FXの取引は円安と円高どちらが良い?円安円高を活用した取引の注意点
2023/7/31
FXは為替相場の動きを利用して、利益を狙う投資方法です。2023年は年始から7月にかけて円安が進行しましたが、初心者の方は取引するのにベストなタイミングはいつなのか、悩んでしまうことも多いでしょう。そもそも円安・円高とはどのような状態を表すのか、よく理解していない人もいるのではないでしょうか。
本記事ではFX取引で円安・円高のどちらが有利になるのか、円安・円高の基礎知識を含めて解説します。
FX初心者が押さえておきたい円安と円高の基礎知識
FXの取引をはじめる前に、まずは円安・円高の仕組みや生活に及ぼす影響などを知っておきましょう。
円安とは
円安とは、外国通貨に対して円の価値が低くなることを指します。円安になると、外国通貨を1単位購入するためにより多くの日本円を支払わなければなりません。
例えば、1ドル=130円から1ドル=140円になった場合は、1ドルを購入するのにより多くの円が必要となるため、円安になったといえます。
外国へ商品の輸出を行っている企業にとっては、ビジネスで獲得した外国通貨をより多く日本円に換金できるため、業績に好影響を及ぼすこともあります。
円高とは
円高は、円安とは反対に外国通貨に対して円の価値が高くなることを指します。円高になるとより少ない日本円で、外国通貨を1単位購入することが可能です。
例えば、1ドル=130円から1ドル=120円になった場合は、より少ない日本円で1ドルを購入できるため、円高になったといえます。
円高になると、海外からの輸入製品を安価に購入できます。少ない日本円で多くの外国通貨を手に入れられるため、海外旅行に行く際は旅費や現地での買い物の費用を抑えることもできるでしょう。
為替相場が変動する理由
為替相場はさまざまな要因によって変動しますが、基本的に買いたい人が多ければ高くなり、売りたい人が多ければ安くなる、といった需給バランスの変化が主な変動要因です。具体的には、景気動向や、要人発言、経済指標の発表などが需給バランスに影響を与えると考えられています。
またFXでは、2国間の通貨に金利差がある場合、低い金利の通貨を売って高い金利の通貨を買うことで、スワップポイントを受け取り利益を狙うこともでき、各国通貨の金利も変動要因の1つとなります。
FXの取引のタイミングは円安と円高どちらが良い?
FXでは、円安と円高のどちらが取引に向いている局面なのか、FXで利益をあげる仕組みも含めて解説します。
FXは為替レートの変動を利用して利益を得る取引です。この利益を「為替差益」と呼びます。外貨を購入した後、相場が円安に動いたときに購入した外貨を日本円に戻すことで、差分の利益を得られます。一方、外貨購入後に相場が円高に動いた場合は損失が発生じてしまいます。
このように考えると、FXでは円安の局面で取引するのが適切だと思えるかもしれません。しかし、FXは「買い」からだけではなく「売り」からスタートすることもできます。
FXは現物の資産を売買するのではなく、取引によって発生する価格差に相当する金銭の受け渡しのみを行う「差金決済取引」の仕組みを用いているため、「売り」から始めることもできるのです。
為替レートが下がり円高方向に動くと予測した場合には、高いときに売っておき、安くなったときに買い戻すことで利益を得られます。1ドル=140円のときにドルを売り、1ドル=130円のときにドルを買い戻せば、1ドルあたり10円の利益を得られる仕組みです。
つまり、FXは円安・円高どちらの局面でも利益を狙うことができるのです。
また、取引は基本的にトレンドに沿って行うことが無難です。トレンドとは長期的に見て相場が一方向に動く傾向のことを指します。トレンドに逆らって取引すると、為替差損を被るリスクが高くなります。
円安トレンドの場合は、日本円売り・外貨買いでエントリー、円高トレンドの場合は、日本円買い・外貨売りでエントリーするのがおすすめです。
なお、トレンドを見極めるためにはテクニカル分析を活用しましょう。テクニカル分析とは、過去の値動きを示したチャートの形状を分析したりや過去の価格を参考に分析することで、将来の価格を予測する方法のことです。テクニカル分析で用いられる代表的なテクニカル指標は覚えておくと良いでしょう。
円安や円高を利用してFX取引する際の注意点
初心者の場合、円安・円高どちらの局面であっても、リスクを抑えた取引を心がけることが大切です。
高レバレッジを狙わない
FXには「レバレッジ」と呼ばれる仕組みがあります。レバレッジとは、少ない資金で大きな金額の取引ができる仕組みのことで、最大25倍までかけられます。つまり、1万円をFX口座に入金した場合、最大で25万円分の取引が可能です。取引量が多くなれば、その分一度の取引で期待できる利益も大きくなります。
ただし、投資の世界においてリスクとリターンは表裏一体の関係です。狙える利益が大きくなるほど、大きな損失を被る可能性も増えてきます。相場の予測が当たり続けるとは限らないので、高レバレッジの取引を続けるのはリスクが高いと言えるでしょう。
とくに初心者の場合、まずは低いレバレッジで取引を始めて、経験を積んでいくことをおすすめします。
資金には余裕を持たせて取引する
円安や円高のトレンドは継続して続くものではありません。手元の資金を全て使ってポジション(外貨を買建または売建し、決済せずに保有している通貨のこと)を立ててしまうと、相場が急変した場合にロスカットされてしまう可能性があります。
ロスカットとは、損失が一定水準に達した場合に、すべてのポジションを強制的に決済する仕組みのことです。投資家を守るための仕組みなので、ポジションが決済されることで取引資金を大きく失うリスクを防げる反面、その後相場が好転したとしても、利益を得ることはできなくなってしまいます。
ロスカットは、FX会社が定める証拠金維持率を下回った場合に執行されます。証拠金維持率は、証拠金(口座への入金額)÷必要証拠金(通貨を取引するために必要な金額)で表すことができ、損失が出て証拠金が減っていくと、証拠金維持率も下がってしまいます。
言いかえれば、口座にお金を多めに預けて証拠金を増やす、もしくはポジションサイズを減らして必要証拠金を減らしておけば、ある程度損失を出したとしても証拠金維持率をキープすることができます。
このように、ロスカットを防ぐためには、資金に余裕を持たせた取引をすることが重要です。
新興国通貨は選ばないようにする
新興国の通貨は急激に価格が変動するリスクがあります。米ドルやユーロなどのメジャーな通貨と比べると情報も獲得しにくく、売買のタイミングが掴みづらい傾向があります。
初心者の場合は大きな損失を出してしまったり、ロスカットされてしまったりするケースも少なくないため、取引するのは避けたほうが無難かもしれません。
FXは円安・円高どちらでも利益を狙える
FXでは「買い」だけではなく、「売り」の注文もできるため、円安・円高どちらの局面でも取引が可能です。
初心者の場合は、トレンドに沿って取引すると利益を狙いやすいでしょう。実際に取引を行う際は情報収集を怠らず、テクニカル分析も活用しながら、相場の状況を分析できるようにしておきましょう。
<監修者>
川口一晃
<プロフィール>
1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。