ナスダック(NASDAQ)とは?主な銘柄やNYダウ・S&P500との違い

2024/1/11

投資に関する情報収集をしていると「ナスダック」を目にする機会は多いでしょう。しかし具体的に何を指すものなのか、詳しくはわからない人もいるのではないでしょうか。ナスダックについて理解できれば、米国株式市場のトレンドを把握しやすくなるかもしれません。米国株取引に興味がある人は、とくに理解を深めておくと良いでしょう。本記事ではナスダックの概要や、ナスダック指数とNYダウ・S&P500の違いなどを解説します。

ナスダック(NASDAQ)とは?

ナスダックは、ニューヨーク証券取引所と並ぶ米国の代表的な株式市場の1つです。まずはナスダックに関する基本的な知識を身につけましょう。

ナスダックとは、1971年に全米証券業協会によって創設された、新興企業向けの株式市場です。正式名称は「National Association of Securities Deals Automated Quotations」で、世界で初めてコンピューターによる電子売買システムを採用したことにより、大きな注目を集めました。

ハイテク・IT関連の銘柄が多く、上場株式の時価総額は世界最大の株式市場である「ニューヨーク証券取引所」に次ぐ規模です。日本におけるグロース市場(※)のような位置付けではありますが、ナスダックは東京証券取引所と比べて時価総額・取引金額が圧倒的に大きく、日々活発に取引が行われています。

  • グロース市場:東京証券取引所が2022年4月4日から導入した新市場区分において、「高い成長可能性を有する企業向けの市場」として定義されている市場で、プライム市場やスタンダート市場と比べると、規模の小さい新興企業が多い。

ナスダックに上場している企業や銘柄

ナスダックには世界をリードする有名企業も多く上場しています。上場している銘柄を知ることで、市場の特徴を把握できるようになるでしょう。

上場している企業・銘柄の特徴

ナスダックには2023年12月末時点で4,000以上の銘柄が上場しています。ハイテク・IT関連銘柄だけではなく、医薬品や金融、自動車など幅広い分野の企業が上場しているのが特徴です。

また、ナスダックではADRも取り扱っています。ADRとは「米国預託証券」のことで、米国外の外国企業や米国企業の外国法人子会社などが発行する株式を裏付けとして、米国証券取引所に上場している預託証券です。ADRを取引することで、米国以外の企業の株式についても、米国株と同様に取引できるようになっています。つまり、ナスダックでは新興国を含めて世界中の企業に幅広く投資できるわけです。

なお、ナスダックとニューヨーク証券取引所の大きな違いは、グロース株の多さにあるといえるでしょう。グロース株とは、将来にわたって企業の売上等の成長力が期待され、故に大きな株価の値上がりが期待されている銘柄のことを指します。グロース株は期待リターンの大きさに比例してリスクも大きいため、ナスダック全体では株価の値動きが激しい傾向にあります。一方、ニューヨーク証券取引所は世界最大の証券取引所で歴史が古いこともあり、大手企業が多く上場しています。

ナスダックに上場している主な銘柄

アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ、エヌビディア、テスラなどの「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる、世界をリードするIT企業の銘柄が、ナスダックで時価総額の上位を占めています。コストコ・ホールセールやネットフリックスなど、日本でも比較的馴染みのある銘柄も上場しています。近年では、日本企業でもナスダックへの上場を目指すケースが増えてきました。

【関連ページ】米国株の「マグニフィセント・セブン」とは?世界経済をけん引する大企業をご紹介

ナスダック指数とは

ナスダック指数は、アメリカを代表する株価指数の1つです。NYダウやS&P500との違いはどのような点にあるのか、解説します。

ナスダック指数の2つの種類

ナスダック総合指数

ナスダック総合指数とは、ナスダックに上場しているすべての企業の株式を対象とした株価指数です。株価指数とは、取引所全体や特定の銘柄群の株価の動きを、一定の計算方法で数値化したものを指します。

1971年2月5日の値を100として算出しており、2023年11月19日時点では14,113となっています。つまり、約50年で100倍以上に成長しているということです。

ナスダック100

ナスダック100はナスダックに上場している企業のうち、時価総額上位100社かつ非金融企業を対象としている株価指数です。ナスダック全体の時価総額の80%近くを、この100社が占めています。1985年1月31日から指数の算出を開始していますが、その間ナスダック100は約150倍に成長しています。

ナスダック指数(ナスダック100)とNYダウの違い

NYダウは、アメリカの代表的な優良企業30社の株価の平均を算出した株価指数です。ダウ・ジョーンズ社が発表しており、1896年5月26日に算出開始されたことから、世界でも歴史のある株価指数としても知られています。

ナスダック100はナスダックに上場している企業のみを対象としているのに対して、NYダウはニューヨーク証券取引所を含めた米国全体株式市場全体の中から銘柄が選定されている点は大きな違いです。

また、指数の計算方法にも違いがあります。ナスダック100は、 時価総額の割合に従って構成銘柄の構成割合を決めていく「時価総額加重平均」と呼ばれる方法を採用しているのに対して、NYダウは30銘柄の株価を株数で割り、調整を加えて算出しています。そのため、ナスダック100は時価総額が大きい銘柄の影響を、NYダウは株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすいといった特徴があります。

加えて、ナスダック100は時価総額や流動性、業種などの一定条件に基づいて、年1回12月に定期的な銘柄の入れ替えが行われています。一方、NYダウは企業の成長性や投資家の関心度などを考慮しつつ、株価平均委員会が不定期で入れ替えを検討するといった流れになっていることも覚えておきましょう。

ナスダック指数(ナスダック100)とS&P500の違い

S&P500は、米国を代表する500銘柄をもとに算出した株価指数です。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによって発表されており、1957 年 3 月 4 日に算出をスタートしました。

時価総額加重平均を使って指数を算出する点は共通しています。ただし、ナスダック100と異なり、S&P500はナスダックだけではなく、ニューヨーク証券取引所に上場する企業も指数算出の対象としています。

また、構成銘柄数の多さもS&P500の大きな特徴です。IT・ハイテク銘柄を中心とする100銘柄で構成されているナスダック100を大きく上回る銘柄数で構成されており、S&P500は米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしているといわれています。そのため、S&P500は米国市場全体の動きを把握するのに適した指標といえるでしょう。

さらに銘柄の選定条件も大きく異なります。S&P500の構成銘柄として採用されるためには、時価総額の大きさだけではなく、米国企業であることや、流動性の高さ、一定期間黒字を継続していることなど、さまざまな条件を満たさなければなりません。四半期ごとに銘柄の入れ替えを検討する点からも、ナスダック100より採用基準はやや厳しいといえるでしょう。

ナスダックとは多くの投資家が注目している市場

ナスダックには、さまざまな分野の有望企業が多く上場しています。活発に取引が行われていることからも、多くの投資家が注目している市場といえるでしょう。

ナスダック上場銘柄で構成されるナスダック指数は、NYダウやS&P500などと並ぶ、米国を代表する株価指数です。特定の業界に限らず、幅広い業界の動向を知りたい人はナスダック100をチェックしておくと良いでしょう。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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