経常利益とは?営業利益との違いや計算方法、投資で活用するポイント

2024/12/19

株式投資に関する情報収集をしている方なら「経常利益」という言葉を一度は目にしたことがあることでしょう。しかし、具体的にどのような利益を指すのか、計算方法や営業利益との違いなど、気になるポイントも多いのではないでしょうか。

経常利益とは、企業の本業だけでなく、財務活動など本業以外の損益も含めた利益のことで、企業の総合的な収益力を判断するうえで重要な指標です。

本記事では、経常利益の基本的な意味から具体的な計算方法、そして実際の投資でどのように活用できるのかをわかりやすく解説します。

経常利益とはどのような利益?

企業の収益力を評価する上で重要な指標の一つが「経常利益」です。ここでは経常利益の意味や計算方法、関連する用語について解説します。

経常利益とは

経常利益とは、企業が通常の事業活動を通じて得た利益のことです。本業での利益である「営業利益」だけではなく、預貯金・債券の利息や、株式の売買益など、営業外の収益も含んでいます。

経常利益は株式投資において、企業の収益力や安定性を判断するための重要な指標です。投資家はこの数値を通じて、企業が本業とそれ以外の活動を通じてどれだけ利益を上げているかを確認します。

経常利益は、決算短信や損益計算書で確認可能です。決算短信とは、企業が四半期ごとや年度末に公表する決算発表の概要をまとめた資料で、発表様式は証券取引所が定めており、上場企業は作成・開示が義務づけられています。

損益計算書とは、企業の一定期間における収益と費用を示した資料です。どちらの資料も、投資家が企業の業績や今後の見通しを把握するために重要な情報源の一つとなっています。

損益計算書に記載される利益の種類

損益計算書には、経常利益を含む5つの利益が記載されています。それぞれの利益が企業のどの部分の収益を示しているかを理解することで、経常利益の位置づけがより明確になるでしょう。

  • 売上総利益
  • 売上高から売上原価(商品の仕入れや製造にかかった費用)を差し引いた利益です。「粗利益」とも呼ばれ、商品の売買そのものから得られる基本的な利益を示します。

  • 営業利益
  • 売上総利益から、販売費及び一般管理費を差し引いた利益です。販売費及び一般管理費には、広告宣伝費や従業員の給与、地代家賃などが含まれます。営業利益は本業から得られる利益を示すため、企業価値に直結する部分として多くの投資家に重要視されています。

  • 経常利益
  • 営業利益に、営業外収益(受取利息や配当金など)を加え、営業外費用(支払利息や為替差損など)を差し引いた利益です。本業だけでなく、金融資産からの収益などを含んだ企業の収益力を示します。

  • 税引前当期純利益
  • 経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いたあとの利益です。特別利益や特別損失とは、本業とは直接的な関係がなく、その期だけに臨時的に発生した損益のことを指します。不動産などの固定資産売却益は特別利益、災害による損害などは特別損失の代表例です。
    法人税などを差し引く前の利益なので「税引前当期純利益」と呼ばれています。

  • 当期純利益
  • 税引前当期純利益から法人税などの税金を差し引いた最終的な利益です。この利益は株主への配当金の原資となり、配当金に回されない部分については「内部留保」となり、純資産として蓄えられます。

経常利益の計算方法

経常利益は、本業での収益力を示す営業利益に、企業が本業以外で得た経常的な収益(営業外収益)を加え、経常的な支出(営業外費用)を差し引くことで求められます。

計算式:経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

営業利益とは、本業で得られる利益のことです。売上総利益から販売費や一般管理費を差し引いて求めます。

営業外収益は、本業以外の活動から得られる収益です。受取利息や配当金、不動産収益などが含まれます。営業外費用は、本業以外の活動にかかった費用のことで、為替差損や借入金の利息などが含まれます。

ある企業の業績を例に、経常利益を計算してみましょう。営業利益が1,000万円、営業外収益が200万円、一方で営業外費用が50万円発生しているとします。この場合、1,000万円+200万円-50万円=1,150万円が経常利益です。

経常利益からわかること

経常利益には、本業に限らず、金融取引やそのほかの収益・費用も含まれるため、企業全体の安定性や収益性を評価する際に役立ちます。

通常の経営活動による利益

経常利益とは通常の事業活動によって得たすべての利益のことで、本業の儲けである営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いて計算します。企業の健全性や収益性を評価するために重要な指標で、企業の総合的な経営成績を把握することができます。

経常利益に大きな変動が見込まれる場合、上場企業にはその情報を公表する義務があります。具体的には、前期の実績や従来の予想から30%以上の変動が予想される場合、速やかにその内容を公表する必要があります。これにより、投資家や市場参加者が企業の業績を正確に把握できる仕組みが整えられています。

企業の収益性

経常利益は、企業の収益性を評価する際にも活用されます。特に、売上高に対する経常利益の割合を計算することで、企業が売上をどの程度利益に変えられているのかがわかります。これを示す指標が売上高経常利益率です。

計算式:売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

ある企業の経常利益が1,000万円、売上高が1億円の場合、売上高経常利益率を計算すると以下のようになります。
1,000万円(経常利益)÷1億円(売上高)×100=10%

経常利益のデータを投資に活用するポイント

経常利益を株式投資で活用する際は、単体ではなくほかの指標を合わせて分析や、時系列で分析などが有効です。

同業他社と比較する

経常利益を活用する際には、売上高経常利益率を同業他社や業界平均と比較するのが有効です。同業他社と比較して経常利益率が高い企業は、効率的な経営を行っている可能性が高く、競争力のある企業といえます。

財務省「報道発表年次別法人企業統計調査(令和5年度)」によると、業種ごとの売上高経常利益率は以下の通りです。

製造業

業種 経常利益率
業務用機械 13.5%
化学 12.1%
はん用機械 11.8%
輸送用機械 11.3%
生産用機械 10.5%
電気機械 8.8%
鉄鋼 7.0%
情報通信機械 6.6%
金属製品 6.2%
食料品 4.7%
石油・石炭 2.7%

非製造業

業種 経常利益率
不動産業 13.0%
情報通信業 11.2%
サービス業 7.7%
物品賃貸業 7.0%
電気業 7.0%
運輸業、郵便業 5.9%
建設業 5.0%
卸売業、小売業 3.5%

また、同業他社と比較する際は、売上高経常利益率だけではなく売上高も合わせて確認しましょう。売上高が同じであっても、経常利益率が高い企業の方が効率的な経営ができている可能性が高く、今後の成長に期待ができます。

企業の成長性を分析する

経常利益の複数年にわたる推移を見ることで、企業の成長性を評価できます。持続的に経常利益が増加している企業は、収益力が向上しており、将来的に株価が上昇する可能性が高いと考えられます。 

松井証券が提供する会員限定情報サイト「マーケットラボ」では、経常利益率の伸び率を検索できるほか、過去5年の経常利益の推移を確認も可能です。成長性の高い企業を効率的に見つけたい場合は、このようなツールも活用してみましょう。

【関連リンク】投資情報ツール マーケットラボ

営業利益や当期純利益と比較する

経常利益を営業利益や当期純利益と比較すると、企業の経営状況や収益構造をより深く理解できます。

例えば、経常利益が赤字で営業利益が黒字の場合、本業自体は順調であるものの、借入金の利息や為替差損など、営業外の損失が収益を圧迫している可能性が考えられます。

一方、経常利益が黒字で営業利益が赤字の場合、株式投資の配当収入や不動産収益などが大きく、営業活動の赤字を補っていることがわかります。このケースでは、本業の立て直しができなければ、持続的な成長は難しい状況といえるでしょう。

経常利益が赤字で当期純利益が黒字の場合、不動産の売却益や一時的な資産売却などによる特別利益が当期純利益を押し上げていることがわかります。このようなケースでは、黒字化しているものの、収益力には不安がある状況といえます。

一方、経常利益が黒字で当期純利益が赤字の場合、特別損失が大きく計上されていると考えられます。自然災害による設備損失や、事業撤退に伴う費用、訴訟関連の賠償金など、どのような理由で損失が発生しているのかを確認することで、今後の経営の見通しを予測しやすくなるでしょう。

投資家が企業のパフォーマンスを判断する際に注目する指標の一つとしてROEがあり、「当期純利益÷自己資本×100」で求められます。ROEに関する詳しい説明は下記のページを参照してください。

【関連リンク】ROE(自己資本利益率)の計算方法は?意味や目安、ROAとの違い

「経常利益とは企業分析の実践に役立つ指標」

経常利益は、企業の収益力や経営の安定性を評価する上で重要な指標です。経常利益を深く理解することで、企業分析がより正確になり、株式投資の判断材料として活用できます。特に、同業他社との比較や、営業利益や当期純利益とのバランスを確認で、企業の強みや課題を見極めやすくなるでしょう。

とはいえ、どの銘柄を選ぶべきか迷ったり、初めての投資に不安を感じたりする方もいるかもしれません。松井証券なら初めての株式投資でも安心して取引ができます。電話やチャット、FAQなど、初心者向けのサポートが充実しているので、困ったときもすぐに相談できます。また、アプリ1つで取引が完結する手軽さや、業界最安水準の手数料も魅力です。

これから株式投資を始める方は、松井証券での口座開設を検討してみてはいかがでしょうか。

オンラインで最短即日、
無料で口座開設

オンラインで申し込みが完結。署名・捺印・書類の郵送は不要です