ボリンジャーバンドとは?見方や設定方法、計算式、注意点を解説
ボリンジャーバンドとは、移動平均線を中心に、その上下に価格の変動幅(標準偏差)を加減して描いたバンドで、相場の値動きの範囲や勢いを視覚的に示すテクニカル指標です。
ボリンジャーバンドは、テクニカル分析で利用される指標の一つですが、具体的な見方や活用方法がわからず、難しく感じている初心者の方も多いのではないでしょうか。
本記事ではボリンジャーバンドの基本的な仕組みや見方、活用法について解説します。
ボリンジャーバンドとは?
ボリンジャーバンドとは、統計学で用いられる「標準偏差」を用いて、将来の価格変動範囲を予測するテクニカル指標です。アメリカの作家で財務アナリストのジョン・ボリンジャー氏によって考案されました。
テクニカル分析で用いられる指標は、「RSI」や「MACD」のような相場の過熱感を測る「オシレーター系指標」と、「移動平均線」や「一目均衡表」のようにトレンドを把握しようとする「トレンド系指標」に分けられます。ボリンジャーバンドは、トレンド系の側面とオシレーター系の側面を併せ持つ指標です。
チャート上では、中心を走る移動平均線とその上下に複数本(通常は2本ずつ)のラインが描かれ、全体が帯(バンド)のように見えます。このバンドの幅が拡大したり収縮したりする様子から、相場のボラティリティ(価格変動の度合い)を読み取る点が特徴です。
ボラティリティが高いときはバンドの幅が広がり、値動きが活発であることを示します。反対に、ボラティリティが低いときはバンドの幅が狭まり、値動きが落ち着いている状態を表します。このバンドの動きを観察し、将来の価格変動を予測する手がかりとします。
ボリンジャーバンドの見方
ボリンジャーバンドには大きく分けて四つの動き方があり、その分類と活用法について説明します。
スクイーズで相場のエネルギーを読み取る
ボリンジャーバンドの上下の幅(値幅)が狭く絞られて収束している状態のことをスクイーズと言います。買いと売りが拮抗することにより価格の方向性が定まらず、一定の価格帯の中で上下に行ったり来たりするレンジ相場になりやすいのが特徴です。ボラティリティが低いため、短期間で大きな利益を期待できる相場ではないといえるでしょう。ただし、スクイーズのあとには大きなトレンドが発生する可能性もあるため、ポジションを持つ場合には価格の推移に注目しておく必要があります。
エクスパンションでトレンドの発生を見極める
スクイーズの反対に、ボリンジャーバンドの値幅が拡大している状態のことをエクスパンションと言います。ボラティリティが高く、どちらか一方向に動くトレンドが発生しやすいのが特徴です。スクイーズのあとにエクスパンションに移行しやすいという傾向があります。
エクスパンションが起きている場合、トレンドに沿った「順張り」によって大きな利益を狙うことができ、スクイーズからエクスパンションに移行するタイミングを狙うのが定番の手法です。例えば、バンドが一気に広がったときに順張りでエントリー(「買い」または「売り」の注文をすること)し、その後バンドの幅が一番拡大したタイミングで注文を決済して利益を確定します。
ただし、理論通りの値動きをしない「ダマシ」が起こる可能性もあるため注意しましょう。例えば、相場が上昇傾向にある中で価格が急激に上昇しエクスパンションが起きたものの、その直後から値動きが逆行していくようなケースも見られます。
バンドウォークでトレンドの強さを確認する
バンドウォークは、価格が中央にある移動平均線まで戻らず、±1σや±2σのラインに沿って価格が推移している状態を指します。バンドの上を歩くように推移することからバンドウォークと呼ばれていますが、強いトレンドが継続しているときに現れるのが特徴です。エクスパンションと同様に、スクイーズのあとにバンドウォークが発生しやすいという傾向があります。
バンドウォークが起きている場合には、トレンドに沿って順張りでポジションを持っていれば、利益を出せる可能性が高いと考えられます。
ポージで行き過ぎからの回帰を狙う
ポージとは、ボリンジャーバンドのバンド幅が一定期間の中で最も大きく拡大した状態を指します。スクイーズからエクスパンションが発生してトレンドが形成され、その勢いが頂点に達した場面で現れるのが特徴です。
バンド幅が最大になるという現象は、相場の過熱感やエネルギーの放出が限界に近づいているサインと解釈されます。そのためポージが出現した場合は、トレンドの終了が近づいていると予測し、逆張りでエントリーすると利益を出せる可能性が高いと考えられます。
ボリンジャーバンドを使った取引手法
ボリンジャーバンドは、「順張り」と「逆張り」両方の戦略で活用できます。ここでは、具体的な取引手法と、損切り・利確の目安について解説します。
順張りでブレイクをフォローする
順張りは、発生したトレンドの方向に沿ってエントリーする手法です。ボリンジャーバンドでは、バンド幅が収縮するスクイーズから拡大するエクスパンションへの移行が、順張りを仕掛ける一つのタイミングとなります。
まず、バンド幅が狭いスクイーズの状態が続いていることを確認し、その後の値動きを待ちます。価格がバンドを突き抜け、バンド幅がエクスパンションする動きが見られたら、トレンド発生のサインです。さらに、ローソク足の実体が明確にバンドの外へ出たうえで、ミドルバンドが価格と同じ方向に傾き始めると、トレンドの信頼性が高まります。この状況でバンドウォークが発生している場合は、大きな値幅を狙うことも可能です。
逆張りで±2σ/3σから反発を狙う
逆張りは、相場の行き過ぎた動きからの反発を狙う手法です。以下のようにボリンジャーバンドの±2σ線を越える確率はおよそ4.6%、±3σ線を越える確率は1%にも満たないため「価格の水準がそれらの線に近づいた場合は、いずれ平均値のほうに戻ってくる可能性が高い」と予想できます。
| 価格 | 確率 |
|---|---|
| +1σ~−1σのライン内に収まる | 約68.26% |
| +2σ~−2σのライン内に収まる | 約95.44% |
| +3σ~−3σのライン内に収まる | 約99.73% |
価格はいずれミドルバンドの方向へ回帰する可能性が高いという前提に立ち、価格が±2σや±3σのラインに触れたタイミングで逆張りエントリーします。ただし、この手法は基本的に「レンジ相場」で有効な手法であり、強いトレンドが発生している場合には機能しにくい点に注意が必要です。エントリーの精度を高めるには、RSIなどのオシレーター系指標を併用し、相場の過熱感も合わせて判断するのが良いでしょう。
損切りと利確をバンドで設計する
ボリンジャーバンドは、エントリーのタイミングだけでなく、損切りや利益確定の目安としても活用できます。
損切りの目安は、取引手法によって異なります。順張りでエントリーした場合、トレンドの前提が崩れるミドルバンドを価格が反対方向に割り込んだ時点が一つの目安になるでしょう。一方、逆張りでエントリーしたにもかかわらず価格の下落が止まらず「バンドウォーク」が発生した場合や、直近の高値・安値を更新した場合は、予想が外れたと判断し損切りを検討します。
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利益確定の目安も同様です。順張りでエントリーした場合、価格が約95.44%の確率で±2σの範囲内に収まるという性質を考慮し、±2σラインに到達したタイミングで利確をするのが一般的です。一方逆張りの場合は、価格がミドルバンドへ回帰した時点が主な利益確定の目標となり、勢いがあれば反対側のバンド到達まで利益を伸ばす考え方もあります。
また、バンドの幅はリスクとリターンのバランスを考える上での参考になります。バンド幅が広い(ボラティリティが高い)時は、利確目標までの値幅が大きくなる一方、許容できる損失幅も広がります。反対に、バンド幅が狭い時は、小さな利益を狙い、損切りも浅く設定する必要があります。このようにバンド幅に応じてリスクリワード比(一度の取引における利益と損失の比率)を調整することで、安定したトレードを目指すことが可能です。
ボリンジャーバンドの設定
ボリンジャーバンドを効果的に活用するためには、取引スタイルや市場の特性に合わせて設定値を調整する必要があります。
期間・偏差・適用価格を決める
ボリンジャーバンドの設定項目は、主に「期間」「偏差」「適用価格」の3つです。
期間
ミドルバンド(移動平均線)や標準偏差を計算する対象となる期間です。一般的には「20」が標準設定として広く使われています。
偏差
ミドルバンドから上下のバンドをどれだけ離すかを決める数値(σの係数)です。標準設定は「2(±2σ)」です。統計学の正規分布を応用した考え方で、価格が+1σ~−1σのライン内に収まる確率は約68.3%、+2σ~−2σのライン内に収まる確率は約95.4%、+3σ~−3σのライン内に収まる確率は約99.7%とされています。「3(±3σ)」に変更した場合、価格がバンドに触れる頻度が減るため、実際に価格がバンドに触れた際には極めて強いトレンドが発生していると判断でき、より信頼性の高い順張りのシグナルとして機能します。
適用価格
計算の基準となる価格です。通常は「終値」が使われますが、「始値」「高値」「安値」などに変更することも可能です。
まずは標準設定である「期間20、偏差±2σ、適用価格は終値」を基準として使い、そこから自分の戦略に合わせて調整していくのが良いでしょう。
時間軸別で最適化する
ボリンジャーバンドは、取引を行う時間軸によっても適切な設定値は異なります。
取引スタイル別の期間設定の目安は、以下の通りです。
| 取引スタイル | 期間設定の目安 |
|---|---|
| スキャルピング(数秒~数分) | 5〜10 |
| デイトレード(数分~1日) | 20 |
| スイングトレード(数日~数週間) | 50〜200 |
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期間設定を短くすると値動きへの反応は早くなりますが、その分、一時的な動きにも反応してしまい「ダマシ」と呼ばれる誤ったシグナルが増える傾向があります。反対に、期間設定を長くすると、シグナルの発生頻度は減るものの、一度発生したトレンドの信頼性は高くなります。
分析に一貫性を持たせ、判断のブレをなくすためにも、自身の取引スタイルに合わせた時間軸と期間設定に固定して使い続けるのが良いでしょう。
市場別(FX・株)で調整する
ボリンジャーバンドは、取引する市場の特性に応じて設定を使い分けることで、分析の精度を一段と高められます。
例えば、24時間取引が行われるFX(為替)市場では、短期的な値動きを捉えやすい20期間前後の設定が機能しやすいといわれます。一方、東京証券取引所のように取引時間が定まっている株式市場は、寄り付き(取引開始時)と大引け(取引終了時)で株価の変動が大きくなるのが特徴です。そのため、日足や週足を基準にボリンジャーバンドを表示し、中長期的なトレンドを分析するケースが多く見られます。
ボリンジャーバンドの計算式
ボリンジャーバンドは、中心線となるミドルバンドと、その上下に位置するアッパーバンド、ロワーバンドで構成されます。それぞれの計算式は以下の通りです。
- ミドルバンド(中心線): N期間(一般的に20日)の単純移動平均線
- アッパーバンド(上限線): ミドルバンド +(k × 標準偏差)
- ロワーバンド(下限線): ミドルバンド ー(k × 標準偏差)
例えば、直近20日間の終値の平均(ミドルバンド)が150円、標準偏差が2円、係数k=2の場合、
アッパーバンド = 150円 +(2×2円)= 154円
ロワーバンド = 150円 −(2×2円)= 146円
このように、ボリンジャーバンドは価格のばらつきをもとに算出され、バンド幅(146〜154円)が広いほど値動きが大きいことを示します。逆に、バンド幅が狭いと市場の変動が小さい状態と判断できます。
標準偏差は、一定期間の価格データが平均値からどの程度ばらついているかを示す指標です。価格の変動が大きくなれば標準偏差も大きくなり、バンドの幅は広がります。逆に、価格の変動が小さくなれば標準偏差も小さくなり、バンドの幅は狭まります。
標準偏差に乗じる係数kは、通常2が設定されます。例えばk=2とした場合の計算式は以下の通りです。
アッパーバンド:20日移動平均+2×標準偏差
ロワーバンド:20日移動平均-2×標準偏差
ボリンジャーバンドとほかの指標との組み合わせ
ボリンジャーバンドは単体でも有効な指標ですが、ほかのテクニカル指標と組み合わせることで、分析の精度をさらに高めることが可能です。
RSIやMACDで判断精度を強化
ボリンジャーバンドを活用した投資判断の精度を高めるためには、ほかのテクニカル指標を活用するのが有効です。例えば「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」といった相場の過熱感を測ることができるRSIやRCIといったインジケーターと組み合わせる方法が考えられます。ボリンジャーバンドで価格が+2σに達し、かつRSIが買われすぎを示す70%以上のラインにある場合、下落に転じる可能性が高いと予測して逆張りでエントリーする、といった具合です。
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またトレンド系指標であるMACDとの組み合わせも有効です。MACDのゴールデンクロスやデッドクロスといったトレンド転換のサインと、ボリンジャーバンドのスクイーズからエクスパンションへの移行が同時に発生した場合、強いトレンドが発生する可能性を示唆します。この場合、順張りでエントリーすると利益を狙える可能性があります。
移動平均線や一目均衡表で相場環境を判定する
ボリンジャーバンドのミドルバンドに加えて、より長期の移動平均線(75期間など)をチャートに表示することで、短期的な方向性だけでなく、大局的なトレンドを把握できます。
一目均衡表の「雲」などを利用して、現在の相場がトレンド相場なのかレンジ相場なのかを判断するのも有効な手段です。価格(ローソク足)が雲の上にあれば上昇トレンド、雲の下にあれば下降トレンドと判断できます。価格が雲の中を推移している場合は、方向感に乏しいレンジ相場と考えられるでしょう。
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相場環境を正確に把握した上で、ボリンジャーバンドの順張り・逆張りの戦略を使い分けることで、分析の精度が向上します。
ケルトナーチャネルやエンベロープと使い分ける
ボリンジャーバンドと同様に、価格の上下にバンドを表示する指標として、ケルトナーチャネルやエンベロープがあります。
ケルトナーチャネルはATR(Average True Range)という指標を基に算出され、ボリンジャーバンドよりもノイズに強くトレンドフォローに有効とされています。エンベロープは移動平均線からの乖離率で描画されるシンプルな指標で、レンジ相場で逆張りを試みる際に活用しやすい指標です。
複数の指標とボリンジャーバンドを併用することで、ボラティリティの拡大や収縮を多角的な視点から判断できます。
ボリンジャーバンドを利用するときの注意点
ボリンジャーバンドは多くの投資家が活用している指標ですが、特徴を理解しないまま活用すると、思わぬ損失を被る可能性があります。
相場環境を判定して逆張り一辺倒を避ける
ボリンジャーバンドは「価格がバンドの外に出たら内側に戻りやすい」という性質から逆張りと相性の良い手法といわれることもあります。しかし、逆張りが有効なのは主にレンジ相場であり、強いトレンドが発生している相場で安易に逆張りを仕掛けると、大きな損失を被る可能性があります。
ミドルバンドの傾きやスクイーズの発生といったバンド自体の形状に着目する、RSIや一目均衡表などほかの指標を組み合わせる、といった方法で相場環境を判別した上で、トレンド相場では順張り、レンジ相場では逆張り、と戦略を使い分けるのがポイントです。
時間軸と設定値の整合をとって判断する
ボリンジャーバンドを活用する際は、期間設定を取引する時間軸に合わせましょう。取引の時間軸と設定が合っていないと、分析の精度が下がる可能性があります。例えば、スキャルピングのような短期売買では5~20期間、スイングトレードのような長期売買では50~200期間を目安に設定するのが一般的です。
設定とあわせて、ミドルバンドの傾きや、ローソク足の位置関係から相場状況を読み解く習慣をつけましょう。ミドルバンドが右肩上がりなら上昇トレンド、右肩下がりなら下降トレンド、水平ならレンジ相場と判断でき、傾きが急であるほどトレンドの勢いが強いことを示します。
その上でローソク足の位置を確認し、上側バンドに沿って動いていれば強い上昇トレンド(バンドウォーク)、下側バンドに沿っていれば強い下降トレンドと判断できます。価格がミドルバンド付近へ戻ってきた場合は、トレンド転換や一時的な押し目・戻りの可能性を探る目安となるでしょう。
ニュースや出来高、流動性を確認してダマシを減らす
重要な経済指標の発表や決算発表といったイベント時には、価格が急変動し、ボリンジャーバンドの示すシグナルが機能しにくくなる場合があります。また、取引参加者が少なく出来高が少ない時間帯は、一時的な値動きでバンドを突き抜けるといった「ダマシ」の動きが多くなる傾向があります。
そのため、ボリンジャーバンドは流動性の高い銘柄・通貨ペアの取引や、取引が活発な時間帯に活用するのが望ましいでしょう。
ボリンジャーバンドを使いこなし取引精度を高めよう
ボリンジャーバンドは、統計学の考え方に基づいて開発されたテクニカル指標です。標準偏差を用いることで相場のボラティリティを把握し、トレンドの発生や転換点などを視覚的に捉えるのに役立ちます。
ただし、ボリンジャーバンドだけで常に正確な判断ができるわけではありません。安易に順張り・逆張りと決めつけてエントリーするのではなく、ほかの指標と組み合わせたり、現在の相場環境を正しく認識したりすることで、ボリンジャーバンドは真価を発揮します。
まずは自身のチャートにボリンジャーバンドを表示させ、実際の値動きとバンドがどのように連動するのかを観察することから始めてみてください。
<監修者>
木村佳子
<プロフィール>
一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube 「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。