導体関連銘柄が大きく影響を与えてしまったことがお分かりいただけると思います。
この半導体指数SOX株価指数は、主要な半導体関連30銘柄で構成されています。
指数の構成銘柄の顔ぶれには、台湾TSMC【TSM】、エヌビディア【NVDA】、オランダASMLホールディング【ASML】など、世界的な半導体関連企業が並んでいますが、このような半導体企業がそもそもなぜ買われて、いま下落したのかを考えて拾い上げていくのが一つの戦略だと考えています。
SOX指数組入れ銘柄はSOX指数連動のETFが上場していますので、運用会社が定期的に出しているレポートで確認することができますが、指数構成銘柄上位は (カッコ内は8/12終値 7月末比%)
エヌビディア 【NVDA】、(マイナス6.8%)
ブロードコム 【AVGO】、(マイナス7.5%)
アドバンストマイクロデバイシズ【AMD】(マイナス5.3%)
参照元:グローバルX 半導体 ETF 銘柄詳細
指数構成銘柄は、次いでTSMCが組入れられていますが、先週末に7月月次売上がアナウンスされると、7月末の株価水準を抜いてしまいました。
大幅調整をしたのでSOX指数連動のETFやファンドに投資をすることは、リバウンド狙いとか銘柄分散という意味ではGoodだと思うのですが、SOX indexの中には、インテルのような悪材料まみれの半導体メーカーも含まれますので、index構成銘柄を”株価大幅調整企業”としてできれば複数の半導体企業を時間分散で投資戦略を持つ・・・・戦略は有効ではないでしょうか。
AI向け・先端半導体製造メーカーは好業績を維持できるのかという点に関しては、半導体企業の顧客である大手ハイテク企業AMZN、GOOG、MSFT、META4社の設備投資を考えると理解できます。
下記概況にも書きましたが、4社合計で1-3月期に約500億ドルの設備投資を行っていたのですが、決算資料等を見ると4-6月期は約2割増えて約600億ドルの投資を行っているとのこと。下期はさらに増えそうなガイダンスが出ています。この設備投資額の伸びだけ見ても巨額のAI向け半導体需要が当面続くという事を理解できるのではないでしょうか。
先週のコラムにも書きましたが、半導体企業の顧客である大手ハイテク企業は過大な設備投資に業績が圧迫されて 本当に投資回収ができるのか?という疑念が生じているのも事実です。しかし半導体企業から見れば、顧客の不幸など関係がないわけです。当面続く設備投資の間は業績拡大が期待できます。 この構図を理解すれば、本命回帰=半導体物色は注目できると考えています。
下落局面の投資戦略について、動画でも解説しています!
暴落局面、2つの根拠でリバウンドを狙え!半導体関連株3選<ココから始める米国株>
大山 季之(おおやま のりゆき)
松井証券マーケットアナリスト
経験から得た幅広いネットワークと確かな知識で複雑な世界情勢を紐解き分かりやすく解説
<略歴>
1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、2010年バークレイズ証券、2012年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案・自社株買い・金融商品組成に関わった。
現在は前職の経験をもとに、国内外マクロ・ミクロの分析を行う。