CPI(消費者物価指数)とは?投資への影響や米国CPIが注目される理由

2024年11月21日

「CPI(消費者物価指数)」は投資判断に大きな影響を与える可能性があるため、投資家が注目している経済指標の1つです。しかし、具体的に何を指しているのか、あるいは相場にどのような影響を与えるのか、わかりづらい点もあります。

そこで、本記事ではCPIの意味や投資への影響、そして米国CPIが注目される理由について詳しく開設します。

CPI(消費者物価指数)とは

CPIは物価の変動を反映した指標で、日々の生活や経済政策に大きな影響を与えるものです。まずは用語の定義や計算方法を理解しておきましょう。

CPI(消費者物価指数)の意味

CPIは「Consumer Price Index」の略で「消費者物価指数」のことです。一般消費者が日常的に購入する商品やサービスの価格が、時間の経過とともにどのように変化しているかを示しています。日本では総務省が毎月数値を公表しています。

CPIは、国民の生活水準を示す指標のひとつであり、また、各国のインフレ動向を測る際の重要な経済指標としても用いられます。

【参考】総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果」

CPIの種類

CPIには主に3つの種類があり、物価の動きを異なる観点から分析するために使用されています。

総合指数

総合指数は、消費者が購入するすべての商品やサービスの価格変動を含んだ指数です。エネルギーや食品など価格変動が大きい項目も含まれているため、経済全体の物価動向を幅広く捉えることができます。

コアCPI

コアCPIは、総合指数から価格変動が激しい生鮮食品を除いた指数です。生鮮食品は季節や天候によって価格が大きく変わることが多いため、これを除外して、より安定した物価の基調を把握することができます。日本では「生鮮食品を除く総合指数」として毎月発表されています。

コアコアCPI

コアコアCPIは、コアCPIからさらにエネルギー関連の価格も除外した指数です。エネルギー価格も国際的な要因で大きく変動するため、これを除くことで物価の長期的な動向をより正確に捉えることができます。アメリカなどでは広く使用されており、日本でも徐々に重要視されつつあります。

CPIの算出方法

CPIは、基準年の価格を100とし、比較する年の価格がどの程度変動したかを指数化して算出します。基準年とは、CPIを計算する際の基準となる年です。日本では、5年ごとに基準年が改定されており、直近では2020年が基準年とされています。

CPIの基本的な計算式は次の通りです。

CPI=比較時の価格÷基準時の価格×100

例えば、ある商品の基準年の価格が100円で、比較年の価格が110円の場合、CPIは次のように計算されます。

110円÷100円×100=110

この場合、CPIは110となり、基準年に比べて価格が10%上昇したことを意味します。実際には多くの品目に対して同様の計算を行い、加重平均をして(ウエイトを加味して平均すること)全体の物価指数を算出します。

CPIの数値はどのように利用されているのか

CPIの数値は、経済全体の状況を把握するための重要な指標として、政府や企業、金融機関などで幅広く利用されています。主な活用方法は以下の通りです。

経済政策への活用

CPIは、インフレ目標の設定や金融政策を決定する際の重要なデータとして使用されます。日本銀行は、CPIの動向を注視しながら金利政策や通貨供給量の調整を行い、物価の安定を図ります。また、政府も、経済対策や予算編成の際にCPIを参考にしています。

社会保障制度への応用

CPIは、年金や生活保護などの社会保障給付を見直す際の基準としても使用されます。物価の上昇に伴い、年金や福祉給付額を増やすべきかどうかを判断するためにCPIのデータが重要です。

賃金・料金改定の基準

CPIは、企業が賃金や価格を改定する際の指標としても利用されます。公共料金なども、CPIに基づいて定期的に見直されることがあります。

国際比較

CPIは、各国のインフレ動向を比較するためにも使用されます。世界各国の中央銀行や経済専門家は、CPIを参考にしながら、適切な経済政策を策定し、物価の安定を図っています。

CPIは「経済の体温計」とも呼ばれ、物価の動きを示す基本的な指標として官民問わず幅広く活用されています。

CPIが投資に及ぼす影響とは

CPIの動向は、消費者の購買行動や経済政策に影響を与えるだけでなく、株式市場に直接的な影響を与えることもあります。

CPIが上昇した場合

CPIが上昇していることは、インフレが進行している状態を示しています。インフレが進むと、商品やサービスの価格が全体的に上がり、企業の売上や利益が増えることがあります。しかし、物価が急激に上昇すると、消費者や企業がコスト増に直面し、経済全体の成長が鈍化することもあるでしょう。

また、CPIが上昇すると、物価が高くなるため、消費者の購買力は低下する傾向にあります。特に、賃金上昇が物価上昇に追いつかない場合、消費意欲が冷え込み、企業の売上にも悪影響を与える可能性があります。結果として、経済全体にマイナスの影響が及ぶことがあります。

CPIが低下した場合

CPIが低下すると、デフレの兆候が現れます。デフレは、物価が下がり続ける現象で、消費者が「物価がもっと下がるかもしれない」と期待して購買の先延ばしが多く、経済活動が停滞するリスクがあります。また、企業の収益も減少し、経済全体の成長が抑制される可能性が高まるでしょう。

一方、物価が下がると、消費者にとって商品やサービスが安くなるため、一時的には購買意欲が高まることがあります。しかし、デフレが長引くと消費者が支出を控え、企業の利益が減少し、さらに物価が下がるという悪循環に陥ることもあります。

株式市場への影響

CPIの上昇や低下は、株式市場に直接的な影響を与えるケースが少なくありません。例えば、CPIが前年同月比でFRBの目標値としている2.0%を超えて上昇した場合、インフレが加速しているとみなされ、中央銀行が景気の過熱を防ぐために金利を引き上げる可能性があります。金利が上昇すると、企業にとっては借り入れコストが増加するため、利益の圧迫や投資活動の停滞につながるかもしれません。

結果として、企業の業績見通しが悪化し、投資家は株式を売る傾向が強まるため、株価全体が下落する可能性があります。特に借り入れに依存している企業にとっては、金利上昇が大きな負担となりやすいため、株式市場の下落に拍車がかかることが予想されるでしょう。

とくに市場予想と実際に公表された数値が乖離している場合、この傾向はより強くなります。

米国CPIが世界で注目される理由

米国CPI(消費者物価指数)は、世界経済に大きな影響を与える指標として、各国の投資家から注目を集めています。

米国CPIとは

米国CPIは、アメリカ国内で消費者が購入する商品やサービスの価格変動を測定する経済指標です。米国労働省労働統計局(BLS)が毎月発表し、インフレ率を把握するための基準として広く利用されています。米国CPIには以下の特徴があります。

公表される数値は、すべての商品やサービスを含む「CPI」と、生鮮食品およびエネルギーを除いた「コアCPI」の2種類です。コアCPIは、日本の「コアコアCPI」に相当します。エネルギーや食料品といった価格の変動が激しい項目を除外することで、経済の根本的な物価動向をより正確に把握できる指標です。

米国CPIが世界で注目される理由

米国CPIは、アメリカ経済のインフレ動向を示すだけでなく、世界経済全体にも大きな影響を与えるため、世界中の市場や政策当局から注目されています。

米国CPIの数値は、米連邦準備制度(FRB)の金融政策に直接的な影響を与えます。FRBはアメリカの中央銀行にあたる機関です。金利の調整などを通じてアメリカの経済を安定させる役割を担っています。

インフレが進行するとCPIが上昇し、FRBはインフレ抑制のために金利を引き上げることがあります。逆に、インフレ圧力が緩和されている場合は、金利引き下げや量的緩和のような金融緩和政策が取られるケースが少なくありません。

ここ数年の米国CPIはFRBの目標値とする2%を大きく上回る値を記録しており、物価上昇を抑えるため、FOMCにて金利の引き上げが継続的に行われています。

FRBの利上げや利下げは世界中の株式市場や債券市場、為替市場に大きな影響を与えます。

米国で金利が上昇すると、企業の借入コストが増え、株価が下落しやすくなります。特に成長株やテクノロジー企業にとって、金利上昇は資金調達のコスト増加につながるため、株式市場全体が下落する可能性があるでしょう。

また、CPIが上昇し、金利が引き上げられると、新しく発行される債券の利回りが上がるため、以前発行された低利回りの債券の価値は下落します。これにより、債券市場での売り圧力が強まり、市場価格が下落することがあります。

さらに、インフレに伴い金利が上昇すると、金利の高い米ドルに対する需要が増えます。その結果、ほかの通貨に対してドルが強くなる(ドル高)傾向があります。

【関連リンク】FRB(連邦準備制度理事会)とは?組織の目的や株式に与える影響

米国CPIと日本CPIの比較

米国CPIと日本CPIの比較

(米国労働統計局およびe-Statより松井証券作成)

米国と日本のCPIを比較すると、両国の物価上昇率には明確な違いが見られます。

アメリカの物価上昇率は日本よりも高い傾向があります。その理由としてまず挙げられるのが、経済回復の速度の違いです。アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大後、経済活動の再開を迅速に進めたため、消費需要が急速に回復しました。これにより、供給が追いつかず、価格上昇の圧力が高まりました。一方で、日本は経済再開に時間がかかり、需要の回復が緩やかだったため、インフレ圧力は比較的低く抑えられています。

もう一つの要因は、人口動態の違いです。日本では高齢化と人口減少が進んでおり、その結果、消費需要が低調な傾向にあります。これに対し、アメリカは比較的若い人口構成を維持しており、消費が活発であるため、物価上昇圧力が強くなりやすいのです。

ただし、近年では円安によって輸入品の価格が上昇し、日本のCPIにも影響を与えています。日本の物価上昇率もアメリカに近づきつつあり、両国間の物価上昇率の差は徐々に縮小している状況です。

CPIとは物価変動をとらえるために重要な指標

CPI(消費者物価指数)は、消費者が購入する商品やサービスの価格変動を反映する重要な指標です。物価の変動は、企業の収益や消費者の購買行動だけでなく、株価や為替にも影響を与えます。

特に米国CPIは世界経済に大きな影響を与えるため、投資家にとって重要な指標です。CPIの動向を把握し、株式市場や金利の変動を予測することで、投資判断をより精度高く行いましょう。

まだ米国株口座をお持ちでない方は、
インターネットで今すぐお申込み!

リスクおよび手数料などについて