ROA(総資産利益率)とは?計算方法やROEとの違い

2024/6/28

企業の業績や財務状態は株価に大きな影響を及ぼすとされています。企業の財務状態を把握する際に役立つ指標の一つがROAです。投資を始めたばかりの人にとっては聞き馴染みがない言葉かもしれませんが、具体的に何を指すのでしょうか。

本記事ではROAの計算方法やROAを経営分析に用いる際の注意点を解説します。正しい計算方法を理解することで、企業のパフォーマンスをより正確に評価できるようになるでしょう。

ROAの概要

ROAとは企業の収益性を図る指標です。ROAの分析にはどのような意味があるのか、具体的にみていきましょう。

ROAとは?

ROAとは、企業が総資産に対してどのくらいの利益を生み出せているかを示すものです。「Return On Assets」の略で、総資産利益率と呼ばれることもあります。ROAが高ければ高いほど、持てる資産全てを効率的に利用して利益を生んでいると判断できます。

なお、総資産とは企業が保有する資産の合計であり、現金や預金だけではなく、売掛金や有価証券、機械設備、不動産なども含みます。

ROAからわかること

ROAは総資産に対する利益の比率を表しており、推移を見ることで、企業の成長につながる投資ができているかの評価が可能です。

例えば、ROAが高い企業は、成果が上がる最新の生産設備やIT技術を導入することで、製品の品質向上や生産コストの削減が実現できているなど、必要な投資が功を奏している、投入する資産と生み出す利益のバランスがコントロール出来ているということが考えられます。

ROA(総資産利益率)の計算方法

ROAの正しい計算式を知らなければ、誤った結論を導いてしまうこともあるかもしれません。具体的な計算方法や、優良企業として認められる目安について解説します。

ROA(総資産利益率)を求める計算式

ROAは「当期純利益÷総資産×100」で求められます。当期純利益とは、企業が事業活動で得た利益から本業以外の営業活動や臨時で生じた損失、法人税などを差し引いて、最終的に企業に残った利益のことです。

ROAの計算式の要素を分解すると「売上高純利益率×総資産回転率」で求めることもできます。売上高純利益率とは、売上高に対する当期純利益の割合(当期純利益÷売上高)を示したもので、企業の収益性を測ることができます。一方、総資産回転率とは、総資産がどれだけ効率的に売り上げを生み出したか(売上高÷総資産)を表す指標です。売上高純利益率または総資産回転率が高くなるほどROAも高くなります。

ROA(総資産利益率)の目安は?

一般的に、ROAが5%以上であれば優良企業とされています。しかし、業種や企業を取り巻く環境、総資本の規模などによって、目安となる数値に違いが出ることがあります。

例えば、製造業では工場など設備投資が多く、総資産が大きくなるためROAが低くなる傾向がありますが、IT企業などではROAが高くなる傾向があります。また、ROAがマイナスの場合は、企業が赤字経営であることを示しています。

ROEとROAとの違いは?

ROAとよく似た指標であるROEにはどのような違いがあるのでしょうか。仕組みを理解し、うまく使い分けられるようにしましょう。

ROEとは

ROEとは、「Return On Equity」の略で、自己資本利益率のことです。この指標は、企業が自己資本を使ってどのくらい効率的に利益を生み出せているかを示しています。自己資本とは、株主からの出資や企業の内部留保(これまでに得た利益の蓄積)を含む資本であり、企業が返済の義務を負わない資金のことです。

ROAとROEの違い

ROAとROEの違いは、計算の基準となる資産の条件にあります。ROA(総資産利益率)は、自己資本か他人資本かに関わらず、すべての資産を合計した総資産で計算される指標です。

一方、ROE(自己資本利益率)は、企業の資産のうち負債を除いた自己資本がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを測る指標です。

例えば、以下のようには負債額が異なりますが自己資本と当期純利益が同じ企業があったとしましょう。
A社:総資産50億円(自己資本10億円、負債40億円)、当期純利益2億円
B社:総資産20億円(自己資本10億円、負債10億円)、当期純利益2億円

A社のROEは2億円÷10億円×100=20%、ROAは2億円÷50億円×100=4%です。
B社のROEは2億円÷10億円×100=20%、ROAは2億円÷20億円×100=10%です。

ROEの観点では同率ですが、ROAの観点でB社の方が優れていると考えることができます。

それぞれの指標を理解し、状況に応じて使い分けることが重要です。ROEが高くROAが低い場合は、企業が多くの負債を抱えている可能性がありますし、ROAとROEが同程度の場合は、自己資本の範囲内でしか事業拡大をしておらず、大きな成長に期待しにくい場合もあります。

これらの指標の違いを理解し分析に用いることで、企業の経営状況をより正確に評価できるようになるでしょう。

ROAを計算して分析する際の注意点

ROA(総資産利益率)は企業のパフォーマンスを評価する上で便利な指標ですが、正確な分析をするためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。

異業種間の比較には向かない

ROAを用いた分析は異業種間の比較には向いていません。その理由は、ROAの数値が業種や企業形態によって大きく異なるためです。

例えば、運送業や小売業など、事業を拡大するために車両や店舗など大規模な設備投資が必要になる業種の場合は、総資産が大きくなるため、ROAが悪化しやすくなります。しかし、これは将来の利益を生み出すために必要な先行投資にあたるため、ROAが低いからといって、経営状態に懸念がある状況とは言い切れません。

そのため、ROAを用いて分析をする際は、同業他社と比較する必要があります。

安全性の分析も行う

ROAは利益と総資産の関係を示す指標ですが、数値だけでは企業の全体像を把握できません。企業が高いROAを示していても、借入金が多すぎる場合は、長期的な経営の持続可能性に問題が生じる可能性があります。

例えば、総資産1億円に対して当期純利益が1,000万円のA社(ROAは10%)と総資産1億円に対して純利益が500万円のB社(ROAは5%)がある場合、ROAの観点だけで見ればB社の方が経営効率のよい企業に見えます。しかし、A社は総資産の70%(7,000万円)の借入金があるのに対し、B社は無借金経営をしている場合、B社の方が財務上の健全性が高く、長期的に見れば安心して投資できる企業と判断できるかもしれません。

そのため、ROAの分析に加えて、自己資本に対する借入金の割合なども確認し、総合的な評価を行うことが重要です。

企業の収益性を見極めるのに役立つROAの計算式を覚えておこう

ROA(総資産利益率)は、「当期純利益 ÷ 総資産 × 100」で求められます。一般的に5%以上であれば、資産を効率的に利用して利益を生んでいる優良企業とされていますが、業種によっても目安は異なります。

また、ROAだけでは企業の成長性や安全性を正確に評価できない部分もあるため、ROEを用いた分析や、借入比率の確認なども忘れずに行いましょう。

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