評価損益とは?基本的な意味や投資への活用方法をわかりやすく解説

2025/11/28

投資において、保有している資産の購入時の時価総額と現時点での時価総額の差がどれほどあるかを把握することは大切です。その差を示すのが評価損益であり、投資判断やリスク管理の指標としても重要なものです。

本記事では、評価損益の意味や算出方法に加え、投資対象別の特徴や注意点、活用法などをわかりやすく解説します。

評価損益とは?

評価損益とは、保有している資産の購入時の時価総額と現時点での時価総額の差額であり、その時点で資産を売却すると仮定した場合に、実現するであろう損益を示すものです。含み損益といった呼ばれ方もします。株式であれば株価の変動、投資信託では基準価額の上下によって評価損益の数値は変化します。

具体的には、買いから始める通常の取引の場合、現時点の時価総額が購入時の時価総額を上回っている時に評価益、下回っている時に評価損となります。反対に売りから始める空売りの場合は、現時点の時価総額が売却時の時価総額を下回っている時に評価益、上回っている時に評価損となります。

実際の取引では取引手数料や税金などのコストが生じる場合があり、単に時価総額の差だけをみる場合とコストも考慮する場合で数値が異なることもある点は注意してください。

評価損益は収益や損失として利益確定していない段階の数値ですが、将来の売買を想定したリスク管理や投資判断を行う上で重要な指標になるので、定期的に確認することが大切です。

評価損益率とは?

評価損益率とは、「評価損益÷購入価格×100」で算出される指標です。この数値を用いることで、単純な損益額だけでは見えにくいリターンの度合いを把握することができます。

例えば、評価益が10万円であるとき、
・元本が100万円の場合
10万円÷100万円×100=10%
・元本が50万円の場合
10万円÷50万円×100=20%

となり、評価益が変わらない場合、元本が少ない方が評価損益率は高く、効率良く運用が出来ていると言えます。このように、評価損益の金額だけでなく評価損益率を確認することで、より正確に損益の状況を比較することができます。

また、評価損益率を継続的にチェックすると、投資戦略の見直しや資産の配分バランスを調整する際に役立ちます。例えば、ある銘柄の評価損益率が極端に低下している場合、株価の下落要因の確認や損切りの検討が必要かもしれません。逆に高い評価損益率を維持している場合は、追加で購入するかどうかの判断にも使えます。

ただし、評価損益率が高いからといって必ずしも安心できるというわけではありません。一時的に相場が過熱している場合もあるため、個別銘柄のニュースや市場全体の動向などを合わせて考えることが重要です。投資時期によっても評価損益率は大きく変動するので、表面的な数字にとらわれず、長期的な視点を持つように心がけましょう。

投資対象別の評価損益の見方

投資対象ごとに評価損益が変動する要因や特徴は異なります。それぞれの違いを理解することで、より的確な投資判断を行うことができます。

株式投資における評価損益

株式投資の場合、評価損益は株価の上下動によって日々変化します。株価は企業の業績や景気の先行き、さらには国際情勢などさまざまな要因で変動するため、短期的には予想が難しい面があります。また、配当金や株主優待といったインカムゲイン要素も加味されるため、評価損益だけでなく総合的な収益をチェックすることが重要です。

投資信託における評価損益

投資信託とは、投資家から集めたお金を、資産運用の専門家がまとめて運用・管理し、利益を投資家に還元する商品です。評価損益の考え方としては、購入時の基準価額と現時点の基準価額の差額となります。投資信託の運用にかかるコストとして信託報酬というものがありますが、基準価額は信託報酬が既に加味された状態で算出されているため、基準価額をもとに実質的な評価損益が計算されます。

投資信託には株式型、債券型、バランス型など多様な種類があり、それぞれリスクやリターンの特性が異なります。株式型は相場に連動しやすいため評価損益の変動も大きい一方、債券型は値動きが比較的安定しています。自分の目標や投資期間に合ったファンドを選び、継続的に評価損益を確認するようにしましょう。

FXにおける評価損益

FX(外国為替証拠金取引)では、為替レートが刻一刻と変化する中で、取引を開始した時点の為替レートを基準に評価損益が変動します。FXでは、高いレバレッジを設定できるという特徴から、短期間で大きな評価益を得る可能性がある一方、ポジションと逆方向にレートが動くと想定外の評価損を抱えるリスクも高まります。そのため、リスク許容度を超えないレバレッジ設定や、損切りラインを明確にすることが重要になります。

また、FXの場合はスワップポイントも評価損益に影響します。スワップポイントとは、異なる通貨間の金利差によって発生する金利調整分です。FX取引でポジションを翌日に持ち越す際に発生し、受け取るか支払うか、またその金額は、通貨ペアやその時々で変動します。スワップポイントの評価損益は、ポジションを決済するまで未実現損益として評価され、決済時に実現損益として口座残高に反映されるのが一般的です。

松井証券では、ポジションを決済せずにスワップポイントを口座残高に反映させることができるスワップ振替機能を提供しています。この機能を利用すると、未決済のポジションからもスワップ収益を確定させることが可能になります。

スワップポイントが発生する仕組みや計算方法、スワップポイント狙いで運用するときのポイントなどについてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

評価損益を活用するコツ

評価損益を把握しながら資産配分を見直し、リスクをコントロールすることで、安定的な資産運用を目指すことができます。ここでは評価損益を上手く活用するポイントについて見ていきましょう。

大きく変動するタイミングを見極める

大きな損失を生まないためには、市場環境の変化や決算発表など評価損益が大きく動くタイミングを把握し、定期的にポートフォリオを見直すことが大切です。

評価損益が大きく動くタイミングは、主に株価に影響を与える重要イベントと関連していることが多いです。そのような株価が変動するきっかけとなるイベントとして、企業の決算発表や官公庁からの重大な経済指標の公表、中央銀行の金融政策発表などが挙げられます。また、政治的イベントや自然災害などによっても市場は大きく上下することがあります。このように、取引の材料となるニュースが流れ、株価や為替が変動するきっかけとなるイベントでは、保有資産の評価損益も大きく変化する可能性があるため、日頃から経済ニュースにアンテナを張っておくことが重要です。

また、TOPIXや日経平均株価などといった株価指数をチェックすることも重要です。保有銘柄の値動きと市場全体の動向を比較することで、相対的なパフォーマンスの確認ができます。評価損益を確認するだけでなく、市場全体の動きと自分の投資成果を照らし合わせることで、より適切な投資判断が可能となるでしょう。

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分散投資に役立てる

投資ポートフォリオを管理する際、各資産の評価損益をしっかりと把握しておくことは重要です。資産ごと、あるいは銘柄ごとに評価損益を確認し、もし評価損が大きい特定の銘柄があれば、経済環境や企業の状況を改めて確認し、早めに損切りして他の投資先へ資金を回すという選択肢が考えられます。反対に、評価益が大きい特定の銘柄に資産が依存している場合は、一部を売却して利益を確定させながら別の商品に投資して分散を図るという戦略も考えられます。

このように、ポートフォリオ全体の観点でも、運用している個別の商品の観点でも、評価損益は運用する資産のバランスを考えることにも役立ちます。

利益確定時の税金を確認する

株式や投資信託などの金融商品は、保有している段階では税金が発生せず、売却して利益が確定したときに課税の対象となります。株式の場合は、通常20.315%の税金がかかりますので、保有する銘柄に評価益がでている場合には税率を掛けることで、売却した際にどの程度税金がかかるかを計算することができます。

なお、NISA(少額投資非課税制度)口座で購入した商品については、原則として非課税です。

一方、評価損が出ている場合には、売却時に税金はかかりませんが、実現損が発生した際には、損失の繰越控除によって損失額を翌年以降に繰り越したり、配当金等との損益通算が行ったりすることができます。

また、FXの税金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

評価損益に関するよくある質問

評価損益に関して、初心者の方が疑問を感じやすい点を中心にQ&A形式でわかりやすくまとめます。

評価損益と実現損益はどう違う?

評価損益は、保有している建玉を現時点で決済した場合の計算上の損益を表し、実際には決済されていない状態のものです。一方、実現損益は、決済を行い確定した損益であり、実際に得られた利益や被った損失を表します。評価損益は市場の変動に応じて常に変化する参考値ですが、実現損益は確定した金額として口座残高に反映されます。

保有株式を一部売却したら評価損益はどのように変わる?

保有株式を一部売却すると、売却した分の評価損益が実現損益として確定し、評価損益の対象から外れます。残りの保有株式については、その時点での株価に基づいて評価損益が再計算されます。結果として、評価損益の総額は減少しますが、残りの保有株式に対する1株あたりの評価損益の金額自体は基本的に変わりません。

評価損益は課税対象になる?

評価損益は未実現の損益であるため、通常は課税対象にはなりません。課税は実際に利益が確定した時点、つまり株式や投資信託などを売却して実現損益が生じた時に発生します。つまり、保有しているだけでは課税されず、売却して利益を確定させた時に初めて課税の対象となります。

評価損益はいつ確定させればよい?

評価損益を実際の利益や損失として確定するためには、決済する必要があります。逆指値を利用することで、利確ライン、損切りラインを予め設定することができるため、最低限この利益は確保したい、これ以上は損失を膨らませたくないという基準を作り、利益が最大化されるタイミングを探ることをおすすめします。

全てを決済せずとも一部のポジション調整によってリスクヘッジを図る方法もあります。例えば、評価益が大きくなった銘柄は、一部を売却して利益を確定しつつ、残りのポジションでさらなる上昇を狙うといった戦略や、評価損がでている銘柄は、追加で買い入れすることで平均取得単価を下げるナンピン買いという戦略などがあります。

評価損益は損益通算に活用できる?

損益通算とは、同一年分の実現した損失と利益を相殺して課税額を調整する制度です。対象となるのは実現損益であり、この制度を有効に活用するには、評価損益を実際に確定させる必要があります。実現利益がある場合は評価損を確定することで、実現損失がある場合は評価益を確定することで税金が圧縮されます。 特定口座「源泉徴収あり」で取引する場合、原則確定申告は不要ですが、年間損益合計がプラス(利益)となる場合、一般口座や他の証券会社の年間損失と通算することで、源泉徴収された譲渡益税の還付を受けることができます。年間損益合計がマイナス(損失)となる場合は、毎年の確定申告を条件に、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことが可能です。

また、年末にかけては損益通算目的で株式の売却が多くなり株価が下落する傾向にあるといわれています。このような一般的な市場理論では合理的な説明ができないものの、過去のデータに基づいて繰り返し観測される価格変動の傾向のことをアノマリーといいます。アノマリーは、必ず起こるというものではありませんが、投資判断のヒントとして注目してみるといいでしょう。

評価損益をただしく理解し、投資リスクをコントロールしよう

評価損益は、保有している資産の購入時の時価総額と現時点での時価総額の差額を示す指標であり、運用状況を把握し、損益を確定させるタイミングをはかるうえでも重要です。

また、投資対象によって評価損益の変動要因や特徴は異なるため、株式、投資信託、FXなどの違いを理解しておきましょう。どの投資でも、評価損益がプラスだからといって安心できるわけではなく、急変で一気に評価損へ転落するリスクもあります。逆に評価損があっても市場環境が好転すれば回復のチャンスがあります。

最終的には、自分の投資目的やリスク許容度にあわせてポートフォリオを調整することが、長期的な資産形成のカギとなります。評価損益を正しく把握し、安定的な投資運用を続けていくための基本知識として活用してください。

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