ダウ理論とは?6原則やメリット、使い方、注意点をわかりやすく解説

2025/10/2(更新)

ダウ理論とは、100年以上前に提唱され、現在でも株式投資やFXなど幅広い分野で活用されている相場分析の基本理論です。相場の流れを捉えるための重要な考え方であり、多くのテクニカル分析の基礎にもなっています。

しかし、投資を始めたばかりの方にとっては聞き馴染みがなく、トレードでの活用方法をイメージしにくいのではないでしょうか。

そこで、本記事では、あらゆるテクニカル分析の基礎となるダウ理論について、6つの基本原則からメリット・デメリット、実践するうえでの注意点までわかりやすく解説します。

そもそもFXとは?という方はこちらをご覧ください。

ダウ理論とは?

上昇するチャートを見つめる男性たち

ダウ理論とは、アメリカの証券アナリスト・ジャーナリストであるチャールズ・ダウが、19世紀の終わりに提唱した相場理論のことです。相場に発生するトレンド(特定の方向に値動きが進むこと)の性質を6つの法則で説明しています。

元々は株式市場の株価と相関性の高い景気循環を分析し、予測するために考案されたものですが、現在ではFXでも通用する理論として用いられています。

多くのテクニカル分析(過去の値動きをもとに将来の相場を予測する手法のこと)の元となっているのがダウ理論です。例えば「上昇トレンド」や「下降トレンド」といった言葉もダウ理論を基にした用語です。

ダウ理論は多くのトレーダーが参考にしている考え方で、ダウ理論通りに相場が動くことも珍しくありません。トレードをする際の基礎知識として知っておくことが大切といえるでしょう。

ただし、ダウ理論は方向性のある値動き(上昇トレンド、下降トレンドなど)を説明したものであり、すべての相場に使える理論ではありません。また、ダウ理論はあくまでも相場分析をするための「考え方」の一つです。また、移動平均線やMACDのようなテクニカル分析のインジケーターとは異なり、一定のライン等をチャート上に表示させるものではありません。

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エリオット波動との違い

ダウ理論と並ぶ有名な相場理論に「エリオット波動」があります。トレンドを分析する手法としてどちらも有用ですが、注目するポイントには違いがあります。

ダウ理論は、チャート上の高値と安値の位置関係に注目するのが特徴です。「前の高値・安値を超えているか」を見ることで、現在のトレンドが上昇中なのか、下落中なのかをシンプルに判断します。

一方、エリオット波動はトレンドを一つのサイクル(周期)として捉えます。「上昇5波・下降3波」という合計8つの波で1つのサイクルが形成されると考え、現在の相場がサイクルのどの段階にあるのかを把握しようとするのが特徴です。

このように、ダウ理論がトレンドの方向性を定義する基本的な考え方であるのに対し、エリオット波動はそのダウ理論を基盤としつつ、さらに未来の値動きの波形パターンまで予測しようと試みる、より発展的で複雑な理論といえるでしょう。

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ダウ理論の6つの法則

ダウ理論は、6つの基本法則をベースに成り立っている相場分析手法です。ここでは、それぞれの内容を解説します。

1.平均価格はすべての事象を織り込む
2.トレンドは3種類ある
3.トレンドは3段階ある
4.平均は相互に確認される
5.トレンドは出来高でも確認できる
6.トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

1.平均価格はすべての事象を織り込む

市場価格を形成するすべての要因は、平均価格に反映されているという法則です。平均価格は、FXに置き換えた場合、為替レートのことを指します。

この法則が成り立つのは、相場の値動きは経済指標や金融政策のようなファンダメンタルズ要因や、予測不可能な戦争・テロ・天災などの影響を受けて形成される「需給バランス」によって日々変動しているからです。

ダウ理論では、将来の値動きを予測する場合、現在の値動きを示したチャートを分析して、検討することが望ましいとされています。

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2.トレンドは3種類ある

トレンドは、継続する期間に応じて、長期、中期、短期の3種類に分類されるという法則です。

例えば、1年から数年以上続く動きが長期トレンドです。

数週間から、数ヶ月以上続く動きが中期トレンドです。長期トレンドとは逆行する方向に動き、調整局面(行き過ぎた価格を落ち着かせてバランスを取り戻すような動き)を示すのが特徴となっています。

数時間から、数週間以上続く動きが短期トレンドです。中期トレンドよりさらに短い調整局面を示します。

3.トレンドは3段階ある

トレンドには、先行期、追随期、利喰い期の3段階があるとする法則です。

先行期では、一部の投資家が先行して底値(一定期間中の一番低い値段のこと)で買ったり、天井(一定期間中の一番高い値段のこと)から売ったりすることで、価格に緩やかな動きが出始めます。

追随期は、相場の動きを見て、売買に参加する投資家が増えてくる時期です。この段階では、急激な価格変動が起こりやすくなります。

利喰い期は、先行してエントリーしていた投資家が利益確定を行う時期です。この段階になると、相場が加熱し、多くの報道などを通じて初心者の参入も増えてきます。利喰い期になると、トレンドは終わりに向かうと考えられます。

4.平均は相互に確認される

トレンドを判断するためには、相関性のある複数の銘柄を確認する必要があるという法則です。相関関係のある通貨ペアや指標を確認したうえで、トレンドが発生しているのかどうかの判断をするのが重要だといえます。

5.トレンドは出来高でも確認できる

トレンドの信頼度は出来高によっても確認できるという法則です。出来高とは取引量のことを指します。 通常であれば、価格が上昇すると、勢いに乗じて売買したいトレーダーが集まってくるため、出来高も上昇する傾向があります。しかし、価格が上昇しても出来高が上昇しない場合があり、そのようなケースではトレンドが転換している可能性を疑ったほうが良いということです。

ただし、この理論はFXにおいてあまり有効な理論ではありません。というのも、FXは株式のように特定の取引所で売買が行われるわけではなく、国境の区別なく世界中で取引されているため、出来高を正確に把握することが難しいからです。

余談ではありますが、テクニカル分析の中には出来高を要素とする手法がありますが、それらはFXには向かないということが言えるのです。

6.トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

ダウ理論では、高値と安値(一定期間のトレンドの中で最も高い値段と最も安い値段のこと)に注目し、連続する高値・安値が、それより前の高値・安値より上に位置する(切り上げる)状態が「上昇トレンド」、下に位置する(切り下げる)状態が「下降トレンド」と定義されています。

これらのトレンドは「上昇トレンドで高値を更新せずに安値を更新する」「下降トレンドで安値を更新せずに高値を更新する」といったシグナルが出ない限り、基本的に継続していくという法則です。

ダウ理論のメリットとデメリット

ダウ理論は決して万能な理論ではありません。メリット・デメリットの両方を理解した上で、実際の相場分析に活用しましょう。

メリット

ダウ理論の大きなメリットは、体系的で客観性の高い基準でトレンドを判断できる点にあります。

市場心理や個人の感覚に頼った分析とは異なり「高値・安値の更新」という明確なルールを基準にしてトレンドの継続や転換を判断するため、誰が分析しても同じ結論に至りやすいという再現性の高さがあります。特に投資初心者が、相場の大きな流れに乗る「順張り」戦略を実践する際は有効な手法と言えるでしょう。

また、株式市場だけでなく、為替(FX)、商品(コモディティ)、暗号資産など、需要と供給で価格が決まる流動性の高い市場であれば幅広く応用できる汎用性の高さも魅力です。

デメリット

ダウ理論には売買シグナルの発生が遅れがちになるというデメリットがあります。トレンドの転換は、チャート上でそれが明確に確定してから判断されるため、どうしても実際の値動きを後追いする形になります。

例えば、上昇トレンドの終了シグナルが出るのは、高値を更新できずに下落し、直前の安値を割り込んだ時点であり、すでに価格が天井から大きく下がったあとです。このタイミングでエントリー・決済(利食いや損切りなど)をすると価格が逆行し、損失につながる可能性もあり、短期売買には不向きとされています。

また、分析が主観に左右される側面もあります。どの時間軸(日足や週足など)を設定してチャートを見るか、どの高値・安値を重要と見なすかによってトレンドの解釈が分かれることがあるのです。

さらにダウ理論は明確な方向性を持つ「トレンド相場」で機能するため、価格が一定範囲を上下する「レンジ相場」では機能しにくい点も理解しておく必要があります。

ダウ理論を活用する際の注意点

FXのデータが表示されたパソコン

ダウ理論は確たる判断基準に則ったトレードをするために有効な手法ですが、万能ではありません。ここではダウ理論を活用する際の注意点を解説します。

  • ダウ理論だけが絶対的な指標ではない
  • ダウ理論はシグナルの発生が遅い
  • 「ダマシ」を完全に回避することはできない

ダウ理論だけが絶対的な指標ではない

「ダウ理論だけで勝てるのか?」という疑問があるかもしれませんが、ダウ理論はあくまでもトレンドが発生しているのかどうかを見極める方法であり、レンジ相場で使うのには不向きです。FX相場の7割はレンジ相場と言われているため、ダウ理論だけで勝ち続けることは現実的には難しいといえます。さまざまな場面で利益を獲得するためには、レンジ相場に強いオシレータ系のテクニカル指標(相場の過熱感を測る指標)などの活用も検討しましょう。

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ダウ理論はシグナルの発生が遅い

ダウ理論に基づくと、高値・安値の切り上げや切り下げが起こったタイミングで、ようやくトレンドが発生していると判断します。チャートを後追いすることになるため、そのタイミングでエントリーしてもすぐに価格が逆行してしまい、あまり利益を得られないケースもあるのが欠点です。

ダウ理論をメインに据えながら、ファンダメンタルズ分析を補助として活用するのも手でしょう。いち早く値動きを読み、迅速にエントリーできれば、大きな値幅を取ることも可能になるかもしれません。

「ダマシ」を完全に回避することはできない

「ダマシ」とは、チャート分析で予測した通りに価格が動かないことを指します。

ダウ理論においても、ダマシが発生する可能性はあるため注意しましょう。ダウ理論は、多くの投資家が意識している手法のため、それを利用して資金量の多い大口トレーダーが意図的にダマシを仕掛けてくる場合もあります。

ダウ理論は投資の相場分析に欠かせない知識

ダウ理論は、トレンドの発生や転換を定義した、多くのテクニカル分析の基礎となる考え方です。6つの法則から成り立っており、それぞれトレンドを測るのに役立ちます。ダウ理論を理解することで、ほかのテクニカル分析についての理解も深まるでしょう。

もちろん、ダウ理論だけですべての相場に対応できるわけではありません。しかし、ダウ理論をベースとしてファンダメンタルズ分析やインジケーターを組み合わせることで、取引の精度を高められるはずです。これから口座開設をして投資を始める方も、まずはこのダウ理論から学習してみてはいかがでしょうか。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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