FXのボラティリティとは?通貨ペアや時間帯、分析するための指標

2022/12/27

ボラティリティは、FXで相場状況を分析するときに重要な要素の一つです。しかし、FX初心者の方にとっては聞き慣れない言葉であるため、そもそもボラティリティとは何を指すのか、どのように取引に活用すればよいのか、などわかりにくさを感じる部分もあるでしょう。

本記事ではボラティリティの基礎知識や使い方などを解説しています。ボラティリティが理解できれば、トレードを有利に進めることができるようになるかもしれません。

FXにおけるボラティリティの基礎知識

ボラティリティは通貨ペアや時間帯によって異なります。まずは、ボラティリティの基本的な定義や特徴について見ていきましょう。

ボラティリティとは

FXにおけるボラティリティ(Volatility)とは、為替レートの変動率の大きさのことを指し、省略して「ボラ」と呼ばれることもあります。相場の動きが大きいときは「ボラティリティが高い」、相場の動きが小さいときは「ボラティリティが低い」と表すのが一般的です。

FXでは値動きが激しいときほど利益を得られるチャンスは多くなりますが、予測と反対方向に価格が変動した場合には損失を抱える可能性もあるため、必ずしもボラティリティが高い状態がベストとは言い切れません。

FXのボラティリティが高い通貨ペア

ボラティリティの高さには、流動性が大きく関係しているといわれています。流動性とは、取引のしやすさといえるもので、流動性が低い場合には売買が成立しにくく、高い場合には売買が成立しやすくなります。

米ドルや日本円のようなメジャー通貨と比べると、トルコリラや南アフリカランドのようなマイナー通貨は、市場参加者が少ないため、流動性が低くなります。流動性が低い場合には、売買の相手が限られるため、市場実勢価格と比較して相対的に高すぎる・低すぎる価格で約定することがあることから、ボラティリティは高くなりがちです。

FXのボラティリティが高い時間帯や時期

FXでは、「ロンドン時間」と呼ばれる日本時間の17時頃~翌3時頃(サマータイム16時頃~翌2時頃)や、「ニューヨーク時間」と呼ばれる日本時間の22時頃~翌7時頃(サマータイム21時頃~翌6時頃)はボラティリティが高くなる傾向にあります。上述した流動性の低い通貨のボラティリティが高いというケースと違い、流動性のある通貨であっても、時間帯によってボラティリティが高くなるということです。

これらの時間帯では、多くのトレーダーが注文を行うことで需給バランスが買いか売りのどちらか一方に傾き、一定のトレンド(相場の方向性)が発生しやすくなるため、相場の動きは大きくなりやすくなるのです。特に、22時頃~翌3時頃(サマータイム21時頃~翌2時頃)の時間帯は、世界有数の為替市場である、ロンドン市場とニューヨーク市場が同時に開いているため、1日の中で最もボラティリティが高くなると言われています。

反対に、ボラティリティが低くなる傾向にあるのが、日本時間の9時~16時です。この時間帯は、基本的に日本やオセアニア圏のトレーダーしか取引に参加していないことが多く取引量が少なくなり、予想外の価格変動が起きるリスクは低くなります。FX初心者が取引する場合には、初めは日本時間に取引するのがよいでしょう。

また、年間を通して、米雇用統計や失業率など注目度の高い経済指標が発表される日は特にボラティリティが高くなる傾向があります。

FXにおけるボラティリティの有効な使い方

ボラティリティは売買のタイミングやリスク判断の目安として、さまざまなトレーダーに活用されています。

利確や損切りの目安にする

FXで勝つためには利確や損切りの判断が重要です。FXにおいて、利確とは利益が出ている状態で保有している通貨ペアを決済し、利益を確定させることを指します。反対に、損失が出ている状態で自ら決済し、損失を確定させるのが損切りです。ボラティリティは利確ポイントや損切りポイントを見極める目安として役立ちます。

たとえば、過去数日間のボラティリティの平均値を確認し、その平均値が同じくらいであれば、今日も平均値程度の値動きになる可能性が高いと予測できます。値幅が予測できれば、どのくらいのラインで利確や損切りすべきか、決定しやすくなるでしょう。

パソコンでFXの取り引きをする男性

為替変動のリスクを予測できる

ボラティリティを把握することで、為替変動リスクを予測することができるようになります。というのも、ボラティリティが高いということは、為替変動リスクが高いことを意味するからです。

為替変動リスクが予測できれば、それに合わせた運用ができるようになります。たとえば、ボラティリティが高いときは、低リスクの運用を目指し、レバレッジを低くすることで不必要な損失を出さずに済むかもしれません。

ボラティリティを分析するための指標(インジケーター)

ボラティリティを分析するためには、テクニカル指標(インジケーター)を利用するのが有効です。ここでは代表的なテクニカル指標について解説します。

ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドとは、アメリカの投資家ジョン・ボリンジャーによって考案されたテクニカル指標です。移動平均線と標準偏差で構成されており、移動平均を表す線の上下に値動きの幅を示す線を加えて表示します。平均値から見て上のレンジはアッパーバンド(図中B)、下のレンジはロワーバンド(図中A)と呼ばれます。ボリンジャーバンドでは、価格の大半がバンドの中に収まるという統計学を活用しているのが特徴です。ただし、バンドの中に収まるというのも、現在までのデータを用いた場合であるということに注意をしてください。つまり、明日になれば、値動きによってバンドの幅が変わっていくということです。

ボリンジャーバンドでは、バンドの幅が広いとボラティリティは大きく、狭ければボラティリティは小さいと判断することができます。

【関連ページ】FXのボリンジャーバンドとは?見方や活用方法を紹介!

ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)

ATRは、特定の期間におけるボラティリティを測るために使われるテクニカル指標です。1978年にテクニカルアナリストのジョン・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアによって開発されました。「当日の高値-前日の終値」「当日の安値-前日の終値」「当日の高値-当日の安値」のうち最も大きい値をTR(真の値幅)として、その移動平均線を表したものがATRです。

ATRの値が上昇するとボラティリティが高く、下落するとボラティリティが低くなっていると判断できるようになっています。

DMI

DMIは、日本語で「方向性指数」と呼ばれる、トレンドの方向性や強さを示すテクニカル指標です。ジョン・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアによって開発されました。

DMでは、ボラティリティからトレンドを分析します。つまり、終値の比較ではなく、当日の高値安値と前日の高値安値を比べてどちらが大きいかということを基準に、相場の強弱を判断するのです。

DMIは+DIと-DI、ADXという3本のラインを使い相場のトレンドの強弱を分析します。+DI、-DIは上昇・下降トレンドそれぞれの強さを、ADXは、トレンド自体の強さを示しています。グラフを見るとADXは正の数値で表され、その数値が大きければ大きいほど、上昇トレンド、下落トレンドを問わず、トレンドの強いことを示すのです。

上昇するチャートと棒グラフ

ヒストリカル・ボラティリティ

ヒストリカル・ボラティリティ(HV)とは、過去の価格変動率をもとにして計算されるテクニカル指標です。歴史的変動率とも呼ばれます。指定した期間の変動率(現在の足の終値 ÷ 1つ前の足の終値)の標準偏差を計算し、それを年率換算することで算出します。

HVの数値は、売買の力が均衡し、狭い値幅で推移しているときは下落します。一方、均衡が崩れ、値動きが大きくなるような場面では、それにあわせて上昇するのが特徴です。

RVI

RVI(Relative Volatility Index)はRSIを応用したテクニカル指標で、相場のボラティリティが拡大しているか、縮小しているかを判断できるものです。相対的ボラティリティ指数と呼ばれることもあります。1993年にドナルド・ドーシーによって開発されました。

RVIの値が0より上であれば、相場のボラティリティが拡大している、RVIの値が0より下であれば、相場のボラティリティが縮小していると判断できるようになっています。

インプライド・ボラティリティ

インプライド・ボラティリティ(Implied Volatility、IV)は、将来の価格変動率を予測したものです。HVをもとに、今後の相場動向の予想や需給関係を加味して決定されます。重要な経済指標の変化や、政情不安により、リスクが高まることが予測されると、インプライド・ボラティリティは上昇します。反対に、リスクが低いとみなされた場合には下落するのが特徴です。

その他のテクニカル指標はこちら

電卓で計算する男性

FX初心者はボラティリティを積極的にトレードで活用しよう

本記事では、FXにおけるボラティリティの基礎知識や、トレードで有効に活用する方法について解説しました。

FXの相場ではボラティリティが高くなるポイントと低くなるポイントがあります。取引時間帯や通貨ペアによってもボラティリティは異なるため、自身のトレードスタイルに合わせてボラティリティを把握することで、効率的な取引が可能になるでしょう。

ただしボラティリティが高い相場では大きな利益が狙える反面、損失を出すリスクも高くなります。FX初心者の方はテクニカル指標を活用しながらボラティリティを正確に把握し、リスクを抑えた取引を心がけましょう。

チャートが表示されたパソコン

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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