FXのスキャルピングとは?メリットやデメリット、取引のコツを解説

2022/9/26
2025/9/1(更新)

スキャルピングは短期間で利益を狙える可能性があるトレード手法として、多くのトレーダーに活用されています。一度は取り組んでみたいと思いながらも、自分に向いている手法なのかがわからず、躊躇している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、スキャルピングの基本的な知識から、具体的なメリット・デメリット、取引する際のコツについて解説します。自身の性格やライフスタイルに合った手法かどうか、トレードスタイルを見極めるための参考にしてみてください。

そもそもFXとは?という方はこちらをご覧ください。

FXのスキャルピング手法の概要

まずはFXにおけるスキャルピング手法とはどのようなものか、基本的な方法と特徴について解説します。

上昇する青いチャート

FXのスキャルピングとは?

スキャルピングとは、数秒や数分単位で小さな売買を繰り返し、利益を重ねていくFXのトレード手法です。 英語のscalpには「頭皮を剥ぐ」という意味があります。薄い頭皮を剥ぐように、小さな利益を繰り返し狙っていくのが特徴です。スキャルピングでは、1日に数十回から数百回のトレードを繰り返すことになります。

スキャルピングは資金効率の良いトレード手法です。得られた利益を再投資することで、短期間で資金を増やせる可能性があります。

また、トレード1回あたりの為替リスクが小さいのも特徴です。スキャルピングはポジションの保有期間が短いため、万が一想定外の方向に相場が動いても迅速に対応ができます。そのためマイナスの影響を抑えやすく、大きな損失を被る可能性は低いといえるでしょう。トレンドに沿う形で売買をすれば比較的大損しにくいトレード手法です。

ほかのトレード手法との違い

スキャルピングと並ぶ代表的なトレード手法には「スイングトレード」と「デイトレード」があります。スキャルピング手法との違いをそれぞれ見てみましょう。

スイングトレード

スイングトレードとは、ポジションを数日から数週間にわたって保有し、大きな値幅を狙いにいくトレード手法のことです。中長期的にチャートを観察し、相場の方向性を分析することで、トレンドや動きのクセが見つけやすくなります。

取引機会は限られるため、チャートに張り付く必要がなく、余裕を持って取引できるのがスイングトレードの特徴です。普段忙しいという人も、本業や生活リズムに支障をきたすことなくトレードに取り組めるというメリットがあります。

また、スワップポイントを狙うことも可能です。スワップポイントとは、FXで売買をする二国間の通貨の金利差によって得られる利益のことです。高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売った場合に受け取れます。スワップポイントは基本的に毎日受け取れるため、ポジション保有期間が数日間にわたることもあるスイングトレードでは、継続的にスワップポイントが受け取れる可能性があるのです。

【関連リンク】スワップポイントとは?仕組みや計算方法、メリットデメリット、運用のポイントをわかりやすく解説

ただし、スイングトレードは、スキャルピングに比べると取引回数が少なくなります。また、1回の取引で大きな利益を狙うことになるため、1回の取引で背負うことになるリスクも大きくなってしまうのです。ポジション保有期間が長くなるため、スキャルピングより相場の急変に遭遇する可能性も高いでしょう。

【関連リンク】スイングトレードとは?FXにおけるメリット・デメリットを解説!

デイトレード

デイトレードは、数時間から1日で取引が完了するトレード手法です。ポジションの保有時間は数十分から数時間程度で、基本的に日をまたいで取引することはありません。そのため、スイングトレードに比べると拘束時間が短く、トレードにあまり時間を割けないという人にも取り組みやすいのが特徴です。また、スキャルピングに比べるとポジション保有期間が長いため、比較的大きな利幅を狙える可能性があります。

デイトレードの大きなメリットは、オーバーナイトリスクがないことです。FXの相場では、雇用統計や物価指数などの経済指標の発表により、深夜・早朝に相場が急変動することがあります。日をまたいでポジションを保有すると、寝ている間に価格が大きく変動しロスカットされているという状況もあり得るのです。しかし、デイトレードの場合、その日のうちに取引を終えるため、そのような心配は必要ありません。

  • ロスカットとは、証拠金があらかじめ設定した水準に抵触した際に、損失拡大の防止を目的として、保有するすべてのポジション(新規で買建または売建し、決済せずに保有している通貨)を決済することを意味します。

【関連リンク】FXにおけるロスカットとは?仕組みや計算方法、回避する方法を解説!

ただし、デイトレードでは適切なタイミングで売買をしなければ、損失が拡大する可能性があるため、定期的にチャートを確認するように心がけましょう。

また、デイトレードではトレンドに沿って取引するのが基本です。トレンドに強いテクニカル分析などの方法を用いて、的確にトレンドを把握する必要があります。特に、日足ベースでのトレンドを確認し、そのトレンドを基本としながらも、更に30分足や60分足を用いて1日の中でのトレンドを確認するようにしましょう。

【関連リンク】FXのデイトレードとは?短期間で売買するメリットや注意点を解説!

スキャルピングのメリット

スキャルピングには、ほかのトレード手法にはない3つのメリットがあります。

短時間で利益を狙える

スキャルピングの大きな魅力は、短時間で利益を狙える点です。1回あたりの取引は数秒から数分で完結するため、取引の回数を重ねることで利益を積み上げられる可能性があります。

また、相場の方向性がはっきりしない局面でも、ごく短期的な値動きの波を捉えて利益を狙うことが可能です。大きな値動きがなくても、わずかな値幅を狙って取引を繰り返すことで、効率よく資金を増やせる可能性があります。得られた利益を次の取引に活かせば、複利的な効果にも期待できるでしょう。

ポジション保有時間が短くリスクを限定できる

スキャルピングは数秒から数分で取引を完了するため、突発的な経済指標の発表や要人発言といった相場急変の影響を受けにくい点がメリットです。仮に損失が出たとしても、すぐに反応し小さな値幅で損切りができれば、ダメージを最小限に抑えやすいという特徴があります。

また、含み損を抱えたときに「もう少し待てば戻るかも」と考えて損切りが遅れることを防ぎやすいのも利点です。取引時間が短いことで、冷静にリスク管理をしながら小さな損失で区切る判断をしやすくなります。

長時間ポジションを持たないことで精神的な負担が軽減され、冷静にリスクを管理しながら取引を続けられる点もスキャルピングの強みです。

相場が小動きでもチャンスがある

値動きが乏しい「レンジ相場」のように、相場の方向性がはっきりしない状況でも利益を狙えるのがスキャルピングの強みです。

レンジ相場では、一定の値幅で価格が上下動を繰り返す傾向があります。スキャルピングでは、その小さな上下動を利用して、上限で売り、下限で買いといった取引を繰り返すことで利益を狙えます。

大きなトレンドが発生していない時でも、細かな値動きを見つけてエントリーすることが可能です。

【関連リンク】レンジ相場とは?FX取引への活用法やほかの値動き相場との見分け方

スキャルピングのデメリット

スキャルピングには大きなメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。取引を始める前に、以下の点を必ず把握しておきましょう。

スプレッドや取引コストの影響を受けやすい

FXでは1回の取引ごとに「スプレッド」と呼ばれるコストを支払う必要があります。スプレッドとは、為替レートの売値と買値の差のことです。スキャルピングは基本的に1日あたり数十回〜数百回取引を繰り返す手法のため、スプレッドの負担も大きくなる傾向があります。少額取引で狙える利益の規模は限られるため、スプレッドによる手数料負担が利益を圧迫し、思ったように稼げないことも十分あり得るでしょう。

特にスプレッドの広い通貨ペアを選ぶと利益が出にくくなるため、スキャルピングに適した通貨ペアを見極める必要があります。

またFX会社によっては別途取引手数料がかかる場合もあり、コスト管理を徹底しないと、コストが利益を上回ることもあるでしょう。

【関連リンク】FXのスプレッドとは?取引手数料の決まり方やコストの計算方法

高度な集中力と判断力が求められる

スキャルピングでは一瞬の判断ミスが損失につながるため、常にチャート画面を監視し、瞬時の判断でエントリーと決済を繰り返す必要があります。また、効率的に利益を上げるには素早い判断や経験、知識が必要です。

取引中はトレード画面から離れられず、精神面や体力面での負担が大きくなりやすいため、スキャルピングは上級者向けのトレード手法といっても良いかもしれません。

安定した通信環境を整える必要がある

注文から約定までのスピードが収益を左右するため、安定した通信環境はスキャルピングに必須の要素です。

通信速度が遅かったり、接続が途切れたりすると「スリッページ」が起こりやすくなります。スリッページとは、注文したときの価格と、実際に約定したときの価格にズレが生じる現象です。スリッページが発生すると意図しない価格で取引が成立し、損失が出る可能性があります。

特に、電波の状況に左右されやすいモバイル回線のみでの運用は、こうしたリスクが高いため注意が必要です。光回線のように高速で安定したインターネット環境を整えることが、スキャルピングにおけるリスクを避ける上で欠かせません。

【関連リンク】スリッページとは?スリッページが起こる理由や対策、よくある質問

少額取引では利益が出しづらい

一度の取引で狙う利幅が小さいため、まとまった利益を得るには、ある程度の取引量(ロット数)が必要です。

しかし、FXを始めたばかりの方や、資金が潤沢でない方は、大きなロット数で取引することに抵抗があるかもしれません。少ない資金で小さなロット数で取引をすると、たとえ勝てたとしても、得られる利益はごくわずかです。場合によっては、スプレッド分のコストを回収できず、資金が徐々に減ってしまう状況に陥る可能性もあります。

【関連リンク】FXにおけるロットの意味は?計算方法や決め方、注意点

禁止されているFX会社もある

スキャルピングはすべてのFX会社で認められているわけではありません。

一部のFX会社では、短時間に大量の注文が入るとサーバーに与える負荷が大きくなることを理由に、スキャルピングを規約で禁止または制限している場合があります。規約に違反すると、警告を受けたり、最悪の場合は口座を凍結されたりするリスクがあります。

スキャルピングをメインに取引したい場合は、口座開設前に必ずFX会社の利用規約を確認し「スキャルピング公認」や「スキャルピングOK」を明言している業者を選びましょう。

FXのスキャルピングはどんな人におすすめ?

スキャルピングは、その特性から向き・不向きが分かれる手法です。自身がどちらのタイプに近いか、以下の表を参考に判断してみてください。

向いている人 向いていない人
  • 短時間での判断と決断が得意な人
  • チャートを見るのが苦にならず、長時間集中力を維持できる人
  • 取引ルールを厳守できる自己管理能力の高い人
  • 長時間チャートを見続けるのが苦手な人
  • 損切りを躊躇してしまう人
  • 感情的にトレードしてしまう人
  • 少額資金で大きな利益を狙いたい人

スキャルピングに向いている人

わずかなチャンスを逃さず、瞬時にエントリーと決済の判断を下せる人はスキャルピングに向いています。

また、チャートを見るのが苦にならず、長時間集中力を維持できる人も取り組みやすいでしょう。取引中は常に画面に張り付く必要があるため、チャート分析そのものを楽しめるくらいの熱意が必要です。

さらに取引ルールを厳守できる自己管理能力の高さも欠かせません。事前に決めた損切りや利確のルールを、感情に左右されずに淡々と実行できる冷静さが、安定した収益につながります。

スキャルピングに向いていない人

長時間チャートや取引ツールを見続けるのが苦手な人や集中力が続かない人には、スキャルピングは合わないかもしれません。一瞬の気の緩みが損失につながるため、常に高い緊張感を強いられます。

また、損切りを躊躇してしまう人や感情的な判断でルールを破りがちな人も向いていません。小さな損失を確定できずにいると、あっという間に損失が拡大してしまう可能性があります。「負けを取り返そう」と熱くなって無謀な取引を繰り返すタイプの方は、資金を大きく減らしてしまうでしょう。

さらに、少額資金で大きな利益を狙いたい人にもスキャルピングはあまり向いていません。スキャルピングで得られる1回あたりのpipsは小さいため、少ない資金で大きく稼ぐのは非効率です。

FXのスキャルピングを行うときのコツ

スキャルピングで安定的に成果を出すためには、いくつかのコツを押さえておく必要があります。

経済指標発表時の取引を避ける

米国の雇用統計や消費者物価指数など、重要な経済指標の発表前後は相場がどちらの方向に動くか予測が難しく、価格が乱高下しやすいため、取引を避けるのが無難です。

事前に経済指標カレンダーを確認し、いつ、どの国で、どのような指標が発表されるのかを把握しておきましょう。発表時刻の前後30分~1時間程度は、ポジションを持たないように心掛けることで、リスクを回避できます。

【関連リンク】CPI(消費者物価指数)とは?投資への影響や米国CPIが注目される理由

経済指標カレンダー

スプレッドの狭い通貨ペアを選ぶ

取引回数が多くなるスキャルピングでは、コストであるスプレッドをいかに抑えるかが収益に直結します。

そのためスキャルピングをメインで取引する場合は、なるべくスプレッドが狭い通貨ペアを選ぶと良いでしょう。例えば、米ドル/円やユーロ/米ドルのような、取引量が多く流動性の高い「メジャー通貨ペア」はスプレッドが狭い傾向にあります。

一方、トルコリラ/円や南アフリカランド/円のような「マイナー通貨ペア」はスプレッドが広がりやすいため、スキャルピングにはあまり適していないでしょう。

なお、スプレッドは取引する時間帯によっても異なります。早朝など流動性の低い時間帯はスプレッドも広がる傾向にあるため、ロンドン時間(日本時間で16時以降)やニューヨーク時間(日本時間で21時以降)など、市場が活発な時間帯を選んで取引しましょう。

【関連リンク】米ドル/円|通貨ペア紹介

【関連リンク】トルコリラ/円|通貨ペア紹介

【関連リンク】南アフリカランド/円|通貨ペア紹介

トレードルールと損切り基準を明確にする

スキャルピングで安定した成果を出すには、感情に流された取引を防ぐための明確なルール作りが欠かせません。「どのような条件がそろったらエントリーするのか」「利益が何pips出たら決済するのか」「損失が何pipsになったら損切りするのか」といったルールを、取引を始める前に具体的に決めておきましょう。例えば、「移動平均線がゴールデンクロスしたら買いでエントリーし、5pipsの利益が出たら利確、3pipsの損失が出たら損切りする」といった具合です。

もし、こうしたルールを事前に決めずに行き当たりばったりの取引をすると、その場の感情に流されてしまい、計画的に収益を得ることはできません。一度決めたルールを、相場の雰囲気に流されず機械的に実行し続ければ、判断に迷うこともなくなるため、精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。

【関連リンク】ゴールデンクロスとは?一般的な組み合わせや活用する際の注意点

【関連リンク】FXのpips(ピップス)とは?損益の計算方法や活用時の注意点をわかりやすく解説

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短期足チャートでエントリーとエグジットを判断する

スキャルピングでは、ごくわずかな値動きを捉える必要があるため、1分足や5分足といった短い時間軸のチャート(短期足)をメインに使用しましょう。

ローソク足やRSI、移動平均線といったテクニカル指標を活用して相場分析をすることで、より精度の高い判断ができるようになります。

エントリー後は、すぐに利益確定や損切りができるように、常にチャートの状況を注視しておきましょう。

【関連リンク】ローソク足の基本パターン!組み合わせや注意点も解説

【関連リンク】RSIとは?計算式やRCIとの違い、注意点などをわかりやすく解説

【関連リンク】移動平均線とは?種類や基本的な見方、取引での使い方をわかりやすく解説

取引時間帯や市場のボラティリティを意識する

FX市場は、時間帯によって値動きの活発さ(ボラティリティ)が大きく異なります。スキャルピングは値動きの少ない相場でも利益を狙える手法ですが、取引量が多い時間帯の方がより利益を積み重ねられる可能性があります。

【関連リンク】FXのボラティリティとは?通貨ペアや時間帯、分析するための指標

東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場といった世界の主要な市場が開いている時間に取引するのがおすすめです。特にロンドン市場とニューヨーク市場が重なる日本時間の夜21時~深夜2時頃は1日のうちで最も取引が活発になるといわれているため、スキャルピングで利益を狙うチャンスは増えるでしょう。

反対に早朝など、市場参加者が少ない時間帯は値動きが鈍くなり、スプレッドも広がりやすいため、スキャルピングは避けたほうが良いかもしれません。

FX初心者はスキャルピング以外のトレード手法がおすすめ

スキャルピングは短時間で売買を繰り返し、利益を積み重ねていく手法です。一度の取引における損失リスクは低いものの、その特性上、高度な判断力や集中力、そして安定した取引環境が求められます。

スプレッドの影響を受けやすい点や瞬時の判断ミスが損失につながりやすい点などをふまえると、FXの経験が浅い初心者の方には、あまりおすすめできません。

FXには、ほかにもデイトレードやスイングトレードといった、より長い時間軸で落ち着いて取り組める手法があります。FX初心者の方は、まずこれらの手法で取引経験を積み、相場分析や資金管理の基礎をしっかりと身につけてから、スキャルピングに挑戦してみましょう。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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