スワップポイントとは?仕組みや計算方法、メリットデメリット、運用のポイントをわかりやすく解説

2022/8/12
2025/7/29(更新)

FXは、為替相場を予測しながら、異なる国の通貨を売買することにより利益を狙う取引ですが、通貨の売買以外にも利益を得る方法があります。それが「スワップポイント」です。スワップポイントについて理解すると、デイトレードなど短期的な投資の手段だけではないFXの活用方法が見えてくることでしょう。

本記事ではスワップポイントが発生する仕組みや計算方法、スワップポイント狙いで運用するときのポイントなどを解説します。

そもそもFXとは?という方はこちらをご覧ください

FXのスワップポイントとは?

上昇するチャートを見つめる男性

スワップポイントとは、異なる通貨間の金利差によって発生する金利調整分で、FX取引でポジションを翌日に持ち越す際に受け取るか支払う金額です。通貨ペアと金利差により変動します。

通貨の売買をするときには、売った外貨の金利を支払い、買った外貨の金利を受け取ります。通貨ごとに金利が異なるため、金利に差分が発生することがあります。

スワップポイントを理解するためには、外貨預金をイメージしてみるとわかりやすいでしょう。例えば、日本円(JPY)よりも米ドル(USD)の金利が高いとき、米ドルで預金をして金利を得た後に、円に払い戻すことで、結果的に低金利の日本円で預金をしていた場合よりも高い金利を得ることができます。

※上記はイメージ図であり、実際の金利水準とは異なります。

低金利の通貨を売って、高金利の通貨を買うと、金利差分の利益を得る、つまりスワップポイントを受け取ることになります。反対に、低金利の通貨を買って、高金利の通貨を売ると、金利差分の損失が発生し、すなわちスワップポイントを支払うことになります。

FX会社によってスワップポイントは異なる

スワップポイントの水準は、同じ通貨ペアでもFX会社によって異なります。

FXサービスを提供する会社は、提携している複数の金融機関(カバー先)からスワップポイントの提示を受け、それをもとに顧客に提示しています。カバー先金融機関は会社によって異なるため、スワップポイントの水準が異なるのです。

スワップポイントはいつ発生する?

スワップポイントは、FXで保有しているポジションを翌営業日に持ち越す(ロールオーバーする)時に発生します。一般的には、ニューヨーク市場のクローズ時間(日本時間午前7時。サマータイム適用時は午前6時)を基準として、この時間を超えてポジションを保有しているとスワップポイントが付与される仕組みになっています。

また、週末分のスワップポイントは、通常、水曜日のロールオーバー時に3日分まとめて付与されることが多くなっています。ただし、FX会社によっては付与日が異なる場合があるため、取引を始める前に各社のスワップポイントカレンダーなどで確認しておきましょう。

【関連リンク】FXマーケット情報 スワップポイント一覧

スワップポイントの計算方法

1日あたりのスワップポイントは以下の計算式で算出できます。

スワップポイント=「保有数量×金利差÷365×為替レート」

例えば、米ドル/円を1万通貨(1万ドル)保有し、米ドルと円の金利差が4.0%、為替レートが1米ドル=140円のケースにおける、1日あたりのスワップポイントの計算方法は以下の通りです。

10,000ドル×0.04(4.0%)÷365日×140円=約153円/日

実際には、FX会社によって計算基準や適用金利が異なるため、注意が必要です。取引通貨がクロス円(例:米ドル/円、ユーロ/円など)か、外貨同士の通貨ペア(例:ユーロ/米ドル、ポンド/米ドルなど)かなどによって、円換算の方法が異なる場合もあるため、詳細なスワップポイントは各社のWEBサイトで確認しましょう。

松井証券で取引する場合のスワップポイントは、以下のシミュレーションで確認できます。

【関連リンク】スワップポイントシミュレーション | 取引から得られるスワップや利回りを確認!

スワップポイントの高い通貨ペア

取引する通貨ペアによって金利差に違いがあるため、得られる(支払う)スワップポイントも異なります。一般的にスワップポイントが高い通貨ペアは、トルコやメキシコ、南アフリカといった政策金利の高い新興国の通貨と日本円の組み合わせです。日本の政策金利は0.50%(2025年7月16日時点)となっているため、これらの通貨と日本円の通貨ペアにおいては、スワップポイントが高くなると考えられます。

通貨 政策金利
トルコ(リラ) 46.00%
メキシコ(ペソ) 8.00%
南アフリカ(ランド) 7.25%

出所:松井証券マーケットラボ(2025年7月16日時点)

スワップポイントは各国の金利情勢により変動します。松井証券 FXでは、これまでに付与されたスワップポイントの履歴を確認することが可能です。

【関連リンク】FXマーケット情報 スワップポイントカレンダー

FXでスワップポイントを狙うメリット

チャートを見て何かを発見した男性

通貨ペアの金利差がプラスになっていれば、ポジションを持ち続けるだけでほぼ毎営業日利益を得られるのがスワップポイントを狙うメリットです。

例えば、松井証券では米ドル/円において、1万通貨を買うと157円のスワップポイントが受け取れます。反対に、1万通貨を売ると197円のスワップポイントを支払うことになります(2025年7月15日時点)。

通貨の売買で利益を得るためには、為替相場を予測し、通貨が安い時に買いポジションを建てて価格が上がったタイミングで決済する、あるいは通貨が高い時に売りポジションを建てて、価格が下がったタイミングで決済する必要があります。

しかし、仮に金利差がプラスのままであれば、スワップポイントが得られるため、売買を頻繁に行わなくても継続的に利益を蓄積していくことができます。

ポジションとは、新規で「買い」または「売り」の注文をしたあと、決済せずに保有している状態のことを指します。ポジションを持ち続けている場合、為替の変動によって損失が生じる場合があります。

なお、松井証券の場合、スワップポイントはポジションを決済する際に、ポジションを保有していた期間のスワップポイントを精算するか、ポジションは決済せずにスワップポイントのみを現金化することができます。

スワップポイントと精算方法(Q&A)

スワップポイントのデメリットは?

スワップポイントは、保有するポジション(買いまたは売り)と通貨ペア間の金利差によって決まります。例えば、高金利通貨を買い、低金利通貨を売るポジションではプラススワップが発生しますが、逆の場合はマイナススワップとなります。

ポジションを保有し始めた当初はスワップポイントがプラスだったとしても、経済情勢や金融政策の方針次第では金利差が縮小し、スワップポイントがマイナスに転じることもあります。スワップポイントは日々変動しているため、こまめにチェックすることが大切です。

スワップポイントは取引日のニューヨーク市場のクローズ時間を基準として、翌取引日に持ち越した建玉に対して発生します。スキャルピングやデイトレードのような取引手法では、原則として当日中に決済することになるため、スワップポイントが付与されないという点にも注意しましょう。

【関連リンク】FXのデイトレードとは?短期間で売買するメリットや注意点を解説! 【関連リンク】FXのスキャルピングとは?特徴や注意点、初心者向けではない理由

なお、スワップポイントは為替差益と同様に課税対象となります。課税対象となるタイミングは、基本的にはスワップポイントを実際に受け取った時点です。ポジションを決済する際にスワップポイントを精算する場合には、スワップポイント単体に課税されるわけではなく、スワップポイントと為替差益の合計から必要経費を引いた、取引したポジションから得られた利益全体に対して課税されるという点は覚えておきましょう。

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スワップポイント狙いの運用のポイント

FXでスワップポイント狙いの運用を成功させるために、以下のポイントを押さえておきましょう。

貯金箱に乗る男性達

スプレッドが狭い通貨ペアを選ぶ

スプレッドとは、通貨の買値と売値の差のことで、スプレッドが狭いほど取引にかかる費用を抑えられます。スワップポイントを目的とした長期保有の場合でも、取引開始時と終了時にはスプレッドが発生するため、利益を目減りさせないためにもスプレッドが狭い通貨ペアを選ぶことが大切です。

一般的に、米ドル/円やユーロ/米ドルといった主要な通貨ペアはスプレッドが狭く、新興国の通貨ペアなどはスプレッドが広くなりがちです。スプレッドはFX会社や時間帯によって変わるため、取引を始める前に各社のスプレッド情報を確認しましょう。

【関連リンク】FXのスプレッドとは?取引手数料の決まり方やコストの計算方法

スワップポイントが高く安定している通貨ペアを選ぶ

スワップポイントを狙うなら、スワップポイントが高く、かつ安定している通貨ペアを選びましょう。例えば、ランド/円やトルコリラ/円、メキシコペソ/円といった新興国の通貨ペアは、スワップポイントが高い傾向にあります。

しかし、金利が高い通貨は、為替レートが大きく変動するリスクも少なくありません。その通貨の為替レートが安定しているか、過去の動きなどを確認し、スワップポイントの安定性と為替リスクのバランスを考えて通貨ペアを選びましょう。

【関連リンク】南アフリカランド/円 【関連リンク】トルコリラ/円 【関連リンク】メキシコペソ/円

経済指標や政策金利の動向を定期的に確認する

経済指標や政策金利の発表は為替レートやスワップポイントに大きな影響を与える可能性があるため、定期的にチェックしましょう。

米国雇用統計、消費者物価指数(CPI)、GDPなどの主な経済指標は、その国の経済状況を表すもので、発表内容によっては為替レートが大きく動く可能性があります。

また、各国の中央銀行が発表する政策金利の変更は、金利差に直接影響するため、為替レートだけでなく、スワップポイントにも大きな影響を与えます。

経済指標カレンダーなどを活用し、発表のスケジュールや予想、そして結果を把握するようにしましょう。

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レバレッジを抑えてロスカットリスクを避ける

スワップポイントを多く得るために高いレバレッジで取引をすると、大きな利益を狙える一方で、損失が拡大するリスクもあります。さらに証拠金維持率が一定水準を下回ると、強制的にポジションが決済されるロスカットが実行され、それ以降のスワップポイントは得られません。場合によっては、為替差損が獲得したスワップポイントを上回るケースもあるでしょう。

スワップポイントを狙う場合は、なるべく証拠金に余裕を持たせ、レバレッジを抑えた運用をすることが大切です。また、損失額が必要以上に拡大しないよう、適切なラインで損切りをすることも心がけましょう。

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スワップポイントに関するよくある質問

スワップポイントに関して、多くの人が疑問を感じやすい点をまとめました。スワップポイントについての理解を深めて、実際の取引に臨みましょう。

スワップポイントは課税対象になる?

スワップポイントは、実際に受け取ったタイミングで課税対象となります。ポジションを決済する際にスワップポイントを精算する場合、ポジションを保有している間は「含み益」にあたるため、課税されません。

決済して口座に反映された時点で、「雑所得」として申告分離課税の対象になり、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計で20.315%が課税されます。

なお、会社員の場合、スワップポイントや為替差益を合わせた年間の利益が20万円を超えると確定申告が必要になります。利益が20万円以下で「年収が2,000万円以下」「給与を1か所から受けており、その給与の全部が源泉徴収の対象となっている」などの条件を満たせば申告不要となるケースもあります。

【関連リンク】FXの税制・確定申告

スワップポイント狙いの運用はおすすめしないと言われる理由は?

スワップポイントを狙える高金利の通貨は為替変動が大きく、スワップポイント以上の損失を出すリスクがあるため「スワップ狙いの運用はおすすめしない」と言われることがあります。

新興国通貨など、スワップポイントが高い通貨ペアは先進国通貨に比べて為替レートの変動幅が大きい傾向があります。スワップポイントをコツコツと積み上げても、一度の急落でスワップポイント以上の為替差損が発生し、トータルで大きな損失を被る可能性があるのです。

また、スワップポイントは日々変動するため、期待通りの利益が得られない場合があることも「おすすめしない」という意見が生まれる理由の一つになっています。

さらにスワップポイントを最大化しようと高レバレッジで取引すると、少しの含み損でも証拠金維持率が低下し、ロスカットが実行される可能性が高くなります。ロスカットによって意図しないタイミングで決済が行われると、スワップポイントを積み上げられなくなってしまいます。

FXのスワップポイントだけで生活できる?

FXのスワップポイントだけで生活することは、理論上は不可能ではありませんが、現実的には難しいと言えます。

必要な生活費の金額にもよりますが、それを賄うには、為替変動によるリスクを極力避けつつ多額の資金を低レバレッジで運用し、安定的に高額のスワップポイントを受け取り続ける必要があります。しかし、為替相場は常に変動し、スワップポイント自体も各国の金利政策によって変動しますので、常に一定の収入を確保することは困難です。

スワップポイントはFXから得られる利益の一部として捉え、ほかの収入源と組み合わせて生活するのが現実的かもしれません。

スワップポイントを狙う場合にはリスク管理にも目を向けよう

スワップポイントを狙った取引では、頻繁に通貨の売買をしなくても、着実に利益を積み重ねられる可能性があります。スワップポイント狙いという観点では細かくチャートを分析する必要がないため、FXの取引経験が少ない場合でも、比較的取り組みやすい取引手法といえるでしょう。

しかし、スワップポイントの高い通貨ペアに投資すると、為替変動の影響を大きく受ける可能性もあります。取引する通貨ペアの選定、レバレッジやロスカットなどに注意を払いながら取引をすることが重要です。

<監修者>

川口一晃

<プロフィール>

1986年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)や三洋投信で11年間ファンドマネージャーを務める。2004年10月に独立してオフィスKAZ代表取締役に就任。テレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。現在、FMナック5「お金の世界の歩き方」でパーソナリティを務める。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。著書も多数。また、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。

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