つみたて投資枠(旧積立NISA)はやめたほうがいい?デメリットや向き不向きを解説
2024年の制度改正によって、つみたてNISAは「つみたて投資枠」として新たに生まれ変わりました。税制優遇を活用しながら長期的に資産形成ができる点が魅力ですが、いくつかのデメリットがあるため「やめたほうがいい」といわれることもあります。NISAに興味があるものの、自分に合っているかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、NISAのつみたて投資枠の基本的な仕組みや、メリット・デメリットについて詳しく解説します。自分に適した投資方法かどうかを判断するポイントを紹介しますので、参考にしてください。
なお記事内ではNISAのつみたて投資枠(旧積立NISA)を「つみたて投資枠」と表記します。
つみたて投資枠(旧積立NISA)はやめたほうがいい?
つみたて投資枠は、2024年にスタートしたNISAで活用できる非課税枠の一つです。少額から非課税で積立投資ができる制度であり、魅力的に感じる人も多いでしょう。
しかし、つみたて投資枠を利用すべきかどうかは、投資目標やライフスタイルなどに大きく左右されます。例えば、長期的な資産形成を目的とし、コツコツと積み立てることでリスクを分散したい人にとって、つみたて投資枠は適している可能性が高いでしょう。一方で、短期間で大きな利益を求める人には向かない可能性があります。
制度や仕組みを理解せずに始めると、思ったような成果が得られず後悔する可能性があるため、メリット・デメリットを理解したうえで活用しましょう。
そもそも「積立投資とは何かを知りたい」という方は、以下の記事も参考にしてください。
つみたて投資枠(旧積立NISA)のデメリット
つみたて投資枠を始める際は、デメリットについて理解を深め、自分に合った運用ができるかを確認しておきましょう。
投資額に上限がある
つみたて投資枠では、年間の投資上限額が120万円(1か月あたり10万円)と決められています。長期的にコツコツと資産形成することを目的としており、投資方法も「積立購入」のみに限られているため、一度にまとまった資金を投資することはできません。まとまった金額を一括投資して効率よく資産を増やしたいと考えている場合には物足りないと感じる可能性があります。
一方、NISAのもう一つの非課税枠である「成長投資枠」では、年間240万円まで投資が可能で、積立購入に加えて一括投資も選択できます。ボーナスや退職金など、余剰資金を一度に投資したい場合には、つみたて投資枠では制限があるため、成長投資枠の利用を検討するのも一つの方法です。
なお、つみたて投資枠と成長投資枠を併用して、使い分けることもできます。
対象商品が限定されている
つみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁が定めた基準を満たした投資信託やETF(上場投資信託)に限定されています。 販売手数料が無料の銘柄や信託報酬が低水準の銘柄など、低コストで運用できる銘柄を購入可能です。金融庁が発表しているつみたて投資枠対象商品は2025年2月7日時点で310本あります。
松井証券で取り扱いのあるつみたて投資枠の投資信託はこちらをご覧ください。
しかし、ハイリスク・ハイリターンの投資信託や個別株、REIT(不動産投資信託)などは対象外です。例えば、「積極的に市場平均を上回る利益を狙えるファンドに投資したい」「海外の成長企業の個別株に直接投資したい」と考えている場合などは、つみたて投資枠では自分のニーズに合った商品が見つからないこともあるでしょう。
一方、もう一つの非課税枠である成長投資枠では、つみたて投資枠で購入できる商品に加え、個別株やREITなどへの投資も可能です。そのため、より多様な銘柄に投資したい場合は、成長投資枠も活用すると良いでしょう。
元本保証がない
つみたて投資枠は、投資信託やETFを活用して資産運用を行うため、銀行預金のような元本保証はありません。市場の値動きに応じて資産価値が変動するため、評価額が投資額を下回るケースもあります。特に株式を主な投資対象とする投資信託を購入した場合、株式市場が暴落すると、基準価額が大きく下落することも少なくありません。
資産が目減りすると、途中で積立をやめてしまいたくなるかもしれませんが、つみたて投資枠の本来の目的は「長期・分散・積立」によるリスク軽減です。金融庁の調査でも、保有期間が長くなるほど元本割れのリスクは少なくなるとされています。そのため、一時的に損失が出たとしても、短期的な値動きに左右されず、計画的に積立を続けることが重要です。
損益通算ができない
NISA制度では、投資で損失が発生しても、損益通算はできません。そのため、課税口座で利益が出た場合、つみたて投資枠の損失があっても、利益全額に対して税金がかかる点に注意が必要です。
損益通算とは、同一年度に発生した損失と利益を合算して、税負担を軽減する仕組みのことです。通常、特定口座など課税対象の口座では、株式や投資信託の利益と損失をまとめて計算し、最終的な課税額を抑えられます。
例えば、特定口座で投資信託を売却し10万円の利益が出た場合、同じ特定口座で別の投資信託を売却して5万円の損失が発生していれば、最終的な課税対象額は利益から損失を差し引いた5万円です。
一方、特定口座で投資信託を売却して10万円の利益が出た場合、つみたて投資枠で運用していた投資信託を売却し5万円の損失が発生しても、損益通算ができないため、特定口座の利益10万円に対して課税されます。
このように、つみたて投資枠の損失はほかの口座の利益と相殺できないため、税負担が大きくなる可能性があります。
短期間で大きな利益を得るのが難しい
つみたて投資枠には、短期間で大きな利益を得ることは難しいという特徴があります。そもそもつみたて投資枠は長期的な資産形成を目的とした制度であり、毎月一定額を少しずつ積み立てる仕組みになっているため、資産が増えるスピードも比較的緩やかだからです。
加えて、つみたて投資枠の対象商品である投資信託は、複数の資産に分散投資する商品であり、個別株に比べると価格の変動幅が小さく、短期間での大幅な値上がりを期待しにくいという側面があります。
短期間で利益を得たいと考えている場合は、つみたて投資枠ではなく、より自由度の高い成長投資枠など、別の投資手段を検討する必要があるでしょう。
つみたて投資枠(旧積立NISA)のメリット
税制優遇を受けながら投資できる点がつみたて投資枠の大きな魅力であり、初心者でも無理なく続けやすい仕組みになっています。ここでは、つみたて投資枠の主なメリットについて解説します。
投資利益が非課税になる
通常、投資信託などから得られた売却益や分配金には20.315%(内訳は所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。しかし、つみたて投資枠を活用して毎年120万円までの範囲内であれば、購入した金融商品の売却益や分配金・配当金には課税されません。
例えば、通常の課税口座で100万円の利益を得た場合、約20万円が税金として差し引かれますが、つみたて投資枠を活用すれば、100万円の利益をそのまま手元に残すことが可能です。
課税口座で運用する場合と比べて、効率よく利益を積み上げられる可能性があります。
少額から始められる
つみたて投資枠は、毎月100円程度の少額から無理なく始められるのも大きな魅力です。まとまった資金を用意できない人でも、家計に負担をかけることなくコツコツと資産運用を始められます。
なお、松井証券のNISA口座では100円から積立投資が可能です。
価格変動のリスクを分散できる
つみたて投資枠の大きなメリットの一つとして、価格変動リスクを分散できる点が挙げられます。定期的に一定額を積み立てる投資方法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、価格が高いときには少ない口数を、価格が安いときには多くの口数を購入することになるので、長期的に見て購入単価を平均化する効果があります。相場の上下に関係なく一定額を積み立てることで、高値掴みのリスクを軽減することが可能です。
自動積立で手間がかからない
自動積立によって手間をかけずに資産運用ができる点も、つみたて投資枠のメリットです。運用を始める際に設定をしておけば、毎月決まった金額が自動的に投資されるため、忙しい人でも手軽に資産運用を継続できます。
手持ちの口座からの自動引き落としや、クレジットカードでの積立に対応している金融機関を利用すれば、手続きを忘れる心配もなく、計画的に資産形成を進められるでしょう。
また、自動積立をする場合は「買い時」を考える必要がないため、感情に左右されることなく投資を続けられる点もメリットです。相場の好不調にかかわらず、淡々と投資を続けることで長期的な資産の成長を目指せるでしょう。
複利効果を活用できる
長期にわたって積立を続けることで、複利効果を最大限に活用できる点も、つみたて投資枠の大きなメリットです。複利効果とは、投資で得た利益を元本に再投資することで、利益が利益を生み出していく仕組みのことです。運用益にも利益が積み重なっていくため、時間が経つほど加速度的に資産が増えていく効果が期待できます。
つみたて投資枠では運用による利益を非課税で受け取れるため、再投資に回される金額が大きくなり、効率よく利益を積み上げられる可能性があります。
つみたて投資枠(旧積立NISA)をやめたほうがいい人の特徴
以下の特徴が当てはまる人は、つみたて投資枠を活用しても、期待する成果を得られない可能性があります。
- 短期間で大きな利益を狙いたい人
- 相場の変動に応じて柔軟に投資したい人
- 元本割れを絶対に避けたい人
- まとまった金額を一括投資したい人
- 多様な金融商品に投資したい人
- 投資経験が豊富で自己判断による積極的な投資戦略を取りたい人
つみたて投資枠は、長期的な資産形成を前提とした制度です。時間をかけてコツコツと積み立てながら、安定的に資産を増やしていくことを目的としています。そのため、短期間で大きな利益を狙いたい人や、頻繁な売買を行いながら市場の動きに応じて投資方針を変更したい人には不向きといえます。つみたて投資枠では、一度設定すれば自動的に積立が継続されるため、「今が買い時だから多く投資したい」「相場が上がったからすぐに売却したい」といった柔軟な運用は難しいでしょう。
また、リスクを許容できない人にとっても、つみたて投資枠は適さない場合があります。投資信託やETFといった元本割れのリスクがある商品が投資対象となるため、確実に資産を守りたいと考える人は、預貯金や定期預金などの元本保証がある金融商品を選ぶほうが安心かもしれません。
さらにつみたて投資枠は、どちらかといえば初心者向きに設計された制度です。投資経験が少ない人でも安心して始められる一方で、自己判断による積極的な投資戦略を取りたい人にとっては、投資対象の制限や一括投資ができないことがデメリットに感じられるでしょう。
より柔軟に投資をしたい場合は、成長投資枠や課税口座の活用も検討しましょう。
つみたて投資枠(旧積立NISA)が向いている人は?
つみたて投資枠は、以下の特徴が当てはまる人に向いています。
- 投資初心者
- 長期で資産を増やしたい人
- 少額からコツコツ投資したい人
- リスクを分散しながら運用したい人
- 投資に関して時間をかけたくない人
- 非課税投資枠を活用したい人
- 低コストで運用したい人
つみたて投資枠は、少額から始められるうえ、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に投資対象が絞られています。そのため、投資の知識や経験が少ない初心者でも始めやすいでしょう。
また、長期的に資産を積み立てることで、短期的な市場の変動リスクを軽減できる点もメリットです。ドルコスト平均法の効果によって、高値掴みのリスクを防ぎながら、安定した資産形成を目指せます。
さらに、つみたて投資枠は、投資に多くの時間をかけられない人にも向いています。始めに積立金額や積立頻度を指定しておけば、普段仕事や家事で忙しい人でも、手間をかけることなく着実に資産形成ができるのが大きな魅力です。
加えて、つみたて投資枠を活用すれば、利益に対して税金がかからず、利益をそのまま再投資できます。つみたて投資枠の対象商品は、信託報酬などの手数料が低く抑えられているものが多く、低コストで運用できるため、効率よく資産を増やせる可能性があるでしょう。
つみたて投資枠(旧積立NISA)をやめたほうがいいかは、投資経験や投資目的によって異なる
つみたて投資枠は、長期的な資産形成を目的とした制度です。少額を時間をかけて積み立てることで、将来の資産をじっくりと育てられるので、投資初心者にとっては活用しやすい制度といえるでしょう。
一方で、投資経験がある人や、短期間で大きな利益を狙いたいと考えている人は、投資額に上限があり、投資対象にも一定の制約がある点をデメリットに感じる可能性があります。投資経験や投資目的を考慮した上で、つみたて投資枠が自分に合っているかどうかを判断しましょう。
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