インフレとは?意味やメカニズム、デフレとの違いや生活への影響をわかりやすく解説
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの価格が継続的に上昇し、相対的なお金の価値が下がり続ける現象のことです。単に預金するだけでは資産価値が目減りしてしまう可能性のある中で、多くの方が資産形成に関心を持ち始めています。
本記事では、インフレの基本的な意味からメカニズム、メリット、デメリットに加え、私たちの生活や資産、経済に及ぼす影響についてわかりやすく解説します。
インフレの基本的な定義とメカニズム
まずはインフレがどのように定義され、どのような要因で引き起こされるのかを押さえておきましょう。
インフレとは
インフレとは、モノやサービスの価格が継続的に上昇し、相対的なお金の価値が下がり続ける現象のことです。
例えば、今まで200円で買えていたコーヒーの値段が300円になった場合、これは相対的にお金の価値が下がった状態ということになります。
世界経済や金融政策、企業や個人の消費活動など、さまざまな要素が組み合わさり、物価上昇を引き起こした結果、インフレが発生します。特に需要が供給を上回る状況では、商品やサービスの価格は自然に高くなりやすく、その結果インフレが加速することもあります。
デフレとの違い
デフレはインフレとは反対に、物価が継続的に下落し、相対的なお金の価値が上がり続ける状態を意味します。消費者から見ると商品の価格が安くなるメリットがありますが、企業の売上や利益が減少しやすく、景気全体が冷え込むリスクが高まります。デフレが深刻化すると企業の投資意欲が低下し、雇用や給与水準にもマイナスの影響が及ぶ可能性があるため注意が必要です。
インフレとデフレは表裏一体の現象であり、需要と供給のバランスや金融政策の動向によって大きく左右されます。
インフレのメリット・デメリット
インフレには、経済活動が活発化しやすいというメリットがあります。物価が上昇することで企業の売上が伸び、雇用や給料の上昇を促す好循環が生まれることもあるでしょう。
一方で、物価が上がるにつれて現金の価値が下がり、消費者の購買力は低下していくというデメリットがあります。特に急激なインフレの場合は、生活必需品の値上げが家計を圧迫するなどの問題も無視できません。
物価の上昇を測る指標としてはCPI(消費者物価指数)があります。各国のインフレ動向を測る際の重要な経済指標としても用いられるため、チェックしておきましょう。
インフレの代表的な2つの種類
インフレは主に需要面とコスト面から生じる2つのパターンに大別できます。大きく需要面のインフレとコスト面のインフレに分類して、それぞれの発生メカニズムや特徴を理解しましょう。
需要プル型インフレ
需要プル型インフレは多くの人が商品やサービスに対してより高い支払い意欲を示すことで物価が上がる、景気拡大局面で起こりやすい現象です。特に、金融緩和政策などで世の中に出回るお金が増えると、この形のインフレが顕著に表れることがあります。
このようなケースでは、企業は利益増加を見込んで生産拡大に踏み切りますが、それでも需要を十分に満たせない場合はさらに価格が上昇することもあります。こうした循環は経済を活性化させる面がある一方で、急激に進むと副作用として商品やサービスの過度な値上がりを招くリスクもあります。
コストプッシュ型インフレ
コストプッシュ型インフレは、原材料費や人件費といった生産コストの上昇が、直接物価を押し上げる現象を表します。例えばエネルギー価格の高騰や輸入品の値上がりは、製造業における製造コストに反映され、結果的に製品価格の値上げにつながります。
このタイプのインフレは、需要の拡大とは無関係に進む場合も多く、家計や企業にとって想定外の負担となり得るでしょう。特に世界的な原材料価格の高騰や為替変動が影響を与えるケースでは、その影響が広範囲に波及しやすい点に注意が必要です。
インフレが私たちの生活に与える影響
物価上昇が家計や雇用、金融面にどのような影響を及ぼすか、具体例とともに解説します。
家計への影響
インフレによる物価高は、食料品やエネルギーなど日常生活に不可欠な支出が増え、家計のやりくりに影響します。特に給与が横ばいのまま物価だけが上昇すると、家計負担が増大し、実質的な購買力は大きく落ち込むことになります。家計費の見直しや節約が求められますが、それらが過度になると経済活動が萎縮する原因にもなりかねません。
物価動向をこまめにチェックし、適切な消費と貯蓄のバランスを保つことが大切です。
雇用・給料への影響
インフレが緩やかに進行する状況では、物価上昇が企業の売上増加につながる可能性があり、その結果として雇用の拡大や賃金の上昇が期待できます。
一方で急激なインフレの場合には、コスト増に対応しきれずに企業の利益率が下がり、特にスタグフレーションのような景気が停滞するなかでは、事業の整理や人件費の増加を抑える動きに繋がる可能性も考えられます。
インフレによる雇用・給料への影響は業界によっても異なる面があり、物価上昇を製品価格に転嫁しやすい業界とそうでない業界でも変わってくるでしょう。
資産価値や貯蓄に与える影響
インフレ時は、物価の上昇に伴ってお金の価値は減少していきます。銀行預金を利用していても、預金金利がインフレ率を下回る場合には資産が実質的に減少していくことになります。
一方で株式や不動産など物価上昇に合わせて価格が上昇しやすい資産を持つことは、インフレへのリスクヘッジを図ることにつながるでしょう。資産運用にあたっては、リスクとリターンのバランスをよく考えて取り組むことが大切です。
金利・ローンへの影響
インフレが進むと、過度の物価上昇を抑制する目的で中央銀行は政策金利の水準を引き上げることが予想されます。金利を引き上げることで、消費を引き締め、物価の上昇を緩やかにする、或いは安定させることを目指します。
また金利の上昇は、住宅ローンやカードローンなどを利用している人にとっては返済負担の増加に繋がる可能性があります。特に変動金利型のローンは、短期金利の上昇に合わせて引き上げられるため、返済額が増加し、返済計画を見直す必要が生じる可能性があります。こうした金利変動リスクを踏まえた資金計画を立てることが、安定した将来設計を立てる上で重要になるでしょう。
なお資金の貸し手側にとっては、利息収入が増すメリットがある一方で、債務者の返済能力が低下することによる貸し倒れリスクが高まることがデメリットとして考えられます。
インフレが社会経済与える影響
海外情勢や為替変動など、国内外の要因により近年は日本でもインフレ傾向が見られます。インフレが社会経済にどのような影響を及ぼすか、具体例とともに解説します。
日本におけるインフレ
かつては長らくデフレが続いていた日本ですが、近年は世界的な原材料価格の高騰や日銀による金融緩和政策の影響から物価上昇が顕在化しています。
特にコストプッシュ型のインフレが進み、食料品やエネルギーの値上がりが家計に直接響き、影響を実感しやすいことが特徴です。日本銀行は物価上昇率の目標を掲げて金融政策に取り組んでいますが、為替レートや国際情勢に大きく左右される面もあるため、金利水準をコントロールするのは容易なことではありません。
世界経済の動向
世界各国の中央銀行は、金利水準を適性と考える範囲に誘導し安定させることを目的として金融政策を実施します。インフレになった場合には、通常は政策金利の引き上げや預金準備率の引き上げ等により金融引き締めを行い、物価の上昇を抑える方向へ誘導します。反対に、デフレになった場合には、政策金利の引き下げなどの景気刺激策による金融緩和を行います。
金融政策は各国の状況に応じて異なり、その結果として政策金利に差が生じますが、政策金利が高い国は通貨高になりやすく、またその逆も考えられます。
輸入価格の上昇と円安の影響
海外からエネルギー資源や原材料を輸入する企業にとって、海外でのインフレによる輸入品の価格上昇は調達コストの増加に繋がり、国内企業にとっては利益を圧迫することになるでしょう。これは輸入インフレと呼ばれる現象ですが、円安の局面では輸入品の価格がさらに上昇し、国内の物価を押し上げることにも波及します。
円安は輸出企業にとっては海外での価格の下落による販売の増加といった形で有利に働く場合がある一方で、調達コストの高騰による収支の悪化に繋がることもあります。こうしたことから、輸入価格と為替は密接に関係しているといえるでしょう。
スタグフレーションとの関係
景気後退(リセッション)と物価上昇(インフレーション)が同時に進行するスタグフレーションとは、どのような状態を意味するのかを確認しましょう。
スタグフレーションは、景気が低迷して失業率や企業の業績が悪化する一方で、物価が上昇し続ける厄介な局面を指します。通常、物価上昇は景気の拡大とともに起こると考えられますが、この場合は需要の伸びによるインフレではなく、コスト増による価格上昇が主な要因となります。
その結果、企業はコスト圧迫に苦しみ、雇用を維持しづらくなるため、失業率の上昇や賃金の停滞、消費マインドも落ち込むという悪循環が生まれる恐れがあります。スタグフレーションへの対処は非常に難しく、金融政策だけでなく財政政策や構造改革を含む幅広い取り組みが求められることが多いです。
インフレに負けない資産運用のために
インフレとは、物価が上がり続けてお金の価値が下がる現象であり、需要と供給のバランスや各種コストの上昇が複雑に絡み合って発生します。経済成長を支える面もあれば、家計や企業にとって負担となる面も存在します。
デフレの時代は、現金の価値が上昇(物価が下落)するため、超低金利下においても、現金を資産として保有することに問題はありません。しかし、インフレの時代になると、現金の価値は下落(物価が上昇)するため、一定の利回りで運用しない限り、資産価値は目減りすることとなります。そのため、株式投資や投資信託などの金融商品による資産運用を行い、インフレによる保有資産の価値減少から守ることが重要です。
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