さぁ来い、FOMC・オラクル決算!

2025年12月10日

マーケットアナリスト大山です。
今週のコラムはFOMCとオラクル決算についてです。よろしくお願いします。

FOMCの注目点(日本時間12/11早朝金融政策発表)

市場参加者が米国金融政策の有無、「利下げor利下げ一時停止」に賭けるようなことはしませんが、FOMCの結果を受けてのリアクション(相場の反応)は、案外大きなものになりそうです。
市場では既に3会合連続となる0.25%の利下げは織り込まれ、市場の関心は2026年以降の利下げのパス(道程)に向けられています。発表される政策金利予測(通称:ドットチャート)では注目すべき3つのポイントが有ります。

  • 2026年の利下げ回数
  • 利下げの最終着地点(前回9月は3.125%)
  • 中立金利と見なされる長期予想(同3.0%)
新たに示されるFOMC参加メンバーによる政策金利予測で、2026年以降の利下げ継続の方針が再確認されれば、リスクアセットに対する買い安心感が広がるのではないかと予想します。
実際、先週の米国市場の値動きを確認すると、S&P500株価指数にパフォーマンスで出遅れていた米中小型株で構成されているラッセル2000、そしてS&P500均等ウェイト指数(イコールウエイト指数)などが値を上げてきました。2指数とも過去最高値に迫る水準まで回復しています。
米国株はAIバブルを嫌気し、「AI資金調達問題・投資回収問題」が発生、AIブームへの期待が剥がされ、クレジット懸念から株価は下落していました。しかし、金利低下=ビジネスコスト低下期待が高まったことで、徐々に株高に繋がり、AIへの楽観論が根強いことが証明された様に感じます。
まるで、利下げという朗報を待っている状態の様に見えます。

今後の相場の上下動にはそれぞれシナリオが有ります。

  • 株価が上昇し、バリュエーションが高くなり、株価評価はさらに悪化する可能性もある・・・かもしれない。
    伝統的な株価収益率(PER)などの指標では、現在の株価は非常に割高に見えます。しかしそれでも、PERは1990年代のドットコムバブル時に記録したピーク値を下回っています。
    他の観点からも株価評価はそれほど過大ではないという意見が大勢で、バリュエーション(PER)が上昇してもまだ許容できる・・・かもしれないというシナリオが有ります。
  • エヌビディア、マイクロソフト、メタ、アルファベットなどのハイテク大手企業はS&P500構成銘柄の中で巨大な比重を占めます(時価総額加重平均採用のため)。AIの将来性への疑念が生じれば、ハイテク株だけではなく、株価指数全体が下落する可能性が高いです。
    とはいえ、巨大ハイテク企業の異常な高騰が他の銘柄の不振を意味するわけではありません。
    前述の通り、ラッセル2000やイコールウエイト指数が上昇しているのですが、ハイテク株中心の売り圧力が壊滅的ではないという期待を投資家が抱いている可能性が有ります。
    「巨大ハイテク企業がニュースの見出しや投資資金の流れ、分析を独占しているが、他の企業も着実に成果を上げている」・・・こう考える投資家が多そうです。
  • そして期待インフレ率が(案外)安定している・・・ように見えます。
    だからこそ利下げし易い?という意見があります。
何れにしても、日本時間11日早朝を待ちたいと思いますが、個人的には12月FOMCで利下げが無くてもドットチャート政策金利予測パスで「今回は利下げを一時停止したけれど、どう見ても2026年に複数回の利下げが有りそうだ」と市場参加者が判断できれば問題ないと考えています。

前回10月のFOMCに於いて、パウエル議長は記者会見で『(政府閉鎖の影響もあって、本来であれば入手したい経済データが手に入らず)本当に先が見えないから霧の中の運転の様に減速しよう(利下げを一時停止しよう)という可能性は十分にある』と述べているのです。
ココで大事なことは、仮に12月に利下げをしたら、労働市場の減速に対して「予防的に利下げをした」という事になりますね。投資家はそう考えるハズです。先手を打つ中央銀行に対して市場はクリスマスプレゼントが来た!と大喜びしそうです。

個人的にはパウエル議長の景気認識を楽しみにしています。前回のFOMC記者会見では「K」字型景気を説明し、高所得者層の消費が堅調で低所得者層の消費が疲弊している状況を説明しています。強い米国消費の実態は「K」、その処方箋のヒントが出てくれば・・・と願っています。
ほかFOMCで話題に上がりそうなのは、意見に反対を唱えた委員の数くらいでしょうか。
何れにしても11日早朝が楽しみです。

オラクル<ORCL>の決算発表も控えています

日本時間12月11日早朝はオラクルの決算発表も控えています。
AIバブルに備えたハイテク株の値動きは、OpenAI・エヌビディア・オラクルの資金循環と投資回収問題がかなり誇張されている・・・極端すぎるのではないのか?という意見もありますが、ともあれ、AIバブルに対するリスクが露呈して市場参加者がリスクを「認識した」ことで株価が大きく動いたような気がします。

オラクルの決算ですが、足元の決算ではキャッシュフローの脆弱性が指摘されていようと、将来見通しは堅そうに感じます。OpenAIとの契約は不確実性があるものの、2027年から契約開始と言われていますので、2028年5月期から数字が載ってくることになります。

株価は調整していますが、2026年度売上コンセンサスのブレは大きくないと考えています。2028年5月期からリスクが増加し、OpenAIの一部の受注が売上に結びつかない可能性がありますが、オラクルはハイパースケールクラウドプロバイダーの地位を維持する見込みで、大きな成長機会をもたらすと考えられています。

しかしオラクルの株価は、データセンター建設を進める中で、AIバブルへの懸念が高まり、OpenAIが「野心的に」資金調達する状況が主な要因で、下落の螺旋をたどっています。2026年5月期Q1決算時点でのオラクルの受注残は4,550億ドルで前年比359%増加、そのうち3,000億ドル以上がOpenAIとの契約に結びついています。
(オラクルとOpenAIは複数のデータセンターの開設に取り組んでいて、大規模言語モデルのトレーニングや推論に利用する予定です)

オラクルがOpenAIの収益を少なくとも2027会計年度まで認識することはまずなく、スターゲートデータセンターが稼働するまでは時間がかかる可能性があります。早くも市場は2028年度のリスクを織り込みに行っていますが、3,000億ドルを超える注文に対する疑問、この数字の認識は今後12〜24か月で下方修正され、オラクルの収益見通しが下がる可能性があります。しかし、2026会計年度の短期的な成長目標に於いては目立った減少は見られず、最大の見積もりの引き下げはもう少し先のハズです。

このあたりは投資家の考える時間軸(投資期間)と実業(オラクル-OpenAI、スターゲート)の時間軸に大きな隔たりが有ると言えますし、時間のズレから相場が調整しても仕方がないくらいに考えています。
AIバブルかもしれませんが、萎まずに風船は膨らみ続け、時々シューっと萎んで再び膨らむことを繰り返すような気がします。

  • 次回(12/17)の米国株コラムが年内最終号になります。
大山季之

大山 季之(おおやま のりゆき)

松井証券マーケットアナリスト
経験から得た幅広いネットワークと確かな知識で複雑な世界情勢を紐解き分かりやすく解説

<略歴>
1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、2010年バークレイズ証券、2012年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案・自社株買い・金融商品組成に関わった。
現在は前職の経験をもとに、国内外マクロ・ミクロの分析を行う。

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