PBR(株価純資産倍率)とは?計算式や目安、1倍割れの問題

2024/10/4

株式投資で利益を得るには、将来性のある銘柄に投資する方法と、企業の本来の価値よりも安い株価水準の銘柄を見つけて投資する方法があります。後者の割安な銘柄を探す際に、多くの投資家が参考にするのがPBRです。投資初心者の中には、PBRという言葉を聞いたことはあっても、その意味や活用方法をよく理解していない人も多いでしょう。

そこで本記事では、PBRの基本的な計算方法や、銘柄選びに活用する際の目安などについて解説していきます。

PBR(株価純資産倍率)とは?

PBRは、株価の割高・割安を判断する際に用いられる重要な指標です。まずは基本的な意味や他の指標との違いを理解しておきましょう。

PBRの概要

PBR(Price Book-value Ratio)は日本語で「株価純資産倍率」と呼ばれている指標で、株価が1株あたり純資産の何倍になっているかを示すものです。企業の株価が割高か割安かを判断できるため、投資判断の目安として広く活用されています。

PERとの違い

PBR(株価純資産倍率)とPER(株価収益率)は、どちらも企業の株価が割高か割安かを判断するための指標です。

しかし、PBRは株価を1株あたりの純資産(BPS)で割って算出するのに対して、PERは株価を1株あたりの純利益(EPS)で割って計算する違いがあります。

また、PBRの計算の基となる純資産は、会社が保有するすべての資産から借入などの負債を差し引いたものであり、短期間では大きく変動しづらい特徴があります。そのため、PBRは長期的な投資判断に適した指標といえます。

一方、PERの計算の基となる純利益は1年間の売上から売り上げ原価や人件費、税金などを差し引いたもので、毎年の業績に左右されやすいのが特徴です。そのため、どちらかといえば短期投資で活用しやすい指標といえるでしょう。

ROEとの関係

ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標です。一般的に、ROEが10%を超える企業は優良企業とされています。

ROEは通常、純利益を自己資本で割ることで算出できますが、先述したPERとPBRを使って求めることも可能です。具体的には、ROE = PBR ÷ PER という計算式が成り立ちます。

PBRの計算方法と目安

PBR(株価純資産倍率)は、企業の株価がその純資産に対してどれだけ評価されているかを示す指標です。ここでは、PBRの計算方法や判断基準について解説します。

PBRの計算式

PBRは「株価÷1株あたりの純資産(BPS)」で算出できます。さらに、1株あたりの純資産(BPS)は「純資産÷発行済み株式数」で求めることが可能です。

例えば、株価が1,000円で、企業の純資産が1,000万円、発行済み株式数が2万株である場合、PBRは2倍となります。

PBRは何倍がいい?

1株あたり純資産(BPS)は、理論上、会社が解散する際に株主が手にできる金額を表しているため「解散価値」とも呼ばれます。

PBRが1倍の場合は、株価と解散価値が等しいことを意味します。つまり、会社が解散したときに株に投資した金額がそのまま戻ってくるのです。この1倍の値を基準に、それを上回った場合は割高、下回った場合は割安と判断します。

近年、日本ではPBRが1倍を割り込む企業が多いことが問題視されています。PBRが1倍を割ることは、企業を継続して経営するよりも解散したほうが価値は高いと市場で評価されているということです。つまり、その企業の将来性や成長性が投資家に評価されていないことを示しています。

この状況を改善するため、2023年3月に東京証券取引所は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を発表し、PBRが1倍を下回る企業に対して改善を促しています。

松井証券のマーケット情報ではPBRの値を指定した銘柄検索が可能です。業種やその他指標で絞り込みを行った検索も可能ですので、是非ご活用ください。

PBRを活用する際の注意点

投資判断においてPBRを過信するのは禁物です。以下では、実際の取引でPBRを活用する際の注意点を解説します。

PBRだけで判断をしない

PBRが低い水準にあるからといって、必ずしも株価が上昇するわけではありません。例えば、PBRが低くても、企業の成長性や収益性が低い場合、投資家は将来の利益に期待できないと判断し、株価が上がらないこともあります。また、自社株買いや株式併合により発行済株式数が減少し、1株あたり純資産(BPS)が増えた結果、PBRが下がるケースもありますが、このような場合は株価の上昇につながらないことも少なくありません。

投資判断を行う際に一つの指標に頼るのはリスクが高いため、PBRに加えて、PER(株価収益率)やROE(自己資本利益率)などの他の指標も活用し、企業の収益性や安定性を総合的に評価することが重要です。

PBRは決算後の純資産の変動を反映していない

PBRは帳簿上の数値を基に算出されるため、決算後の純資産の変動が直ちに反映されるわけではありません。例えば、想定外の貸し倒れが発生し、特別損失を計上で純資産が減少すれば、PBRも変動する可能性があります。こうしたケースでは、実際の状況を反映しきれず、PBRが割安か割高かを正確に判断できない場合があります。

そのため、PBRは時系列で確認し、過去の実績も含めての分析が望ましいでしょう。こうすることで、企業の実態に即したPBRの傾向を把握しやすくなります。

同じ業種を比較する

PBRを活用する際には、同業種内での比較が重要です。業種ごとに標準的なPBRの値が異なるため、他社との比較で、割安・割高の判断がより正確になります。

以下の表は、市場ごとにPBRの高い上位3業種と下位3業種をまとめたものです。

プライム市場の業種別PBR

上位3業種 PBR(倍) 下位3業種 PBR(倍)
情報・通信業 2.2 電気・ガス業 0.7
サービス業 2.0 パルプ・紙 0.6
精密機器 1.8 銀行業 0.5

スタンダード市場の業種別PBR

上位3業種 PBR(倍) 下位3業種 PBR(倍)
空運業 3.3 倉庫・運輸関連業 0.5
鉱業 2.5 電気・ガス業 0.3
情報・通信業 1.7 銀行業 0.3

グロース市場の業種別PBR

上位3業種 PBR(倍) 下位3業種 PBR(倍)
その他金融業 5.5 空運業 1.6
医薬品 4.3 非鉄金属 1.3
食料品 3.8 保険業 1.3

出典:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧 2024年7月」

例えば、情報・通信業では純資産が少ない傾向にあるベンチャー企業が多いため、PBRは高くなりやすいといえます。一方で、銀行業では土地や建物などによって純資産が大きくなる企業が多い傾向にあるためPBRは低くなりがちです。

PBRとは長期投資で役立つ指標

PBRは株価を1株あたりの純資産(BPS)で割って算出できる指標で、企業の株価がどれほど割安または割高であるかを判断するために用いられます。純資産は短期間での変動が少ないため、PBRは長期的な投資判断をする際に注目されることが多い指標です。

PBRは、株価と企業の解散価値が等しくなる「1倍」を一つの目安として評価することが多くなっていますが、近年では1倍を下回る企業も増えており、これが必ずしも割安であることを意味するわけではありません。

より精度の高い投資判断を行うためには、同じ業種内での他企業とPBRを比較することや、PERやROEなどの他の指標も活用した総合的な視点が大切です。

PBRについての知識を深めた後は、実際に銘柄を選んで株式投資を始めてみましょう。これから株式投資を始める人には、松井証券での口座開設がおすすめです。

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