イールドカーブは何がわかる?投資への活用方法をわかりやすく解説

2025/3/3

投資を始めたばかりの方にとって、「イールドカーブ」という言葉はあまり馴染みがないかもしれません。イールドカーブは、債権の金利の動向を通じて景気の先行きを予測するのに役立つ重要な指標です。とはいえ、「どのように読み取れば良いのか?」「具体的に投資にどう活かせるのか?」と疑問を持つ方もいるでしょう。

本記事ではイールドカーブの基本的な見方から、株式投資に活用するためのポイントをわかりやすく解説します。

イールドカーブとは

イールドカーブとは、債券の利回りと償還期間の関係を示したグラフです。利回り曲線とも呼ばれ、景気の見通しや株価の先行指数として活用される重要な指標とされています。

イールドカーブは何がわかる?

イールドカーブは、縦軸に利回り、横軸に債券の残存年数(残存期間)をとる曲線グラフです。特定の債券だけでなく、同種の債券の中の残存年数が異なる複数の債券の動きが1本の曲線で表されます。

一般的に、長期金利は短期金利を上回る傾向があります。これは、債券の償還までの期間が長くなるほど、景気や物価の変動など市場環境の影響を受けやすくなるためです。その結果、投資家はリスクに見合ったリターンを求め、償還期間の長い債券ほど高い利回りが設定されます。そのため、イールドカーブは右上がりの「順イールド」を描くケースが一般的です。

また、イールドカーブの形状は、経済状況によって変化します。傾きが大きくなる現象を「スティープ化」、逆に傾きが小さくなる状態を「フラット化」と呼びます。これらのグラフの形状から将来の景気動向やインフレの兆候を予測することが可能です。

逆イールドとは?

順イールドとは反対に、右下がりの曲線を描くのが「逆イールド」です。逆イールドは短期金利が長期金利を上回る状況を指します。

逆イールドが見られるのは、主に金融引き締め政策が行われる場面や景気後退(リセッション)の懸念が高まる場面です。金融引き締め政策が行われる場面では、中央銀行の利上げの影響を受け、短期・中期債の利回りは上昇します。一方で、投資家は将来の景気減速や金利低下を予測し、安定したリターンを求めて長期債を積極的に購入します。

債券価格と利回りは逆の関係にあります。すなわち、債券価格が上昇すると利回りは低下し、価格が下落すると利回りは上昇します。そのため、投資家の長期債への買い集中によって長期金利が低下し、短期金利との逆転現象が発生するのです。

2025年2月時点で、日本国債のイールドカーブは順イールドを示しています。

イールドカーブを投資へ活かすためのポイント

イールドカーブの形状変化は、景気動向や投資環境の変化を示す重要な指標です。具体的な活用方法を理解し、投資のチャンスを広げましょう。

景気の予測や投資戦略に役立つ

イールドカーブの形状変化は、景気予測や投資戦略の判断材料として活用することが可能です。
例えば「逆イールド」は、経済の先行きに対する不安が反映されており、景気後退(リセッション)のシグナルとして知られています。過去のデータからも、逆イールドが発生すると一定期間後に景気の減速や株価の下落が起こるケースが多くなっています。

また、イールドカーブの傾きから、経済動向を予測することも可能です。例えば、景気回復への期待が高まると、株式市場への資金流入が増加します。これにより、長期債券を売却する動きが加速し、債券価格の下落に伴い利回りが上昇します。こうした状況では、短期金利に対して長期金利の上昇幅が拡大し、イールドカーブの傾きが急になる「スティープ化」が発生しやすくなるのです。

一方、長期金利と短期金利の差が縮小する「フラット化」は、景気の転換期や金利水準の先行き不透明感が強まった場合に発生します。

短期金利と長期金利の違いを理解する

イールドカーブを投資に活かすためには、短期金利と長期金利の違いを正しく理解することが重要です。それぞれの金利がどのような要因によって動くのかを把握することで、イールドカーブの変化をより深く分析できるようになるでしょう。

短期金利は、主に中央銀行の金融政策の影響を受けやすい特徴があります。例えば、インフレ抑制のために中央銀行が政策金利を引き上げる「金融引き締め」を実施すると、短期債の利回りは上昇しやすくなります。逆に、景気刺激のために金利を引き下げる「金融緩和」が行われると、短期金利は低下します。

一方、長期金利は景気の成長見通しやインフレ期待に基づいて決まるケースが一般的です。例えば、将来的な景気回復が見込まれる場合、投資家は債券よりも株式などのリスク資産を選好し、債券が売られることで長期金利が上昇します。反対に、景気後退が懸念される場合は、安全資産である長期債が買われ、長期金利は低下します。

ほかのデータやニュースを組み合わせて判断する

イールドカーブは、将来の市場動向を予測するための重要な指標の一つですが、単独で投資判断に活用するには限界があります。より精度の高い判断を行うためには、GDP成長率や失業率、消費者物価指数(CPI)といった経済指標や、企業業績などを総合的に分析することが重要です。

また、経済情勢や政策に関するニュースのチェックも欠かせません。これらのニュースを把握することで、投資家心理の変化を理解し、市場の動向をより的確に予測できるようになります。

イールドカーブ・コントロールとは

イールドカーブ・コントロール(YCC)とは、債券市場の金利を適正な水準に維持するために行う金融政策です。短期金利については、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用する一方で、長期金利については、日銀が長期国債を買い入れることで0%付近に維持することを目指します。

YCCは、2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」として導入されました。それ以前の日銀は、景気刺激のためにマイナス金利政策を実施し、極端な金融緩和を行っていましたが、その結果、長期金利が低下し、イールドカーブのフラット化が進みました。これにより、長期債券の利回りが低下し、銀行や保険会社、年金基金などの資金運用に悪影響を及ぼし、経営悪化の要因となった反面、企業の投資活動は加速しました。

日銀は物価上昇率を目標水準まで引き上げるために金融緩和を継続したいと考え、同時にフラット化の影響を抑えるためにYCCを導入し、イールドカーブのスティープ化を目指しました。YCCには短期金利は低水準を維持しつつ、長期金利に適度な傾きを持たせることで、金融機関の収益改善や経済の持続的成長を支援する狙いがあります。

イールドカーブ・コントロールは、2022年12月20日以降、段階的に修正(長期金利の許容範囲の上限引き上げ)が行われ、2024年3月19日の金融政策決定会合で撤廃されることが決定されました。

イールドカーブの見方を理解して経済動向の予測に役立てよう

イールドカーブは、債券の利回りと償還期間の関係を示すグラフで、金利の推移から景気の先行きを予測するために活用されます。イールドカーブの形状を分析することで、景気の変化や投資環境の動向を把握することが可能です。ただし、投資判断を行う際には、イールドカーブ単独ではなく、他の経済指標と組み合わせて総合的に分析しましょう。

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