リセッションとは?意味や発生する原因、株価への影響

2024/6/6

株式投資に取り組む上では、金融や経済に関する情報収集が欠かせません。ニュースを見聞きする中で「リセッション」という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。しかし、リセッションの正解な意味や発生する原因を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。

本記事では、リセッションの意味や原因、株価に与える影響などを詳しく解説します。基本的な知識を身につけ、相場分析のスキルを深めましょう。

リセッションとは?

リセッション(Recession)とは、経済活動における景気後退局面のことです。経済活動においては、景気の拡張期と後退期が周期的に交互に繰り返され、これを景気循環と呼びます。ピーク(景気の山)から景気が低迷し、不況になる期間を「景気後退」局面、対照的に景気が最悪期(景気の谷)を脱し、好況に向かう期間は「景気拡張」(エクスパンション)局面とするケースが一般的です。リセッションが長期間続き、さらに経済状況が悪化すると、それはデプレッション(恐慌)と呼ばれます。

リセッションの定義は国や地域によって異なり、例えば欧米では、GDPが前期比で2四半期以上マイナス成長が連続する場合をリセッションと定義します。米国では、全米経済研究所(NBER)がGDPや鉱工業生産などの各指標を参照しつつ、経済活動全体の実態を基にリセッションを認定します。日本では、毎月公表されるDI(景気動向指数)が50%を下回る状態が一定期間続いた場合にリセッションと判断されます。

なお、景気後退と景気減速は異なる局面を表す言葉なので注意しましょう。景気後退は不景気への移行を意味し、経済が衰退していく状況を指します。一方、景気減速は景気拡張の局面において、その勢いが鈍くなることを表します。

景気循環のイメージ

リセッションを引き起こす原因

リセッションは景気循環や金利の変動など、さまざまな要因によって引き起こされます。

景気循環

景気循環は経済の自然な動きの一部であり、リセッションを引き起こす要因の一つとして大きな影響を持っています。

例えば、経済が拡大期にあるとき、企業は利益の拡大に伴い生産量を増やし、雇用を拡大させたり、賃金を上げたり、新たな設備投資を行ったりします。従業員の給与が増えることで消費が拡大し、これがさらに企業の利益増加を促す好循環が生まれます。

しかし、この拡大が永遠に続くわけではありません。市場の飽和や資源の枯渇が原因で、製品やサービスの需要が徐々に減少します。これに伴い、生産活動は縮小され、雇用削減や事業規模の縮小に向かいます。消費の落ち込みにより、企業の利益も減少する悪循環に陥っていきます。このようにして経済はピークから落ち込み、やがてリセッションに至るのです。

景気には一定の波があり、好況と不況を一定のサイクルで繰り返していますが、景気循環の波には主に以下の4種類があります。

種類 周期 要因
キチンの波 約40カ月 在庫投資の増減
ジュグラーの波 約10年 設備投資の増減
クズネッツの波 約20年 建設投資の増減
コンドラチェフの波 約50年 技術革新の発生

例えば、キチンの波であれば、景気の谷から次の景気の谷までの周期が40ヵ月であることです。これらの景気の波が重なることで、景気循環が生まれることになります。

金利の変動

政策金利の変動も、リセッションを引き起こす要因の一つです。政策金利とは、中央銀行が景気や物価の安定などを目的として設定する金利で、変動すると、預金金利や貸付の金利に影響を与えるとされています。

景気が良くなり需要が増加すると、物価が上昇するので、過度なインフレを防ぐために中央銀行は政策金利を引き上げるケースが一般的です。すると、企業は金利負担が増えることを懸念し、設備投資や資金調達などに対して消極的になります。その結果、売り上げの減少や従業員の給与削減、消費・需要の減少などにつながっていき、リセッションにもつながっていくというわけです。

リセッションを判断するための方法は?

リセッションが起きているかを判断するためには、ニュースや新聞などを通じて、米国が発表する経済指標をチェックしておきましょう。特に注目すべきなのはFOMCや米国雇用統計、ISM製造業指数です。

FOMCとは、米国の金融政策を決定する「連邦公開市場委員会」のことです。米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)が開く会合で、今後の金融政策の方向性や、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利などが決まるため、多くの投資家から注目を集めています。FOMCによって政策金利の引き上げが発表された場合は、リセッションに向かう可能性があると判断できるでしょう。FOMCは1〜2ヵ月程度の周期で行われており、投資家の注目を集めています。

米国雇用統計は、毎月第一金曜日に発表される統計で、株式市場や為替市場などさまざまなマーケットに影響を与えることから、多くの市場関係者に注目されている指標です。米国労働省によって、失業率や非農業部門雇用者数など、雇用関係の統計が10項目以上発表されます。失業率が上昇している場合、リセッションによって雇用が減少している可能性が考えられるでしょう。

ISM製造業指数は、米供給管理協会が毎月第1営業日に発表する指標です。製造業の購買・供給管理責任者へのアンケート調査の結果をもとに0から100%までの指数を算出します。50%を上回っている場合は景気拡大の局面、50%を下回っている場合はリセッションと判断するケースが一般的です。

リセッションを判断するためには、これらの指標の数値を定期的に確認して、リセッションの兆候をつかむことが大切です。指標が発表された後に、アナリストや評論家などの見解を参考にしてみるのも良いでしょう。

【関連リンク】マーケット情報 経済指標カレンダー

リセッションに関するよくある質問

リセッションが市場や投資家に与える影響について、疑問が生じやすいポイントをまとめました。

リセッション入りすると株価はどうなる?

リセッション(景気後退)の時期に株価は大幅に下落する傾向があります。例えば、1987年10月19日に起きた「ブラックマンデー」では世界中の株価が一日で大幅に下落し、NYダウは約22%の大幅な下落を記録しました。また、リーマンショックの時には、アメリカの投資銀行「リーマン・ブラザーズ」の破綻をきっかけとして金融不安が起こり、日経平均株価は1ヵ月半で約41%下落しています。

なお、リセッションに入ったから株価が下がるのではなく、リセッション入りの懸念が生じた段階で株価が下がることも少なくありません。米国の経済指標を中心として、こまめに情報収集することを心がけましょう。

リセッションの投資家への影響は?

リセッションの時期には株価が下落するため、安全資産へ投資資金が流れる傾向があります。とくに金はそれ自体に価値がある実物資産であり、リセッションの局面でも価値が大幅に低下することは考えにくいため、リスクヘッジとして保有する投資家が増えるとされています。

米国のリセッションが注目される理由は?

米国のリセッションが注目されているのは、米国は世界の名目GDPの約4分の1の割合を占めており、その景気動向が世界各国の株式市場に与える影響が大きいとされているからです。

アマゾンやアップルなど、世界的なテクノロジー企業が米国に集まっていることもあり、米国でリセッションが発生すると、多くの企業や投資家に影響が出る可能性があります。

リセッションとは景気循環の一部

リセッションは「景気後退局面」を指す言葉であり、景気循環の波や金利の変動などが要因となって起こります。リセッションに対する懸念が生じた場合、株価は下落する傾向があり、状況によっては株価が暴落する可能性もゼロではありません。いち早くリセッションを察知するためにも、世界の経済動向に大きな影響を及ぼす米国の経済指標については、日頃からチェックしておきましょう。

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