円安では米国株どうなる?売るべきか、買うべきか投資のポイントは?

2024/1/31

日本株とは異なり、米国株は米ドルで投資する必要があります。日本円を米ドルに両替する際のレートは日々変動しているため、どのタイミングで米国株に投資すべきか難しく感じられるかもしれません。とくに2022年は急激な円安が進んだこともあり、米国株への投資を躊躇している人も多いのではないでしょうか。

本記事では、米国株投資で覚えておきたい円安に関する基礎知識や、円安時に投資を始めるときのポイントなどを詳しく解説します。

円安とは?

「円安」とは外国の通貨と比べて、日本円の価値が低下することを指します。例えば1ドル=140円のとき、10ドルの商品を買うためには1,400円が必要です。しかし、1ドル=150円になると、同じ10ドルの商品を買うためには1,500円を用意しなければなりません。同じ1ドルの商品を買う場合でも、今までより多くの日本円が必要となり、このようなケースでは、日本円の価値が低下しているといえます。円安とは反対に、日本円の価値が上昇することを「円高」と呼びます。

世界各国の通貨は「外国為替市場」と呼ばれる、24時間動き続けている市場の中で、個人や企業、金融機関などによって取引されています。外国為替市場において異なる通貨が交換(売買)される際の交換比率は「為替相場(為替レート)」と呼ばれ、この為替相場は市場内の需給バランスで変動します。例えば円を売ってドルを買いたい人が多ければ、ドルの価値が上がり「円安ドル高」、円を買ってドルを売りたい人が多ければ、円の価値が上がり「円高ドル安」になるわけです。つまり、円安や円高はこの為替相場が日々変動することによって生じています。

なお、為替の需給バランスは、物価や金利、国際収支など、さまざまな要因によって変動すると考えられています。

円安になったら米国株はどうなる?

円安が進んでおりときは米国株を買うのと売るのではどちらがいいのか、それぞれのケースを見ていきましょう。円安のときに米国株を売れば利益を狙えるかもしれません。

円安時に米国株を売る場合

円安が進んだタイミングで米国株を売却すると、株価が変わらない場合でも為替差益を得られる可能性があります。為替差益とは、為替レートの変動によって生じた利益のことです。円安が進んだ場合、保有している米国株の株価が一定でも、日本円換算したときの金額が上がります。

例えば1株100ドルの米国株を1ドル=140円のときに100株購入したとしましょう。このとき必要な投資資金は、140万円です。その後、1ドル=150円まで円安が進んだときに売れば、株価が変わらなくても売却額は150万円で10万円分の利益を得られるわけです。

円安時に米国株を買う場合

基本的に米国株を売る場合の反対になります。円安が進んだタイミングで米国株を購入すると、株価が一定でさらに円安傾向が続いた場合には為替差益を得られる可能性がありますが、為替相場が円高に転じた場合には為替差損が発生する可能性があります。為替差損とは、為替レートの変動によって生じた損失のことです。米国株を購入したあと円安から円高に転じた場合、株価が一定だったとしても日本円換算したときの金額は下がってしまいます。

例えば1株100ドルの米国株を1ドル=150円のときに100株購入したとしましょう。このとき必要な投資資金は、150万円です。その後、相場が円高に転じて1ドル=140円になったときに株を売却した場合、株価が変わらなくても売却額は140万円となり、10万円の損失が発生します。

円安が米国株へ与えるその他の影響

米国株の配当金は基本的に米ドルで受け取ります。円安のときに配当金を受け取ると、円換算したときの配当額は円高のときに比べると増えることになります。また、円高のときに米ドルで受け取った配当金も円安のときに円に交換することで利益を増やすことができるでしょう。

例えば四半期ごとに1株あたり1ドルの配当(年間配当4ドル)が支払われる銘柄を、100株保有しているとしましょう。1年間で受け取る配当金は、100株×1ドル×4回=400ドルです。これを円に換算すると、1ドル=140円のときは5万6千円ですし、円安が進んで1ドル=150円になったときは6万円となります。実際に配当金を円に交換する際には、円安が進むと思えば、ドルのままで持っておくということも考えられます。

なお、米国株で配当金を受け取る際には、源泉徴収額が増える点にも注意が必要です。米国株の配当金を受け取る場合、まずドルベースの配当金額に対して10%が米国で源泉徴収され、米国で源泉徴収された配当金を円換算した金額に対して日本国内で20.315%が源泉徴収される仕組みになっていますので、注意が必要です。

また、米国株へ投資すると、税金面でのメリットを享受できる場合があります。米国株への投資で発生した取引損益について、他の商品と損益通算できるためです。損益通算とは、同一年の利益と損失を相殺することを指し、日本株や投資信託等の他の商品の損益と合算することで、所得税や住民税の課税額が減額される場合はあります。

ただし、自動的に損益通算が適用されるのは「源泉徴収あり」の特定口座のみとなっており、「源泉徴収なし」の特定口座や、一般口座の場合は確定申告が必要となります。またNISA口座の場合、損益通算はできません。

円安時の米国株投資のポイント

円安が進み、為替相場が円高に反転するタイミングが気になる際は、大きなリスクをとらず、積立投資や分散投資を行うとよいでしょう。

積立投資を行う

急激な円安を目の当たりにすると、米国株への投資を始めるタイミングに迷うことがあると思います。高値掴みをしたくない気持ちは誰でも同じですが、将来の相場を正確に予測するのはプロの投資家でも難しいですから、投資資金を纏めて一括投資するのではなく、積立投資を行うことがおすすめです。

積立投資は、コツコツと継続的に投資をすることです。一定の金額で積立投資をしている場合、円安が進むと株価に変動がなくとも一度に購入できる数量は減ってしまいますが、定額で長期間購入し続けることで、相場変動リスクを抑えることができると言われています。定額購入法は一般的に「ドルコスト平均法」とも呼ばれており、値上がりしたときには少なく、値下がりしたときには多く買うことになるため、購入単価が平準化されていきます。積立投資は継続することでリスク分散の効果を得られるものですから、まずは始めることが重要です。

そして、積立投資を始めたあとも、あらかじめ設定した目標金額や時期に達するまでは、途中でやめないことが重要です。

【関連ページ】ドルコスト平均法とは?メリットやデメリット、投資のポイント

分散投資を行う

円高による価格変動リスクを軽減するためには、分散投資が有効です。積立投資も時間分散の手法ですが、ここでは異なる値動きをする資産や銘柄を組み合わせて投資を行う手法のことを指します。

米国株の中でも、投資先が偏るとその分相場変動の影響を受けやすくなるため、複数の業種や資産に投資することで、一部の銘柄が値下がりしたとしても、ほかの銘柄の値上がり分でカバーするといった形でリスクを抑えるという考え方ができます。米国株のみへの投資が不安であれば、日本株や投資信託を利用して資産を分散し、安定的な運用を目指すということも可能です。

【関連リンク】投資と上手に付き合うために長期・積立・分散を活用しよう!

円安時は「長期・積立・分散」を意識して米国株投資に取り組もう

円安のタイミングで米国株を買うと、円高になったときに為替差損が生じる可能性があるため、取引を躊躇する人もいるでしょう。しかし、今後の相場が円安・円高どちらに触れるかは誰にも予想できません。

とくに初心者にとっては短期的な相場を予測するのは難しいですから、長期的な視点で投資に取り組むことが大切です。リスクを抑えるためにも「長期・積立・分散」を意識しながら、米国株に投資してみましょう。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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