ナンピン買いとは?メリットやデメリット、活用場面を解説
相場の変動に一喜一憂し、株価が下がると不安になる人も少なくありません。そんな悩みの解決策として注目されているのが「ナンピン買い」という投資手法です。
本記事では、ナンピン買いの基本的な意味から、そのメリット・デメリット、効果的な活用場面まで、わかりやすく解説していきます。
ナンピン買いとは?
ナンピン買いとは、株価が下落した際に追加投資をして平均取得単価を引き下げる手法のことです。初心者には難しく感じられるかもしれませんが、投資における損失を抑えたり、回復時のリターンを狙えたりする可能性があります。投資金額を細分化して購入するドルコスト平均法とは異なり、下落タイミングを狙って積極的に買い増しを行う点が特徴です。
ナンピン買いは相場環境によっては高い効果を期待できますが、当然ながらリスクも伴います。特に相場全体が長期的に下落局面に入っているときや、企業の業績が悪化しており株価の下げ止まりが見えない場合には逆効果となる可能性もあります。ナンピン買いを行う前には、リスクを正確に把握し、自身の資金や運用スタンスに見合った判断を下すことが求められます。
なお、投資信託やFXにおいてもナンピン買いという言葉が使われることがありますが、どちらも平均取得単価を下げるためのトレードを意味します。
ナンピン買いを行ったときの平均取得単価の計算方法は以下のようになります。
■ {(保有株式の平均取得単価×株数)+(買い増す株式の取得単価×株数)}÷合計株数
具体例を見てみましょう。
A銘柄を取得単価1,000円で1,000株保有している状態から、A銘柄が800円に値下がりしたタイミングで1,000株ナンピン買いを行った場合、以下の計算式によって平均取得単価が900円となります。
{(1,000円×1,000株) + (800円×1,000株)} ÷ (1,000株+1,000株)
=1,800,000円 ÷ 2,000株
=900円

ナンピン買いが生まれた背景と由来
ナンピン買いという言葉は、もともと「難平」という表記が当てられることもあり、下落時の損失を平均化する意味合いを持ちます。古くから株式商いの現場で用いられてきた手法であり、相場が下落した際に買い増しを行い、反発時にトータルでの損失を減らそうとする考え方が背景にあります。
過去の相場において、一時的に大きく株価が落ちた後の急反発をうまく捉えた投資家たちが効果を実感し、徐々に定着していきました。
ナンピン買いとドルコスト平均法の違い
ドルコスト平均法は、一定の日時や一定の金額で定期的に投資を続け、長期的にリスクを平準化する方法です。一方、ナンピン買いは株価が下落したタイミングで買い増しを行う点が特徴であり、不規則な売買となりやすい側面があります。
そのためナンピン買いには、相場状況を見極める力や素早い判断が必要であり、感情的に焦って買い向かった場合は損失を拡大させるリスクも高まります。
ナンピン買いと押し目買いの違い
押し目買いは継続的に株価が上昇傾向にある相場(上昇トレンド)において、株価が一時的に下がったときに買い注文を行うことを指します。両者とも株価の下落局面で購入するという点では似ていますが、その目的や前提条件、判断基準が異なります。
ナンピン買い | 押し目買い | |
---|---|---|
目的 | 平均取得単価を下げること | 上昇相場の中で相対的に安い価格で購入すること |
タイミング | 保有株の価格が下落したとき | 上昇トレンドの中で一時的に価格が下落したとき |
前提条件 | 既に保有している銘柄を追加で購入する場合 | 新規購入も保有銘柄を追加購入する場合も該当 |
リスク | 更なる株価下落により損失拡大がより広がる可能性がある | 押し目と判断したポイントの後に値上がりしない可能性がある |
ナンピン買いのメリットとデメリット
ナンピン買いには値上がり時の利益拡大という大きなメリットがある一方、デメリットもあり、両面を正しく理解する必要があります。
メリット
平均取得単価を下げる効果
ナンピン買いによって、株価の下落時に保有する株を買い増すことで、全体の平均取得単価を下げることができます。これにより、株価が上昇に転じた際には、ナンピン買いを行う前よりも保有株数が増えているため、より大きな利益を期待できます。
また、元々含み損があった場合に、ナンピン買いを行って株価が上昇した場合は、含み損が解消し同値撤退や含み益に変わるハードルが下がります。
平均取得単価について教えてください。(Q&A)
デメリット
リスクと損失拡大の可能性
ナンピン買いを行った後に、期待に反して株価の下落が一時的でなく長期間続いた場合、ナンピン買いを繰り返すほど保有株数が増え、大きな損失につながる危険があります。業績不振や市場全体の深刻な下落局面でナンピン買いを無理に行うことはリスクを伴います。
また、ナンピン買いにこだわるあまりに特定の銘柄の取引に資金を集中させることも、株価の下落に伴う損失リスクを大きくすることに繋がります。安易に「いつか戻るだろう」という思い込みで行動するのではなく、冷静にリスクを見極めた上で判断することが重要です。
ナンピン買いを活用する場面
ナンピン買いが効果を発揮するためには、下落が一時的であるという見通しを立てられることが大前提となりますが、どのような状況でナンピン買いを活用できるか、判断材料とともに見ていきます。
相場の下落要因が明確な場合
相場が悪材料で急落している場合、その原因が特定のイベントや一時的トラブルであることが明確であると考えられる場合は、回復の時期をイメージしやすくなります。たとえば経済政策の変化による短期的な混乱や、企業の一時的な損失の発表や不祥事による売りが主体の局面など、根本的な企業価値や経済の基盤が揺らいでいない場合は、ナンピン買いが功を奏する可能性があります。
長期投資で一時的な下落を狙う場合
短期的な保有ではなく、中長期で保有することを目的としている場合には、短期的な値下がりを「買い増しのチャンス」と捉えてナンピン買いを行うことが考えられます。成長企業や安定的な業績を持つ企業など、下落を一時的なものと考え、長期的に株価の回復や上昇を期待できる場合には、一般的な買い時よりも割安なタイミングで追加投資を行うことで平均取得単価を引き下げ、利益の拡大を狙うことができます。
ナンピン買いの注意点とリスク管理
ナンピン買いを実践するには、自身の投資戦略や資金管理をあらかじめ考慮することが欠かせません。
リスクを抑えるためには、ナンピン買いに割く資金とタイミングをきちんと計画しておく必要があります。相場状況を冷静に見極められなかったり、一度に大きく買い増ししてしまったりすると、思わぬ損失を抱える可能性が高まるからです。
また、ナンピン買い自体はあくまで1つの手法であるため、相場動向や投資目的を踏まえて臨機応変に判断する姿勢が求められます。いざ実行する前に、失敗した場合の損切りラインを明確にしておくことが、損失を最小限に抑える鍵となります。
資金配分と損切りラインの設定
ナンピン買いを実践する際には、資金のどれだけをナンピン用に確保するかをあらかじめ決めておき、株価が一定の水準まで下落したら損切りをするなど明確なルールを作ることが有効です。損失が一定額に達したら素早く撤退することで、無尽蔵に損失を積み上げる事態を回避できます。
投資の目的と時間軸を明確にする
短期売買で素早く利幅を狙いたいのか、長期保有を想定してじっくり価格回復を待ちたいのかによって、ナンピン買いの有効性やリスクは大きく変わります。投資期間を明確にしたうえで、株価の大きな変動にも耐えられるだけの余力があるかを検討し、リスクをコントロールすることが重要です。
ナンピン買いはリスク管理を徹底したうえで行おう
ナンピン買いは、下落局面を逆手にとって平均取得単価を下げられる可能性がありますが、その分リスク管理をおろそかにすると大きな損失を招きかねません。相場の下落要因が明確であり、回復が期待できるシナリオを描ける場合に有効と考えられる手段です。
ナンピン買いを活用するには、投資期間は短期か長期か、どのくらいの資金を投じるのか、損切りラインはどこに設定するのかなど、投資の目的に応じて事前に戦略を決めておくことも大切です。ナンピン買いの特性をきちんと把握し、自身の投資戦略と相場の状況に応じてトレードに活用してください。
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