S&P500とは?NYダウとの違いや構成銘柄、買い方など基本をわかりやすく解説

2023/12/5
2025/7/1(更新)

米国株での資産運用に関心がある方であれば、「S&P500」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし、具体的にどのような指標なのか、投資対象としてどのような魅力があるのか、ピンとこない方もいるかもしれません。

本記事では、S&P500の基本的な定義や構成銘柄、過去の推移などを解説します。具体的な投資方法や投資する際のリスクなども紹介するので、この機会にS&P500に関する理解を深めておきましょう。

S&P500とは?

S&P500は、日本における「TOPIX(東証株価指数)」や「日経平均株価」に相当する米国の代表的な株価指数です。ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している会社のうち、500社の銘柄で構成されています。

S&P500は1923年に、スタンダード&プアーズ社の前身となる企業が26業種・233の企業を含む複数の指数を開発したのが始まりです。1957年から、現在のように500銘柄から算出されるようになりました。 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社によって公表されており、数値は毎分更新されています。

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S&P500が世界中で注目される理由

米国のGDPは世界全体のGDPの約4分の1を占めていることから、アメリカの経済動向が世界経済へ与える影響力は大きいと考えられます。そうした中、S&P500は米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしているので、S&P500の上昇や下落は、米国経済の好不調や景気動向を反映しているといえます。つまり、S&P500を見れば米国経済の動向が理解でき、さらには世界経済の見通しも把握しやすくなるということです。

S&P500は世界経済の先行指標として重視されており、世界中の投資家から注目を集めています。

S&P500とNYダウとの違い

NYダウとは、S&P500と同様に米国を代表する株価指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している米国各業種の代表的な30銘柄から算出されています。正式名称は「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」(Dow Jones Industrial Average)で、1896年のスタート当初はその名の通り、工業株を中心とする12銘柄から算出されていました。

テキスト S&P500 NYダウ
銘柄数 500銘柄 30銘柄
構成銘柄 ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している全業種から選定された大型株から新興株まで幅広い銘柄 ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している輸送、公益事業以外の米国を代表する大型株
指数の計算方法 株価の浮動株調整後の時価総額比率の加重平均方式 株価をすべて足し合わせて除数で割る単純平均型
銘柄の入れ替え 定量的なルールに基づいて必要に応じて行われる 定量的なルールはなく、指数委員会メンバーの会合で検討、実施される

注目したいのは、指数の計算方法の違いです。S&P500は、時価総額の大きさに合わせて、銘柄ごとのウェイトが異なる方式で算出されています。そのため、時価総額の大きな銘柄(大型株)の値動きの影響を受けやすいのが特徴です。

一方、NYダウは30銘柄の平均株価をベースとしているため、株価が高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい特徴があります。

また、構成銘柄数が多い分、S&P500の方が米国株式市場全体の動向をより正確に把握できるといえるでしょう。

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S&P500の主な構成銘柄

S&P500は定期的な見直しを経て、厳しい基準をクリアした企業が選ばれています。具体的にどのような企業が選ばれ、どのような比率で構成されているのか見ていきましょう。

S&P500の選定基準

S&P500の構成銘柄は、四半期ごとに見直され、必要に応じて入れ替えが行われています。
主な選定基準には以下のようなものがあります。

  • 米国企業である
  • 時価総額が一定以上である
  • 四半期連続で黒字利益を維持している
  • 一定の流動性がある

2023年10月時点では、アップル、マイクロソフト、テスラなどの「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大企業をはじめとした銘柄が構成上位10銘柄に含まれています。S&P500は幅広い業種の銘柄で構成されていますが、情報技術やヘルスケアといったセクターの割合が多くなっているのも特徴です。

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S&P500の構成比率 上位10社

以下は、S&P500の構成比率上位10社(企業名、業種)の一例です。

企業名 業種
アップル テクノロジ・ハードウェア・機器
エヌビディア 半導体・半導体製造装置
マイクロソフト ソフトウェア・サービス
アマゾン ドットコム 一般消費財・サービス流通・小売り
メタ プラットフォームズ メディア・娯楽
アルファベット A メディア・娯楽
BERKSHIREHATHAWAYINC-CLASSB 金融サービス
ブロードコム 半導体・半導体製造装置
TESLAINC 自動車・自動車部品
アルファベット C メディア・娯楽

アップルやアマゾンなど日常生活に馴染み深いグローバル企業や、マイクロソフト、エヌビディアといったテクノロジー企業が多く含まれています。加えて、メタやアルファベットなどの広告・プラットフォーム事業を展開する企業、テスラのような次世代自動車メーカー、そして金融のバークシャー・ハサウェイなど、多様な業種が名を連ねています。

これらの上位銘柄は、S&P500全体の構成比率において高いウェイトを占めており、指数の値動きに与える影響も大きくなります。そのため、S&P500に投資する際は、これら大型株の成績が運用結果に直結する可能性があることを理解しておきましょう。

S&P500の過去の推移

S&P500の過去の推移を振り返ると、短期的な上下動を繰り返しながらも、長期的に見ると右肩上がりの成長を遂げてきたことがわかります。例えば、過去20年間で見ると、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)といった経済危機や市場の調整局面を経験しましたが、その都度回復し、高値を更新してきました。

特に、リーマンショック後は、米国の金融緩和政策やテクノロジー企業の目覚ましい成長などを背景に、力強い上昇トレンドが続きました。年平均リターンで見ても、多くの期間で高いパフォーマンスを記録しており、世界中の投資家から注目を集める理由の一つです。

もちろん、過去のパフォーマンスは将来の値動きを保証するものではありませんが、米国経済の成長力を背景に、S&P500が今後も堅調な推移を続けると期待する専門家は少なくありません。

S&P500の買い方・投資する主な方法

S&P500に投資したい人は、投資信託やETFの購入を検討してみましょう。それぞれの特徴の違いを理解した上で、自分に合った商品を選んでください。

国内ETF(上場投資信託)を買う

S&P500に連動する国内ETFに投資することで、間接的にS&P500に投資ができます。

国内ETFとは、東京証券取引所のような国内の金融商品取引所に上場している投資信託のことです。国内株式と同様の取り扱いとなるので、証券会社で総合口座を開けば、基本的に誰でも投資できます。

国内ETFは日本の証券会社を通じて日本円で取引ができるので、手続きの流れがわかりやすいことがメリットです。国内株式と同様に、日中に取引ができます。

ただし、国内ETFは米国ETFと比べると流動性が低く、スピーディーな売買ができないリスクや、希望通りの価格で売買が成立しないリスクがある点に注意しましょう。

S&P500に連動した海外ETF(上場投資信託)を買う

S&P500に連動する海外ETFを購入することで、間接的にS&P500に投資する方法もあります。

海外ETFとは、ニューヨーク証券取引所やナスダックなど、海外の証券取引所に上場している投資信託のことです。米国株と同じような扱いになるので、購入する場合は米国株式が買える証券会社の口座を用意しておかなければなりません。

一般的に、投資信託の保有コストである「信託報酬」よりも、海外ETFの保有コストに相当する「経費率」は低い傾向にあります。コストを抑えて運用できるため、長期保有にも適している点がメリットです。 海外ETFは取引高が多いため、スピーディーに取引が進む点がメリットです。相場に影響を与えるニュースが出たタイミングで、即座に売買を成立させるといったこともできるでしょう。

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一方、外貨で取引するため、為替変動リスクには注意が必要です。例えば、1米ドル=140円で「円」を「米ドル」に交換して海外ETFに投資し、米ドル建てで資産が5%増えたとしましょう。しかし、ETFを売却して再び「米ドル」を「円」に交換するとき、1米ドル=130円になっていたとすれば、最終的には損失を出してしまうことになります。

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また、海外の証券取引所で売買するため、取引時間は日本時間の22:30~翌5:00(夏時間)または23:30〜翌6:00(冬時間)としているケースが一般的です。日中に取引できる国内株とは大きな違いがあることを覚えておきましょう。なお、松井証券では2025年7月7日(予定)より、日本時間17:00(冬時間18:00)からのプレマーケットにおける米国株取引に対応する予定です。

S&P500に連動した投資信託を購入する

投資信託とは、多くの投資家から集めた資金をひとまとめにして、専門家が運用する商品です。投資信託には、NYダウやTOPIXなどの特定の株価指数に連動した運用成果を目指す『インデックスファンド』と、特定の株価指数(ベンチマーク)の収益率を上回る運用成果を目指す『アクティブファンド』の2種類があります。S&P500をベンチマークとするインデックスファンドに投資すれば、間接的にS&P500に投資が可能です。

S&P500に連動する投資信託は、銀行や証券会社から購入できます。毎月少額から購入できる場合もあるので、無理のない範囲で投資を始められるのがメリットです。毎日・毎月など決まったタイミングで決まった金額を購入すれば、購入単価を引き下げる効果(ドル・コスト平均法)も得られます。

ただし、注文を出した当日は売買金額(基準価額)が公表されず、注文した翌営業日に公表される点には注意しましょう。ETFのようにリアルタイムでの取引はできません。

【関連リンク】ドルコスト平均法とは?メリットデメリットや意味ないと言われる理由、投資の活用ポイントを解説

なお、松井証券では、上記3つ(日本株・米国株・投資信託)のすべての方法に対応しています。また各サービスのサポートも充実しており、米国株サービスでは取引に関してわからないことがあったときに夜間24時まで専門スタッフに電話で無料相談できる「米国株サポート」も用意されています。

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S&P500に投資しておけば安心?

S&P500は長期的に見るとパフォーマンスが安定しており、米国の高成長企業に分散投資できる魅力的な投資対象です。しかし、S&P500が過去に素晴らしい成績を収めてきたからといって「S&P500に投資しておけば絶対に安心」と言い切れるわけではありません。

その主な理由の一つは、米国市場への集中投資によるカントリーリスクです。米国経済が不調に陥った場合や、米国企業の株価が大きく下落した場合には、S&P500も大きな影響を受けます。

このようなリスクを抑えるためには、S&P500だけでなく、全世界の株式市場に分散投資できるインデックスファンド(全世界株式)などにも投資するのが有効です。地域的な偏りをなくすことで、より安定した資産運用を目指せます。

最終的には投資目的やリスク許容度、投資期間などを総合的に考慮し、S&P500だけに投資するのか、他の資産と組み合わせて運用するのかを判断しましょう。

S&P500に投資するときの考えられる主なリスク

過去、経済成長とともに値を上げてきたS&P500ですが、今後も成長し続けるとは限りません。実際にS&P500に投資する前に、リスクについても知っておきましょう。

株価変動リスク

S&P500は過去30年間、右肩上がりで高いパフォーマンスを示してきました。しかし、今後も成長し続けるとは限りません。実際に、リーマンショックや新型コロナウイルスの感染拡大などのタイミングでは、多くの企業で株価が下落し、S&P500も下落相場を経験しています。

500銘柄に分散して投資されているものの、S&P500全体において高いウェイトを占めている上位構成銘柄が下落した場合、リスクが分散しきれないケースや、米国市場全体が冷え込み、株価が暴落すればS&P500も下落するリスクがあることは覚えておきましょう。

為替変動リスク

S&P500はドル建ての指数ですが、日本人投資家は円建てで投資することが多いため、為替変動の影響を受ける可能性があります。

例えば、海外ETFを取引する場合、購入時と売却時の価格が同じだったとしても、売却時に円高が進んでいると、資産は目減りしてしまいます。経済情勢や金融政策の変化など為替レートが変動する要因はさまざまあるので、常に最新のニュースをチェックしておきましょう。

国際情勢リスク

アメリカは世界最大の経済大国であり、他国と多くの関係を持っているため、世界各国で起こる政治的・経済的・社会的な出来事に影響を受ける可能性があります。

例えば、戦争やテロ、自然災害などが、S&P500に影響を及ぼす可能性もゼロではありません。リスクを減らしたい場合は、米国以外を対象とする商品に資産を振り分け、分散投資を意識しましょう。

S&P500とは米国市場全体の動きを反映する重要な指標

S&P500は米国経済の動向を知る上で重要な指標です。多くの投資家がチェックしていますので、米国株投資をするなら理解しておきましょう。

投資信託やETFを通じて、実際に投資してみるのも良いかもしれません。ただし、必ずしも良い運用成果が得られるとは限らないので注意してください。株価暴落のリスクや為替リスクなどがあり、元本割れする可能性も十分にあることを理解した上で投資しましょう。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。