営業利益とは?経常利益との違いや計算方法、投資判断での活用法を解説

2025/7/29

企業分析を進める中で「営業利益」という言葉を目にする機会は多いでしょう。しかし、投資初心者にとっては正確な意味や使い方はわかりづらいものです。

営業利益は、企業の収益力や経営の安定性を測る上で欠かせない財務指標の一つで、多くの投資家が投資判断の材料にしています。

本記事では、営業利益の基本的な定義から計算方法、投資での具体的な活用ポイントまでをわかりやすく解説します。

営業利益とは?

営業利益は、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いたものです。企業本来の「稼ぐ力」を評価する指標として投資家から注目されています。

経常利益や純利益との違い

営業利益は本業の収益力を示す指標であり、売上高から売上原価と販売費および一般管理費(販管費)を差し引いて算出されます。金融収支や特別損益の影響を受けないため、企業の継続的な事業活動の健全性を把握することが可能です。

一方、経常利益は営業利益に営業外収益(株式の売却益や不動産収入など)を加え、営業外費用(株式の売却損や支払利息など)を差し引いたもので、企業の総合的な収益力を示す指標です。

そして純利益は、経常利益に「特別損益」と呼ばれる臨時に発生した収益を加減し、法人税・住民税等を差し引いた最終的な利益で、株主への配当や役員報酬などの原資となります。

営業利益の計算方法

営業利益はシンプルな計算式で求めることが可能で、会社の決算資料や株価情報を提供するWEBサイト、証券会社のサイト等で確認することができますが、企業の経営効率や収益構造を読み解くうえで欠かせない指標です。

計算式

営業利益は「売上高-売上原価-販管費」で算出できます。

売上原価には、商品の仕入れ費用や製造にかかる材料費などの費用、販管費には人件費や広告宣伝費、オフィス賃料などの費用が含まれます。営業利益を伸ばすためには、これらのコストを効率よく管理することが重要です。

IR資料での営業利益の探し方・読み解き方

営業利益は、企業のIR資料に含まれる「損益計算書(PL)」で確認可能です。

損益計算書では「売上総利益」から「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いた項目として記載されており、営業活動の成果を一目で把握できます。

また、企業の決算説明資料などでは、営業利益の増減要因や今後の見通しについても言及されることが多いため、収益構造の分析に役立ちます。前年同期比や四半期ごとの推移にも注目すると、企業の成長性や経営の安定性を把握しやすくなるでしょう。

営業利益率の目安

営業利益率は「営業利益÷売上高×100」で求めることが可能です。一般的に5%程度を目指すのが良いとされており、経済産業省の2024年の調査速報でも、調査企業全体の営業利益率の平均は4.8%となっており、営業利益率の水準は以下を目安にすると良いでしょう。

営業利益率の目安

営業利益率 判断基準
0%以下 危険
0~5%以下 危険
5~10%以下 優良
10~15%以下 超優良
15%以上 要確認

0%以下

営業利益率が0%以下は赤字状態で事業継続が危険な水準です。未改善のままの場合、資金が枯渇し倒産リスクが高まるため、早急な費用見直しと収益改善策が必要となります。

0~5%以下

営業利益率0~5%以下は標準的な水準とされ、多くの業界で平均的な値です。経済産業省の調査では製造業で約5.3%、小売業で約3.9%と報告されています。業務効率化やコスト削減などによって改善の余地がある状態とも言えるでしょう。

5~10%以下

営業利益率5~10%以下は優良企業と評価される利益率の水準です。IT・情報関連業では平均8~9%程度と高水準で、安定した財務体質で投資家にも好評価されやすい傾向にあります。

10~15%以下

営業利益率10~15%以下はとても優良な水準で、収益性の高さを示します。出版業やインターネット関連サービスで実現可能な高収益率であり、付加価値の高いビジネスモデルを構築している証拠と言えるでしょう。

15%以上

営業利益率15%以上は一見良好に見えるものの、過剰な利益体質になっていないか、注意が必要な水準です。収益が上がっている背景として、事業への投資額が少ない事や、社員の負担増や顧客対応の質の低下などが見られる場合は、長期的には収益が落ち込む可能性もあります。

ただし、以下のように業界によっても営業利益率の適正な水準は異なります。 同業他社や業界平均と比較することで、利益率が高いか低いかを判断するとよいでしょう。

業種別営業利益率の目安
業種 営業利益率
製造業 5.3%
卸売業 3.2%
小売業 3.9%
電気・ガス業 6.1%
情報通信業 8.4%

参考: 2024年経済産業省企業活動基本調査速報(2023年度実績)調査結果の概要

投資に営業利益を活用するポイント

営業利益は企業の本業の収益力を示す指標であるため、営業利益が安定して高い企業は、景気の変動にも強く、収益基盤が安定していると判断できます。営業利益の成長率を継続的に分析することで、将来にわたる収益の伸びや事業の拡大余地を評価することも可能です。

また、営業利益率やROA(総資産利益率)などの指標を見ることで、効率的な経営が行われているか判断する方法もあります。ROAとは企業の総資産に対してどのくらいの利益を生み出せているかを表した指標で、高いほど企業が保有する資産を効率的に活用できていると判断できます。

これらの指標を業界平均や同業他社と比較することで、企業の競争力や市場での位置付けを評価しやすくなるでしょう。例えば、営業利益率が業界水準を上回っていれば、その企業は優れたコスト管理能力や価格競争力を持っていると考えられます。

営業利益がマイナスになっている銘柄は株価が上がらない?

営業利益がマイナスであっても、それが直ちに株価の下落を意味するとは限りません。企業の成長度合いやビジネスモデルによっても投資家の評価は大きく変わるため、赤字の要因を見極める必要があります。

例えば、成熟企業で一時的に営業利益がマイナスになっても、株価が安定して推移することがあります。会社が一時的な損失について予め発表している場合や投資家があらかじめ損失を予想できていた場合で、翌年度以降は黒字に戻ることが予想される場合など、その企業が築き上げてきた事業基盤や財務基盤が評価され株価が底堅く推移することもあります。

また、営業利益が計画に対して未達であっても、売上成長が続いていれば、将来の利益期待で株価が上昇する可能性があります。現在は赤字でも、将来的に大きな収益を生み出すポテンシャルがあると投資家が判断するケースもあるのです。

一方、赤字が構造的・継続的である場合、事業モデルに根本的な問題があるか、市場の変化に対応できていないと見なされ、株価が下落しやすくなります。

投資判断をする際は、営業利益だけでなく売上成長率やキャッシュフロー、利益構造の改善見通しなど、多角的な視点で企業分析をすることが重要です。

営業利益を企業分析の出発点として活用しよう

営業利益は、企業が本業でどれだけ稼ぐ力があるかを示す重要な指標です。売上高から売上原価と販売費及び一般管理費(販管費)を差し引くことで算出でき、企業の収益性や経営の安定性を判断する際に役立ちます。

売上高に対する営業利益の割合を示した「営業利益率」などの指標を用いると、その企業の強みや課題を把握しやすくなるでしょう。ただし、営業利益率は高ければ高いほど良いというものではありません。IR資料などを通じて同業他社や業界平均と比較することで適正な水準が見えてきます。

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