騰落レシオとは?計算方法や目安、見方、投資で活用する際の注意点を解説
株式投資で利益を出すためには、チャートから将来の価格を予想するテクニカル分析が役立ちます。「騰落レシオ」は、相場全体の状況を把握する際に役立つテクニカル指標の一つです。ニュースで取り上げられることもあり、多くの投資家がチェックしている指標ですが、株式投資を始めたばかりの方は「見方や使い方がわからない」と感じることもあるでしょう。
本記事では、騰落レシオの意味や計算方法、さらには投資で活用する際の注意点まで、初心者向けにわかりやすく解説します。
騰落レシオとは?
騰落レシオとは、一定期間における「株価が上昇した銘柄数」と「下落した銘柄数」の比率を計算することで、市場全体の過熱感を測るテクニカル指標です。「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」といった状態を把握するために用いられます。
「相場の体温計」とも呼ばれており、短期・中期的なトレンドや、トレンドの転換点を探るための判断材料の一つとして、多くの投資家が活用しています。
例えば、東証プライム市場やグロース市場、日経平均株価の構成銘柄といった特定のセグメントごとに騰落レシオを確認することで、より詳細な市場分析も可能です。
騰落レシオの計算方法
騰落レシオは以下の計算式で算出されます。
騰落レシオ(%)=(一定期間の値上がり銘柄数の合計÷一定期間の値下がり銘柄数の合計)× 100
短期的な市場の過熱感を測る場合は5日間、中期的な市場の過熱感を測る場合は25日間(約1ヶ月の営業日数)という期間を用いて計算するのが一般的です。
例えば、過去25日間の値上がり銘柄数の合計が100、同じく過去25日間の値下がり銘柄数の合計が80の場合、25日騰落レシオは125%(100÷80×100)です。
ただし、分析対象の市場によっては、異なる期間を用いて騰落レシオを計算する場合もあります。
騰落レシオの見方と目安
騰落レシオの数値は、相場の状態を把握するヒントになります。ここでは一般的に目安とされる水準と、その解釈を解説します。
100%
騰落レシオが100%の状態は、一定期間内の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数がほぼ同じであることを意味します。これは市場が中立的な状態にあり、買いの勢力と売りの勢力が拮抗していると解釈できます。
相場の方向感がつかみにくい、いわゆるレンジ相場(株価が一定の範囲で上下する状態)でよく見られる水準です。この水準では、騰落レシオ単独で売買の判断をするのは難しいため、ほかのテクニカル指標やファンダメンタルズ分析と併用して、総合的に市場の状況を判断する必要があります。
70%以下
騰落レシオが70%以下、特に60%台まで下落すると、市場全体として値下がり銘柄の数が値上がり銘柄の数を大きく上回っており、「売られ過ぎ」の状態であると判断される一つの目安になります。投資家心理が弱気に傾いている局面を示唆していると言えるでしょう。
このような状況では、近い将来に株価が下げ止まり、反発する可能性が出てくると予想できます。そのため、逆張り(相場の流れに逆らって売買すること)での注文を判断する一つの材料になるでしょう。
120%以上
騰落レシオが120%以上、特に140%や150%を超えるような高い水準になってくると、市場全体として値上がり銘柄の数が値下がり銘柄の数を大きく上回っており、「買われ過ぎ」の状態になっていると判断できます。相場の過熱感が強く、積極的に買いが入っている状況といえます。
しかし、利益確定の売りが出やすくなったり、何かのきっかけで急な下落(調整)が入りやすくなったりする局面でとなります。そのため、短期的な視点で見た場合は、保有している銘柄の利益確定を考えるタイミング、あるいは新規の買いを見送る判断材料となるでしょう。
騰落レシオの投資へ活用するときの注意点
騰落レシオは市場全体の状況を把握するのに便利な指標ですが、あくまでも投資判断の目安に過ぎません。実際の取引で用いる際は、以下の注意点を押さえておきましょう。
短期的な指標であるため長期的な判断には限界がある
騰落レシオは、日々の売買動向を反映した指標であるため、基本的には市場の短期的な過熱感を測る指標です。数年単位の長期的なトレンドの分析には活用しにくい側面があるため、長期投資をメインとする投資家にとっては、あまり参考にならないかもしれません。
自身のトレードスタイルに応じて、騰落レシオを参考にする度合いを調整した方が良いでしょう。
ほかのテクニカル指標と併用する
騰落レシオは市場全体の過熱感を示すものですが、それだけで売買タイミングを完璧に捉えるのは困難です。より精度の高い投資判断をするためには、RSI(相対力指数)やMACD(マックディー)、移動平均線といったほかのテクニカル指標と組み合わせて使うことをおすすめします。
例えば、騰落レシオが「売られ過ぎ」を示している状況で、RSIも同様に売られ過ぎのサインを出し、さらに移動平均線がゴールデンクロス(短期線が長期線を上に抜ける買いサイン)を示している場合は、買い注文を出すと、利益を狙える可能性があります。
このように、複数の指標が同じ方向性を示していれば、投資判断の信頼性は増すでしょう。騰落レシオ単体で安易に投資判断をすると、思わぬ損失を被る可能性もあるため、注意が必要です。
データの取得元や計算方法によって結果が異なる
前述の通り、騰落レシオは対象とする市場(東証プライム、スタンダード、グロース)や計算に用いる期間(5日、25日など)の設定によって数値が異なります。
そのため、騰落レシオをチェックする際は、どのような条件で算出された数値なのかを確認することをおすすめします。また、自分で継続的に活用する場合は、使用するデータソースを統一し、指標の解釈に一貫性を持たせるようにしましょう。
個別銘柄の値動きの強弱は読み取れない
騰落レシオは、あくまで市場全体の銘柄の値動きの傾向を示すものです。騰落レシオで「買われ過ぎ」と判断できる場合でも、個別の銘柄の中にはまだ割安で上昇余地があるものもあれば、逆に「売られ過ぎ」の状態でも、業績悪化など個別の要因でさらに下落する銘柄も存在します。
騰落レシオから個別銘柄の株価の強弱や、具体的な買い時・売り時を直接的に判断することはできません。個別銘柄の取引を検討する際は、その銘柄自体のファンダメンタルズ分析やほかのテクニカル分析と合わせて総合的に判断する必要があります。
騰落レシオはどこで確認できる?
騰落レシオは、多くの証券会社のウェブサイトや取引ツール内のマーケット情報ページ、あるいは主要な金融ポータルサイトなどで手軽に確認できます。日々の騰落レシオの数値や過去の推移をグラフで表示していることが一般的です。
例えば、松井証券では、投資判断に役立つさまざまな情報や分析機能が集約された投資情報ツール「マーケットラボ」の中で日経平均やプライム・スタンダード・グロースの各市場の過去25日、過去5日、当日の騰落レシオを確認できます。
相場の過熱感を測る騰落レシオを投資判断の目安として活用しよう
騰落レシオは、「売られ過ぎ」「買われ過ぎ」といった市場の過熱感を把握するために有効なテクニカル指標の一つです。市場がある方向に大きく傾いた際に、その勢いがどの程度なのか、また反転の可能性はどのくらいあるのかを探るうえで参考になります。
70%を割ってきたら「売られ過ぎ」による反発上昇の可能性、120%を超えてきたら「買われ過ぎ」による反落下落の可能性といった一般的な目安を頭に入れつつも、それだけで判断するのではなく、ほかのテクニカル指標や市場全体のニュースなどと組み合わせて総合的に分析することが、より精度の高い投資判断につながるでしょう。
騰落レシオは、とくに短期から中期の取引戦略を考える上で役立ちます。その特性と限界を理解した上で、自身の投資スタイルに合わせて活用していきましょう。