自己融資と逆日歩
制度信用取引(貸借銘柄の信用取引)において、証券会社は自社内における同一銘柄の買建株数と売建株数を差し引きし、必要に応じて証券金融会社に融資もしくは株式の貸出を申し込みます。
通常の相場では信用買い(買建)を選ぶ投資家のほうが多く、株式の貸出よりも資金貸出の需要が中心となってきます。証券会社は資金繰りに余裕があれば証券金融会社に頼らず、買建の注文を出した投資家たちに自らが融資を行います。こうして、証券会社自らが資金を貸し出すのが自己融資です。
これに対し、相場の情勢によっては売建のほうが多くなる局面もあり、そのような場合に証券会社は証券金融会社に株式の貸出を申し込むケースがほとんどです。特定の銘柄を社内で自己保有する量にはおのずと限度があるからです。
そのため、信用取引全体では買建のほうが多くなっているにもかかわらず、証券金融会社への申し込みは株式の貸出のほうが大勢を占めているという現象になります。その結果、売建の注文すべてには対応できなくなる株式不足が発生することがあります。
そうなると、機関投資家などから株式を調達してくる必要が生じ、相応のコストもかかってきます。このコストが逆日歩(品貸料)と呼ばれるものです。
逆日歩は株式不足に陥った銘柄を信用売りしているすべての投資家から徴収される一方、信用買いしているすべての投資家に支払われます。
逆日歩の料率は株式不足となった都度、日々入札によって決まります。信用売りをしていた投資家は、決済時に新規建の受渡日から返済の受渡日の前日までの累計額を支払うことになります。
この負担は、意外と軽視できないものとなりがちです。たとえば逆日歩が1日1円だった場合、1,000株につき1,000円の負担が発生することになり、取引が行われていない土、日、祝日も例外とはなりません。
当然ながら、売建の株数が多ければ負担は重く、1万株なら1日1万円ものコストとなってしまいます。売買手数料や税金と比べても高額で、信用売りを行う際には注意すべきポイントと言えます。